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私は エマニュエル
17歳
母親を殺した
畜殺するヤギのように―
私が母の体を
切り裂さかせた
母は出血
医者は
自慰をするのと同じ―
反復する
リズミカルな動きで―
私の肺に空気を送り―
手で繰り返し
私の胸を押した
それは成功した
私は息を吹き返した
そして
母は命を落とした
私のためというのは
名目にしかすぎない
出産の代償だ
誕生の代償を
支払うのは私
その義務を背負った
毎年 その利子が
増えて行く
つまり 私は
存在しないはずの人間
私の居場所は
どこにもない
私が
オリンピック選手や
天才科学者だったら
違うかもしれない
でも私に
そんな取り柄はない
私はただの娘
動機なし殺人者だ
だから 私の人生は―
刑期終了を
待つだけの日々
うーん うまい
ゴーダチーズを使って
味を引き締めてるの
どうだい?
洗練されてる
洗練されてる
いい表現ね
パンプキン
君の1日は?
出会いがあった
真剣に交際してる
すばらしいわ
彼の名前は?
クロード
初日から真剣交際か?
ええ
ブロッコリー取って
賛成だわ
ステキな男性がいても
いい頃よ
なぜ? 私がレズだとでも
思い始めてた?
いいえ
まさか なぜそんな
あなたの夢を見たの
それも性的な
気付かれたのかも
と思って
いいえ 全然
べつに普通よ
幸せな義理の家族に
ぴったりの―
エディプスとエレクトラ―
混成のコンプレックス
が原因
リラックスして
あなたはタイプじゃない
エマニュエル
もうやめろ
無視すればいい
誕生日が近くなると
毎年ああなんだ
おい
- 気をつけてくれよ
- イヤ
皆のクローゼットよ
でも洗練された器具を―
ハシゴの上で
動かしてる
ペニス増大ポンプは
洗練されてない
早く試しちゃいなさいよ
べとべとする
ペニスがあったら
私なら試す
自分が売る商品なら―
商品を知るために
試さなくちゃ
- 僕は試したくない
- そう
切符を
僕はクロード
知ってる
バッグに書かれてる
これは僕のバッグじゃ…
バッグが盗まれて
子供の頃使ってたのを
引っ張り出したんだ
切符を
腕に書かれてるのは?
私の名前
名前のつづりが
男向けじゃ?
男の子だと思われてたの
でも君は女の子だ
現実って
過大評価されるものよ
どうして腕に
名前のタトゥーを?
バッグがなくても
自分が何者か分かる
さよなら
いい人そうよ
奥ゆかしくて
- 出身は?
- デンバーですって
夫はいるのか?
聞かなかったけど
いないみたい
赤ん坊を1人で育ててる
なんて 気の毒だわ
パパは私を
立派に育てたわ
彼女に助言でも
してあげたら
子守を探してると
言ってたけど―
思い浮かばなかったの
デンゼルさんの家が…
私がやるわ
本当?
ええ やる
- 子供嫌いだろ?
- お金がいるの
何に使う?
ペレシャス・モーメンツの
置き物を収集したいの
人生の貴重な瞬間を
忘れずにいられるから―
集めたいの
いつから始める?
明日 聞いてみるわ
どうしても
彼と話したいの
失礼
何て言ったの?
彼の子を妊娠して―
“中絶する”と
伝いたいんだけど―
キレられると怖いから―
人がいる
列車内で伝えたいって
座席が手に入るわけだ
私はエマニュエル
どうぞ 入って
何か飲む?
お水をください
年齢は?
今月 18になります
楽しい年頃ね
ええ まあ
- 大学へ行く予定は?
- ありません
学校は
あまり好きじゃなくて
進学したがる人の
気が知れません
でも 学ぶのは好きです
今 フランス語も
勉強中で
旅行の予定が
あるのかしら?
いいえ
フランス語を話すのに―
フランスに行かないなんて
もったいないわ
買い物に行かなくちゃ
1時間半で戻るわ
コップは
シンクに入れておいて
あの…
赤ちゃんは?
お願いするわ
はい でも
先に会っておいた方が
今 クロエは寝てるの
起こすと ぐずるから
くつろいでちょうだい
曲でも聞いて
赤ちゃんが起きたら?
