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翻訳: Yasushi Aoki 校正: Claire Ghyselen
何年か前に
複雑な問題を理解し 解決する力を付けるための
シンプルなデザイン練習課題に 出会いました
多くのデザイン練習課題と同様 一見すると自明な問題に見えますが
良く検討してみると
私たちが協力したり 物事を理解する方法について
意外な真実を 教えてくれるのが分かります
この問題は 3つの部分からなっていて
誰でもやり方を知っている ことから始めます
トーストの作り方です
まず真っ白な紙と サインペンを用意して
言葉は一切使わずに トーストの作り方を絵にしてもらいます
多くの人は こんな絵を描きます
食パンの塊があって それをスライスし
トースターに入れ しばらく待つと
パンが飛び出して ハイできあがり! 2分後にはトーストと幸せを手にします
私は何年もかけて このようなトーストの絵を 何百も集めてきましたが
中にはとても 良く描けているものがあり
トーストを作るプロセスが 非常に明快に図示されています
それからあんまり 良くないのもあります
本当にひどくて 何を言おうとしているのか 自分で分かっていません
いろいろ見ていくと
トースト作りのある面だけ 見ているものがあるのに気付きます
たとえばトーストだけが 取り出され
トーストの変容が描かれている ものがあります
トースターとは何か 説明しているものもあります
そしてエンジニアというのは 内部の仕組みを描きたがるものです
(笑)
一方 人に焦点を 当てたものもあって
人にとって それが どういう体験かを描いています
それからトーストができるまでの サプライチェーンを考えて
店から始まっているものや
瞬間移動もありの 輸送網を描いているもの
小麦や畑まで遡るもの
さらにはビッグバンに 遡るものまであります
すごいことに なっているわけですが
これらの絵は
それぞれ大きく 異なっていても
共通しているものが あるのがわかります
おわかりになりますか? 何が共通しているでしょう?
ほとんどの絵に ノードと矢印があるということです
ノードは トースターや人のような 具体的な物を表し
矢印がノードの間を 繋いでいます
このノードと矢印の 組み合わせによって
システムモデルが できあがっていて
物事の仕組みを我々が どう捉えているかという
メンタルモデルを 目に見える形にしています
それがこのような モデルの価値です
システムモデルの 興味深い点は
人による観点の違いを 明らかにすることです
たとえばアメリカ人というのは
トーストはトースターで 作るものだと思っています
一方 ヨーロッパの人たちは トーストはフライパンで作るものだと思っています
そして学生の多くは トーストを たき火で作ります
私には解しかねるんですが MBAの学生の多くがこういう絵を描きます
ノードの数を数えることで 複雑度を測ることができます
平均的な図には 4〜8個のノードがあります
4個未満だと 単純化しすぎですが
一目で理解できます
ノードが13個より多くなると
煩雑で圧倒されるような 絵になってしまいます
スイートスポットは ノード数5〜13個です
何かを視覚的に 伝えたい場合は
5〜13個のノードがある図を 使うといいです
私たちはみんな たとえ絵は上手くなくとも
複雑なものを 単純なものへと分解し
再構成する方法を 直感的に理解しているんです
それが この課題の 第2部へと繋がります
トーストの作り方を
こんどは付箋やカードを使って 表現します
するとどうなるでしょう?
カードを使うと 多くの人は より明快で詳細で
論理的なノードを 描くようになります
各ステップを分析して
モデルを組み上げながら ノードをレゴブロックみたいに
いろいろ移動し 並べ替えるんです
当たり前のことに思えるかもしれませんが とても重要なことです
表現し 考え 分析するというのを 短いサイクルで繰り返していくというのは
明快さに到る 唯一の道なんです
それがデザインプロセスの 本質的なところです
システム理論の研究者が 指摘していることですが
表現を変更する容易さと モデルを改善する気になるかどうかは
相関しています
付箋によるシステムは より流動的であるだけでなく
静的な絵と比べて 一般にずっと多くのノードを含んでいて
内容が豊かになっています
この課題の第3部では
やはりトーストの作り方を描きますが こんどはグループでやります
するとどうなるか?
