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君がいた頃
金曜の夜僕たちは犬を連れ
田舎の畦道を散歩した
濡れた砂利をわしづかみにして国道に投げた
一台の車がそいつをぐしゃりと
踏んづけて通り過ぎた
君がいた季節に
空には雲が流れていた
それは遠い異国の地表のように見えた
林のはじには泥まみれの看板が
ややこしいメッセージを掲げていたけれど
解読する気もなかったよ
君がいた季節に
僕たちは無言で歩き続け
手のぬくもりだけを与え合った
足音を聞き小川がゆくのを
聞きながら草とこすれひとしきり
しめった風にさらされた
そういう自由があったのさ
君がいた季節に