このベビーモニターで
必要があれば
分かるわ
わかりました
それじゃあ
ここの暮らしはどう?
まあまあかな
他の暮らしは
知らないけど
特に何もない
こんにちは
暑いから
冷たいものでもと思って
- ご親切にどうも
- いいえ
まあ キレイ
始まった
ジャマしちゃ悪いから
これで
待って これを
いただけないわ
飾りすぎると
お通夜みたいだから
ありがとう キレイだわ
じゃあ また家で
義理のママが
気に入らない?
別に
ただパパと2人きりの
期間が長かったから―
- まだ慣れなくて
- あなたのママは?
死んだ
つらいわね
ここにある
道具とシートを―
しまってもらえる?
ええ いいですよ
心配なかったわ
体を伸ばして
気持ち良さそうだった
私もあんな風に
お昼寝したい
渡す物があるの
あなたに
私 前にフランスで
生活してたの
本当に
必要ないんですか?
ええ 引っ越しの荷物に
入れたのも忘れてた
洗濯室にあるカゴを
2階の廊下に
運んでくれる?
はい
何してるの?
何か聞こえた
気がしたんです
もう聞こえないけど
何も聞こえないわ
後はやるからいいわ
下に降りて
昼寝を
妨害したくないから
ここで何してるんだ?
勉強
勉強だって?
- フランス語の
- そうか
もうかなり
上達してるだろうな
そこはママゆずりだ
ママはスポンジのように
言語を吸収した
ママと一緒に たくさんの
フランス映画も観た
ママの代わりに
私が死んでたらって
- 考えることはある?
- いいや
本当に?
私は考える
エマニュエル
考えてたんだが―
今年がいいと思うんだ
ママのお墓に
一緒に行ってみないか?
誕生日
当日でなくていいんだ
なんのために?
一度も
行ってないだろう?
誰かの命日を
尊重するのは大事だ
同伴者が欲しいなら
ジャニスに頼んで
同伴者が どうとかいう
問題じゃない
お前自身の問題だ
まだ早いわよ?
もう週末です
片づけを
手伝いに来ました
そうだった
先に行ってて
クロエが眠ってるの
何から始めましょうか
これは クロエの
お気に入りだった
でも何度も落としちゃって
もう使ってないの
リンダ?
ごめんなさい
ただ私…
すごく疲れてるな
って思って
書斎で軽く
仮眠を取るわ
この箱を
寝室に運んで?
私もモニターの音で
気になったの
いいのよ
わかってる
ぬれたオムツは
イヤよね?
そう イヤね
イヤイヤなの
この時だけは
不機嫌になるのよね
ミルクや おねむの時は
すんなり行くけど
オムツがぬれてると
ぐずるの
まあ びっしょり
この子の服を
持って来てくれる?
私のコザルちゃんの
ために
廊下のタンスに
入ってるわ
お願いできる?
スッキリした?
ご機嫌が直りましたね
もうご機嫌ね
冷えちゃうわ
そうよね 冷えちゃう
あんよを食べちゃうぞ
食べちゃった
食べちゃった
好きな服だわ
だって やわらかくて
面白い
あなたみたいだもの
最後の方だけ
着せてみる?
いいえ
もう少し近くに来て
着せる所を見せるわ
必ずこうして
頭を支えて
まずは かわいい
あんよから
かわいくて
食べたくなっちゃう
次は かわいい
ちっちゃなお尻
ちっちゃなお尻
動かないで
それから
ボタンを止めて
なんてかわいいの
食べちゃうぞ
抱っこしてみて
かみつかないわよ
まだ歯だって
生えてないんだし
はい どうぞ
ローストチキン
ポルチーニ詰めよ
それで?
それでって?
子守はどうだ?
彼女…
リンダだったか?
別に
別に?
イヤだった?
違うんだ
子守の話しをしてた.
そうなの
どんな具合?
別に
2歳で
おしゃべりだった子が―
どうして18歳で―
そっけない会話しか
できなくなる?