こんな風になります
最初はゴチャゴチャしていますが その後もっとゴチャゴチャになっていき
それから本当に ゴチャゴチャになります
しかしみんなでモデルを 洗練させていくうちに
どれが良いノードか わかってきて
繰り返しごとに モデルが明快になっていきます
他の人のアイデアを元に アイデアを出すようになるためです
そうして幅のある 個々人の観点をまとめた
統一的なシステムモデルが でき上がります
これは通常ミーティングで 起きるのとは
ずいぶん違ったことですね
こうして作られた絵では ノードの数が20以上になることもありますが
参加者は圧倒されるようには 感じません
そのモデルを作り上げるプロセスに 参加しているからです
もう1つ興味深いのは グループの人たちは
組織的な構造を自然に 追加するということです
たとえば対立を 解消するために
枝分かれパターンや並行パターンを 入れたりします
ちなみにこれは 黙ってやった場合の方が
ずっと早く ずっと良い 結果が得られます
とても興味深いことです おしゃべりは邪魔になるんです
この課題から得られる 教訓ですが
図は 物事をノードと その間の関連からなる
システムとして捉えさせることで 理解を助けます
動かせるカードを使うと より良いシステムモデルが得られます
より柔軟に改善が 行われるためです
グループでカードを使ってやった時に 最も広範なモデルが得られます
様々な観点が 取り込まれるためです
興味深いことだと思います
適切な環境でチームが 協同作業してできたモデルは
個々人によるモデルより ずっと良いものになるんです
このアプローチはトーストの作り方を図示する時 とても上手くいったわけですが
何かもっと切迫した 大きな問題に対してはどうでしょうか?
たとえば組織のビジョンとか 顧客体験とか
長期的なサステナビリティといった 問題の場合では?
現在 視覚化の革命が 進んでいて
多くの組織が 難しい問題を
協同で図解することによって 解決しています
動かせるノードと矢印によって 物事を表現できる人たちには
有利な点があると思います
やり方は すごく簡単です
疑問からスタートして ノードを集め
ノードを改良していき
それを繰り返すうちに パターンが現れて
明快な理解が得られることで 問題への答えを見出すんです
この視覚化して繰り返し改善していく というシンプルな活動によって
非常に目覚ましい 結果が得られます
ここで注意すべきなのは
モデル自体だけでなく
この過程を通じて行われる 対話が重要だということです
このようにして得られる 視覚的な枠組みは
ノードの数が数百から 数千に及ぶこともあります
1つの例はロデールという
大手出版社です
ある年に 大きな損失を出して
経営陣は3日かけて 業務全体を視覚化することにしました
個々のシステムに到る
業務全体の可視化を行った後
ロデール社の収入は 5千万ドル改善され
顧客からの評価も DからAに改善されました
なぜか? 経営陣が一致した見方を得られたからです
協同で可視化をすることによって 厄介な問題を解決できるよう
組織を手助けすることを 私はミッションとするようになり
drawtoast.com という サイトを作りました
ここにはたくさんのベストプラクティスが 集められています
このワークショップの やり方だとか
視覚言語や ノードと矢印を使った 様々な構造について学び
一般的な問題解決に 応用できます
また どこの組織でも直面する 難しい問題を解きほぐすのに使える
様々なテンプレートが ダウンロードできます
トーストの作り方を図示する という一見単純な課題が
グループで明快な理解や 協力や 一致を得るために とても役に立つのです
こんど興味深い問題に 直面した時は
どうかデザインが何を教えてくれるか 思い出してください
アイデアを目に見え 触れられる 意味あるものにすることです
これはシンプルで楽しく 強力な手法であり
祝福する価値のある アイデアだと思います
どうもありがとうございました
(拍手)