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今日は 西周成です
アルトアーツ通信第1回をお送り します
で私はこのアルトアーツという プロジェクトを
構想して
9年めぐらいになります
会社として、アルトアーツという 会社を
設立したのは もう2年 前なんですけれども
そもそも
アルトアーツとは何なのか ということを
ご説明いたします
アルトっていうのは
オルタナティブ
という言葉の頭文字 というか最初の3文字
をとったものなんですね オルタナティブつまり別の
ほかの選択ってことです
アーツ これは
映画も含めた諸芸術ということ ですね
どうして映画だけじゃないのか 私は映画の専門家ですし
映画の研究者 まあ現代ロシア 映画の研究者という風に思
われてますけれども 別に現代 ロシア映画に限らずですね
映画の研究者です
それから映画作家でも あります なぜ他の諸芸術
も込めて
こういったプロジェクトを 構想したのかということ
ですけれども ちょうど 10年ぐらい前ですね
私がロシアに留学していた ころに知り合ったですね
Capriceという音楽アンサンブル のリーダーに
アントン・ブレジェストフスキー という作曲家がいまして
まあ彼との
メールのやりとりなんかはずっと したんですけれども
私が帰国したのがちょうど 1999年でした
で しばらく
インターネットによる音楽配信
ということを観察してたんです
彼のもの
彼の音楽を含めて
ロシアの音楽シーンを ちょっと 研究というほどでもない
れども 観察していたところ 非常におもしろい音楽に
出会いました
それは まあ
ムーブメントと言っていい んですけれども
1つのグループだけ じゃなくていくつかのバンド
グループが
参加して1つの
本プロジェクトとして インターネット上の
プロジェクトとして成立 していたんですね それが
まるで
音楽だけでなくて文学や絵画や
様々な諸芸術を1つの コンセプトのもとに集めた
ような そうしたサイトだ ったんです
で まあその中で特にMoon Far Awayという
バンドがありましてですね
非常に素晴らしい音楽を 作っていたので
私は
まあその魅力に
とりつかれというかね
ええ
ロシアン・ゴシックという
サブカルチャー自体にも
かなり惹かれましてですね 彼らののコンピレーション
Edge of the night という
コンピレーションを 買いました
しかも アメリカの業者から 買ったんですけれども
これを聴いてみたんです するとやはり何か一本筋が通っている
それぞれバンドによってですね 音楽のスタイルの違いは
大きい
印象も違うんですけれども
それを統合している何かがあ るんだなあ
ああこれこそサブカルチャー だと
あの日本で オタク文化 だろうか
J-popだとか言われてますけ れども
あれはどうもね
上からの押し付けられた と言わないけれども
何かコンセプト与えられて ですね
産業界とか政府とかね
そういう所から与えられて それに乗っている感じがするんです
で そもそもメディア芸術 という概念を作ったのは政府
です
まあ大学人 大学の専門家の 人々が集まったりして
懇談会を開いてですね そこで
打ち上げられた
という
経緯があるんですけれども余り 歴史的に根拠はないんですよ
私が『映画崩壊か再生か』 という本の中で指摘
していますけれども歴史的に 根拠はないんですよ しかも
いつくかの
本質的に異なる芸術を
まあメディアをですね
一つの枠の中に入れて
それを さあどうだ メディア芸術だ 今からこれを振興しますよ
という形で 特に若い人たち 若い才能を集めて何か商売
になるようにしようとしたの が
これだったんですけれども ロシアン
ゴシックサブカルチャー というのはそうじゃなくて
本当に創りたい人たち、 何か内なる欲求があって
ですね
しかも精神的なもの を求めて
商業的なものではなくて
逆にですね あの時代のロシア というのはマフィア経済というかね
エリツィン時代ですけれども
世の中が非常に荒んでいた 時代ですね
新興成金が出てきたりするけ れどもそれで
資本主義になったかっていう と一応なってい
るんですけれども
その陰でですね 伝統的な 伝統的なと言ったら語弊があるけ
れども
精神的なものが失われていく といった それに対する若者
たちの側からの
プロテストなんですよね
そういった側面があの ゴシックサブカルチャーにあ
ったんですよ だからその 芯がものすごく強いん
ですね それでその
Moon Far Awayというバンドの リーダーの
アッシュですけれども
彼のインタビューを採った んですが―私は映画
の中で
『KISMET』という映画ですね
この映画は
そもそも
インターネットが普及してへ最初の段階 としてですね
テキストがあったわけ ですね テキストによる
自己主張というか
創作の発表という段階 があってその次に
来たのがmp3という フォーマットによる
音楽の
主張ですね 音楽の 発表ですね これがあったわけ
ですね
でこれは国境も超えますから あっという間に
インディペンデントの音楽家達は
世界のさまざまな
音楽ファン それから
ミュージシャンたちとも ミュージシャン同士とも
交流するようになった
それから音楽プロデューサー たちの目も引くということで
Capriceというのは 先ほども言いました-
アントン・ブレジェストフスキーという 作曲家によるアンサンブル
ですけど ゴシック・ロックとは 本質的にちがうんですけれども
まずそのロシアのEdge of the night
ですか
こちらのコンピレーション
で異質なんですけれど
ネオ・クラシックだから
だけれども
あのやっぱり優秀な 優秀な というよりも個性的で
すぐれた音楽を作って いる人というのは注目される
んですね 海外で
それで
2000年代に入ると prikosnovenieという
フランスのレーベルがあらわれ まして
これがまた素晴らしいん ですよね 音楽レーベルとして
ここでCapriceの "Elvenmusic" (妖精の音楽)というアルバムが発表