遅発の自閉症かもしれない
多くを 抱え込みすぎ
なんじゃないか
疲れてみえる
街での仕事に
子守だろ
パパって時どき
女みたい
悪意はないわ ジャニス
早く 赤ちゃんと
対面したいわ
彼女の
保護観察官なんだ
席を譲って
やあ
彼女に何て言ったか
知りたい?
いいえ
平気?
なあ
何か悪い事したかい?
君が怒る理由が
分からない
分からないわけ?
今朝の6時
どこにいたの?
全車両を探したのよ
- 6時のには乗り遅れた
- もういい
なぜ6時の列車に?
会いたかったの
- 今 会えた
- ムリなのよ
私の彼氏になるなら
いなくならないで
人に消えられるのに弱いの
- 彼氏?
- とぼけないで
手をつないだり―
私とのキスを
考えたでしょ?
それは…
ハッキリ答えて
考えた
また明日 電車でね
こんにちは
リンダ
キッチンよ
お風呂の時は
起きてるのが好きなの
ゆすいであげて
喜ぶわ
いいです
仲良くなって
この子に
あなたを信頼させたいの
お願い
こうやって
手をこの子の頭の後ろに
やってみて
どうってことない
- もう十分だと…
- なら 乾かしてあげて
散歩に連れて行くわ
- 散歩ですか?
- そうよ
新鮮な空気は いいし―
そろそろ この子を―
ご近所の方と
会わせたいわ
インフルエンザが
流行してるんです
紹介するのは
延期したほうが
泣いてるのよ?
ええ どうしていいか
分からなくて
ゆすってあげるの
それから話しかけて
話すのが好きなのよ
そうでしょ クロエ?
あなたは
聞き上手だものね?
そうね そうしましょう
心配しないで
わかるようになるわ
私もこの子を―
家に連れ帰った頃は
不安だった
私が面倒見切れる?
もし最悪な母親だったら?
もし子育てが
イヤになったら?
心配してたけど―
母になる
運命だったかのように―
思えてきた
ずっと前からしてきたこと
だったみたいに
前世で経験して
きたかのように思うの
自分本位で
ムダな心配だった
この子のいない人生なんて
想像もつかないわ
無理よ
無理
走ってくることにしたわ
あと2キロ落としたいの
こういう場所では
背中を向けないで
活発な子なのよ
落ちたら大変だわ
そうですよね
すみません
いいの
すぐ戻るわ
服を着ないとよね?
私は あまり
おしゃべりじゃないの
誰が相手でもね
だから
会話が多くなくても
あなたが
キライなわけじゃない
話すより
留めておく方が好きなの
わかってくれた?
- 何しに?
- クッキーを届けに
食べたがらないわ
- どうして?
- 体重を戻そうとしてるの
バカバカしい
彼女は十分細いわ
- 家へ入れない気?
- リンダは留守よ
- 走りに行った
- それなら…
赤ちゃんに会いたいわ
ムリよ 今寝てる
なら 少し
のぞくだけにするわ
まあ
思ってたより 片付いてる
手早く
キレイにしたのね
寸法を測って数カ月で―
どうやって
完璧に配置できたの?
私が知るわけない
触らないで リンダが―
クロエのおもちゃを
触る前の―
消毒を徹底してるの
私の手は
床より全然キレイよ
やめて
彼女は すごく几帳面で
ノイローゼ寸前なの
- キッチンはどこ?
- 向こう
まあ ステキ
ステキだわ
リンダの所で働くのは
楽しい?
ええ まあね
- 彼女は どんな方?
- いい人
- それから?
- それだけ
長い時間
一緒にいるから―
彼女のことを
分かってきたかと…
そうでもない
でも 彼女は好き?
庭で見かけた2人は
楽しそうだった
- 会話をしながら…
- ええ
- こんにちは
- こんにちは
- かなり走って来たみたい
- いいえ ほんの少しよ
焼き立てのクッキーを
持ってきたの
うれしいわ ありがとう
- クロエは どこ?
- 眠ってる
- 眠ってるの?
- ええ
抱いてたら眠ったので
寝かせたの
あなたとクロエを
夕食にお招きしたいわ
うれしいわ
でもクロエの眠る時間が
早いので
エマニュエルに
任せても…
- 余分に稼いでみない?
- 必要ない
夜は フランス語を
勉強したいの
赤ちゃんが眠ってる間
ここで勉強したら?
わかった いいわ
よかった
金曜ではどう?
いいわ
それじゃあ
ステキな夜になるわ
1枚
何カロリーだと思う?
さあ 高カロリー?
夜困るから
クロエを起こすわ
私が
私に慣れてほしいんです
任せて
そうね いい考えだわ
どうしたの?
ごめんなさい
本当に ごめんなさい
少し外の空気をと
外に出ようとしたら―
- ぶつかって
- 大変
平気です
少し切っただけ
- 平気です
- 来て いいのよ さあ
いい 少し しみるわよ?
少し我慢して
- 痛みは治まった?
- はい
2人とも
実の姉妹のよう
ええ
クロエにも
あなたのような―
魅力ある人に
育ってほしい
その青い瞳の奥に
たくさん隠れてる
出会った瞬間に
気付いたわ
あなたが自分に重なるの
よい所に限らず
- 何してる?
- 世界の飢餓を解決中
面白い
その仕事は危険だから
男性向きだ
後は僕に任せてくれ
あなたの男らしさに
甘えたくない
- 接客に回って
- お客との交流がイヤだ
“誤解される” と―
サムにマスク着用を
禁じられたし
私は マスクしてる方が―
仕事のできる人に
見えると思う
エマニュエル
代わってくれ
ここにいても
女性と出会えないわよ?
最近のあなたは
カッコイイわ
生かさないと
もったいない
なんで そんなに優しくて
ハッピーなんだ?
私が優しい ハッピーな
人だからかな
医者に シラミがいると
言われた
もし よかったら
気分転換に―
動かない場所で
会えないかな?
ええ いいわよ
金曜の夜は どう?
夜にも
子守をしなきゃなの
- それじゃあ…
- だけど…
金曜の夜ならカンペキ
- 7時に迎えに来れる?
- うん
よかった
2階にいるわ
助かったわ
今日はもうくたくた
どうして?
わからない
いつもはイスに座って―
1人でも大丈夫なのに―
今日は 他に気をそらすと
ぐずって目が離せない
この子
クロエの新しい親友
ひどい話しだけど―
ときどき 母親をやるのが
イヤになるの
母親であることを忘れて
過ごしたくなる
ヒドイわよね?
いいえ 正直だわ
- 入浴させます?
- いいえ もう済ませたの
ねえ 正直な意見を
聞かせて
どの服を捨てるべきか
迷ってるの
でも私 センスある方じゃ
ないんです
ここに座って
あなたのスタイル―
私には若過ぎるけど
とてもセンスいいと思う
そう
金曜には
何を着て行ったら?
実は夜に予定が入って
子守できないんです
気にしないで
どんな予定なの?
いちおう デートです
楽しみね お相手は?
列車で出会った人
名前を教えて?
クロード
これを着て行って
着てみて
- かわいいけど…
- 着てみて
さあ 早く
よく似合ってる
キレイだわ
- あげるわ
- いいえ お借りします
この年齢で
もう着てないから
そのブラウス…
クロエのパパとの
初めてのデートで着た
クロエのパパは
今どこに?
パパになる時が
来てもね
その責任を果たせない
男性もいるの
恵まれなかった
リンダが来れなくなると
承知しているはずなのに
どうして今夜に
デートの予定をいれるの
- さあ 入って
- こんにちは
どうも クロードです
こちら クロードよ
パパのデニスに
ジャニス
よろしく 彼女の義母よ
こちらこそ
かわいいブラウスね
どこの服?
楽しい夜になるわ
行きましょ
来週の金曜日
ご一緒しない?
エマニュエルの
お誕生日で―
ポットパイを作るわ
はい 楽しみだ
よかったわ
- 楽しんで
- じゃあね
- 後ろに乗る?
- ええ
立って乗って
少しコツがいるけど
立てれば平気
事故らない限り
座れれば良かったけど
事故らないよ
- 平気?
- ええ
- 沢山食べてほしいわ
- ああ
2人きりでの
夕食は久しぶりだ
彼女の軽率な行動を―
ロマンチックな夜に
すり替えようとしてる
わかってる あの子は
辛い思いをしてきた
- 他の子とは違う
- よさないか
そうよ
子供のいない私に―
子育てなんて
わかるわけない
- 言ったことない
- でもそう感じてる
この音楽はイヤ
ステキな場所に
連れて行きたかった
蛍光灯の明かりが
ロマンチックよ
16ドル25セントです
どうも
- 質問しても?
- どうぞ
- 個人的な質問だけど
- いいよ
外してくれる?
わかった 外で待ってる
私ときどき
1人でいると―
自分が死ぬ所を
想像するの
外へ流れ出る 私の命
私の血が 川を作る
質問ね お店で私に
気付いたことある?
いや ない
- ここは私有地だ
- そうよ
今夜 いっぱい
法を破ってる
窃盗に不法侵入
次は なに?
未成年の飲酒
子供の頃 パパがよく
連れてきてくれた
私有化されてからは
反対側へ―
行くようになったけど
不満だった
ここは
特別な場所なの
なぜパパと
暮らしてるの?
ママは死んだから
それで 腕に
このタトゥーを
ママが私のために
決めてくれた―
最初で最後の
証しだから
パパは ママがパリへ
留学してた時の―
彼氏の名前だと
思ってる
でも パパは賛成した
バカよね
僕は 好きだな
そのタトゥー
君みたいに
クールな感じで
- 私がクールだと思うの?
- うん 思う
君は 誰とも違う
超越した存在で―
特別な世界に
住んでいるみたいだ
きゅいーん器って
言った?
いや 言ってない
- きゅいーんだと…
- エマニュエル
アーサーって
ステキなお友達ね
何しに来たの?
汗をかいてるわ
大丈夫?
- 顔が少し赤い
- クロエは平気?
この寒さだけど
大丈夫よ
商品を探しに来たの
この子の…
- 鼻水吸引器
- そう 鼻水吸引器
アーサー あっちへ
商品を探してる
それで
さっき言ったけど―
慎重にやれば
心配いらない
ありがとう
カンペキだわ
あなたのお誕生日の
夕食会に招かれたの
会の出席と 子守の
両立は できないから
あなたが信頼する
知り合いの方に…
引き受けます
信頼できるし
子供好きだ
迷惑じゃない?
いいえ
きっと楽しい
そう よかった
いつですか?
- 金曜の7時
- 空いてる
よかった
おいくらかしら?
差し上げます
買い物のお礼に
他には買わないけど
そうですね でも今
無料になりました
あなたのために
どうもありがとう
それじゃあ また
じゃあ
どういうこと?
心臓が ものすごく
ドキドキした
- 初めから話して
- 話してる
違う 陣痛が来て
ママは パパを起こす
パパは
ママのそばに…
パパは
ママのそばにいた
ちょうど
日の出の時刻
ママは窓のそばに
座っていた
朝日に照らされた
ママの顔は―
普段と違う
初めて見る笑顔
秘密を話すのが
待ち切れないかのような
ママは 美しく
穏やかだった
パパは
ママのそばに座り―
陣痛の間隔を
計っていた
違う
パパが手を貸し
ママは立ちあがる
ママは パパに
愛してると言って―
すごい夢を見たと
話した
湖の中を泳いでいるのに
息ができて―
夜だったけれど
視界は明るかった
月の光が 道を指し示す
かのように―
水中が照らされていた
ママは 魚たちと泳げて
幸せだった
医者が到着する頃には―
ママの顔は
蒼白に変わっていた
瞳も遠くを見ていた
だが 手には
力強さが残っていた
ママの体に
メスが入れられ
お前が取り出された
お前は まっさおで
呼吸をしていない
へその緒が
首に巻きついていた
医者が処置を施し
お前は 初めて呼吸した
そして ママは
最後の呼吸を…
- 蘇生措置が取られたが…
- ママは死んだ
- 亡くなった
- その時 私は ここに
そうだ ここにいた
- それで すべて
- ああ
これが すべてだ
私を罰するために
話しをさせるのか?
すべて話してほしいから
知らないことはないか
確認したの
おめでとう
私の小さな娘が
大きくなったものだ
最初にナイフをいれて
あなたが やって
- いいわ
- でも…
誕生日の人がするのが
縁起がいいの
私がやろう
しないよりは
いいだろう
- なあ クロードくん?
- はい
クロエに会いたいわ
今 カゼを引いてて
でも数日して
機嫌が良い時に―
連れてきますわ
うれしいわ
エマニュエルと―
親しくなってくれて
よかったわ
結婚して
約1年になるけど
彼女と親しいとは
言えない
あなたは
義理の母親で―
私とは全然
立場が違うもの
ええ そうね
ただエマニュエルが
小さな頃に―
母親として 少しでも
過ごしたかったわ
もう”子育て”と言うには
遅すぎる
難しい年頃なのよ
あの子は
問題を抱えてて―
精神面に
混乱が見られるの
それを あなたに
知っておいてほしくて
あなたの好意が
誤解を生みそうで…
よく分からないわ
あの子には
母親がいたことがない
それで 母親を切望する
思いをつのらせた
よくないことだわ
あの子は混乱してる
あの年頃だもの
おかしくない
あの子に示すことが
大事なのよ
あなたの興味が
男性にあると
興味あるのは―
男性よね?
彼は 園芸店で働いてる
庭によくいるようだし―
花植えを
手伝ってもらえば
そうしてもらいたいわ
どうぞ
あなたの部屋 好きだわ
この部屋は
他と だいぶ違う
どんな風に?
わからないけど
あなたらしい部屋だわ
これが お母さん?
- 名前は 何て?
- エバ
あなたに よく似てる
謎めいていて
心を奪われるような
長い付き合いでも―
真の姿は
つかめないような人
確かに
それは成功してる
ママは 何のつながりも
残してくれなかった
あなたを残したわ
とても大きな
つながりよ
部屋にいたのね
もう夜遅いわ
クロードを
家へ帰さないと
私も もう帰らないと
今日は ありがとう
- 来てよかった
- 本当に?
どの家庭にも
少し変な所はあるよ
あってこそ
本当の家族だ
家で感じる
居心地の悪さで―
“我が家”だと
分かるわけね
ああ そんな感じ
同じ気持ち
- なにと?
- 前の誕生日と
毎年 誕生日に
こういう気持ちになるの
今年は 変わると
思ってたけど―
変わらない
- どんな風に変わると?
- さあ…
どうでもいいわ
いいわ もちろん
- 彼は?
- 私の仕事仲間
彼が子守をしてたの
庭造りを
手伝うつもりだ
えっ?
君のパパが
提案したんだ
いい庭にできると思う
ねえ 会いたくない
時もあるの
もう2回
家に来てるし
列車でも一緒なのに―
子守の時まで
窓の外にいるなんて
それが本心なら
楽にしてあげるよ
もう僕と会わなくていい
どっちがいいかしら?
どっちでも
そうね
アーサーと出かけても
構わないでしょ?
ええ でも 彼氏には
ふさわしくないと思う
友達でいましょうって
ことになるわ
今 それ以上の関係は
手に負えないもの
ステキだとは思うけど
私たち3人で 永遠に
このままとは行かないし
おなかすいてるみたい
この数週間で
この子―
本当に
大きくなったわよね?
デートするなんて
クロエの具合が悪い
とか言えば―
- 彼なら納得してくれる
- いいのよ
早めに帰るわ
どうかしら?
キレイだわ
よかった じゃあね
バーイ
あなたを愛するように
私を愛し始めてる
そう感じる
ずっと想像してきた通り
ありがとう
発酵させた果実よ
ただいま
クロエは?
- 早くに寝たわ
- よかった
アーサーが
顔を見たいって
ダメ 苦労して寝かせたの
起きたら困る
すごく静かに
見ればいいわ
- よして
- 心配ない
うまくやる
きっと僕を見直すよ
- そのメイク いいね
- お願い
お願い 行かないで
来ないの?
すごく かわいい
キレイな子でしょ?
少し不自然だ
まばたきしない
本物に見えない
ええ 特別な子なの
母親なら誰でも
そんな風に思うわよね
下に行って
何か飲み物でも?
うん
赤ん坊じゃない
これは人形だ
本物の赤ん坊は
どこに?
リンダ?
私の赤ちゃんは?
どこにいるの?
- 探そう
- クロエはどこ?
他の場所に
寝かせたのさ
- どこなの?
- エマニュエル
エマニュエル
- 見つかるさ 大丈夫だ
- どこなの?
- クロエは?
- エマニュエル
エマニュエル!
エマニュエル?
- 寝かせたと…
- エマニュエル!
ここに寝てるはずなのに
クロエはどこ?
ベビーベッドにいる
どこ?
目の前よ
これは人形だ
リンダの子は?
その子なのよ
- マジメに答えろ
- 何なのよ
あなたに
何が分かるっていうの
エマニュエル
エマニュエル お願い
教えて
クロエはどこなの?
答えて
クロエはどこ
今すぐ答えて
私の赤ちゃんを返して
返しなさい
返しなさい
どこなんだ
警察を呼ぶ
赤ちゃんを返して!
大丈夫だ
エマニュエル!
クロエはどこなの
エマニュエル
聞こえるか
エマニュエル
聞こえるか
ゆっくり
リンダのそばに
いてくれる?
私は病院に
1人にはできないから
リンダのご主人と
連絡が取れました
彼が到着する前に
答えていただきたい
今は 答えられる
状態じゃない
赤ん坊について
話してほしい
エマニュエル
パンプキン
警察の人の質問に
答えなさい
赤ちゃんは
水の中へ帰ったわ
ママと一緒にいて―
止めようとしたけど
行ってしまった
泳いで行ってしまった
私を置いて
もういいだろう
今夜はここまでに
こうなる前に
話してほしかった
リンダを 完璧な世界から
引きずり出して―
良いことがある?
私には 心を開いて
欲しいんだ
この世界も 私も―
最高では
ないかもしれないが―
やっていかねばならない
さもなければ
私たちは道を見失う
親子の歴史は
長いんだ
何してるの?
こういう服は洗えないの
ドライ・クリーニング
しないと
話したくなったら
いつだって
話しを聞くわ
これでも結構
理解してるのよ
リンダのことや
彼女の苦しみも
私は子供を産めない
それが原因で
最初の夫は去って行った
それで私は絶望した
死のうかと
考えたこともあったわ
ともかく それだけ
この前は ごめんなさい
僕の方から
子供を作ろうと提案した
夫婦の溝が
埋まるかと思って
5年間で
10万ドル近くかけ
やっと子供を授かった
だが すでに結婚は
破綻寸前だった
それで… ええ…
リンダは 自分を責めた
彼女が
娘の遺体の発見者で―
検死では
死因が断定されず―
何があったのか
正確には分からない
妻は 葬儀への
出席を拒んだ
行けなかったんだ
それから
人形が始まったんだ
彼女を
入院させようとしたが―
いなくなってしまった
それで 警察へ行き
失踪届けを
病気についての
見通しは?
医者は
楽観視していない
リンダに会いたい
今の状態では
会わない方がいい
それに面会できるのは
家族だけだ
- 大丈夫か?
- リンダと会わせて
ドアを閉めて
妄想は止めさせるべきだ
彼女は
お前の母親ではない
似てもいない
助けてあげなきゃ
医者が最善を尽くすさ
ママにした通りにね
病院で廃人にされる
お前は人の心を
分かっていない
でも自分の心は
分かってる
行くよ?
手伝ってくれて
ありがとう
クロエは どこ?
いるわ
あの子は 元気なの?
あなたが傷つけたの?
もう傷ついてたの
クロエに会いたいわ
どこなの?
何があったの
何があったの?
潮が満ちてきたの
手を握っていたけど―
彼女は
さらわれてしまった
なぜ抱いていなかったの?
できなかったの
潮の流れが強すぎて
私たちが さらわれた
水の中は―
今まで見た中で一番の
濃い青い色だった
魚たちに囲まれて泳ぎ
私たちは幸せだった
それから クロエは
私の手を放した
私は怖かった
でも怖がっていたのは
私だけだった
自分の行く先が
クロエには見えていた
私は彼女を見失った
それから 魚たちは
私を連れ戻した
なぜ魚たちは
あなたを連れ戻したの?
あなたのためよ
着いたわ
私1人ではできない
力を貸して
いい?
これでいいわ
おしまい
字幕の至らない所は
すみません
目を通して頂き
ありがとうございました