されます そしてそのうち
何年かするとMoon Far Awayの アルバムもそこから出てくる
ようになる
実はそのprikosnovenie っていうのは
ファンタジー系の音楽 ですね
ファンタジー系の音楽という かそれと
あの女性ボーカル
によるHeavenly Voice ですかね
まあ後はexperimentalね
実験的な音楽を中心にしてる この3つを柱にしている
レーベルなんですよね
彼らのやっぱりね 選曲センス は素晴らしい という
よりも 音楽家達を見る目というのは 素晴らしくて
オーストラリアの―例えばね
ルイサ・ジョン・クロール という女性
ミュージシャンがいますけれども
これもやはりネオ・クラシック なんですけれどもこの人の
1stアルバム
"Ariel"というのがあるん ですよ
"Ariel"ね
この人の
曲を聴くと本当に鳥肌がたち ますね 最初のblackboard
っていう歌を聞くと ですね 鳥肌がたちますね
それは別に彼女 だけではなくて
Moon Far Awayの"SATOR"という 第2アルバムもあります
けれどもこれは名作ですよね
"Elvenmusic"の
第1集もそうですよね
でこういったものフランスの レーベルから出しているわけ
です
日本からもJack Or Jive というユニットが
そこから何枚もCDを
出していて
Jack Or Jiveなんていうのは 日本よりも海外で
の評価がはるかに高いですね ファンがいるんですよ
先ほど言いました私のドキュメンタリー 映画にも出演してもらっている
んですけれど
"Jack Or Jiveのファンだから"
"KISMETのDVDを購入したい" という問い合わせが来るのは
日本からではなくて
アメリカとか
スペインとかイタリアなんです
長編ドキュメンタリーですが それが最初に
配信されたのがどこかと言うと
まず 配信というより放送 されたのは
Moon Far Awayの地元であるアル ハンゲリスクの地方
テレビ局だった
でその次がですね なんと 世界で最初のインターネット
映画祭っていうふうに銘打 っている
カリフォルニアのZoie filmfestival というところで
ファイナリストに選ばれ ましたね でそこで配信
無料配信されてらしいですね とにかくそういう雰囲気
がすでに2000年
2000年代の初等にあったんだ ってことを
言いたいわけです
インターネットは既に動画の ほうにシフトしてますよね
つまりテキストから音楽に シフトして今は動画が
中心になってきてますよね
で その動画にシフトした ことをやはり世界は―日本で
はなくて世界の人々は
世界の業界の人びとは―
もう察知してて
これはもう課金して商売 になるということでHulu
というアメリカの企業が今
日本ではハリウッド製の映画とか ドラマを配信
しているところですよね
日本はやはり遅れているん ですよ 遅れてるというのは
そういったものがあるのに― つまり
コンテンツ
と言われている作品ですが 音楽作品それから映画
作品を
インディペンデントの人々がですね 低予算で作ってもレベルの高い
あるいは個性的なものを配信 できるようになっているのに
それを何か新しい才能の発掘 だとか発見だとか評価だとか
ね
つまりリスナーとか観客だとか は評価する側でしょう
この評価する側の方も 受動的でですね 与えられた
もの
マスメディアを与えた ものを消費する
この繰り返しだから もう
オタク向けアニメっていうのは もう見るに堪えない 正直ね
私なんか見るに堪えない ですよ 富野由悠季さんが
ですね
『ガンダム』と『イデオン』とか 『ザブングル』とかね
『ダンバイン』とか
『エルガイム』とか そなものを 作っていた頃はですね
私はまだ高校生、中学生 でしたけれども
あのころは熱心に見て ましたよ 面白かったですよ
今考えるとあのドラマツルギー はシェークスピア的ですよね
何が言いたいかというと ですね
そういった
面白いコンテンツがあるのに それを
大企業が囲いこんじゃう っていうかね
いつまでもそれで儲け ようとしたりとかね
で結局 あの頃 冨野由悠季 さんの
『ガンダム』とかそういったもの が出た頃 メディア芸術
なんて言葉はないですよ オタク文化なんて言葉はない
し ましてやね
野村総研かどこかが
オタク市場の研究なんて本を出 しましたけどバカだと思います
馬鹿だっていうのは 終わ ってるじゃないですか
そういう市場なんていうのは
終わってるというよりも
あの金儲けのこと
しか見えないですね そういう 言葉から
あの感じられるのはね
しかも終わりかけている ものをそうやって金儲けのネタ
にして
結局今の若い世代はそれに乗せ られてるんですよね 乗せられ
るんじゃなくて自分たちが 作ったれ評価したりしなさいと
言いたいんだけれど
何が言いたいかというと Moon Far Awayとかゴシック・ロックのあの
ムーブメントが出てきたときにね 彼らを世界に知
らしめたのは何かと言ったら もちろん彼らの創作
クリエイティブな
才能とか努力でもあるん だけれども それを評価する
リスナーですよね
がいたんですよ
Capriceもそう
国内にそういった
創造的なね
芸術作品―芸術作品といって いいと思うんだけど―
その受け手がいるという ことが大事なんですね
芸術作品というと今度はまた ベネチア映画祭グランプリだ
とかね
パルムドールを受賞とかね
あのそういった作品を何か 舶来品
のように珍重すること そして権威者の言葉を信じる
ことが何かね
高尚な趣味だみたいな 伝統が日本にあるけれども
これは間違いですね
そもそも
映画を芸術とみなそう というふうにそういう動きを
一番最初に始めた人たちは 若いアマチュアだったんですよね
1920年代のことですよ
その頃の人たちはね
権威主義なんかまったくないん ですよ そのころは映画祭もない
しね
でその頃の人々はMoon Far Awayを
素晴らしいと言っていた ロシアのリスナーたちと同じ
ですよ
そんなところからしか 実は
―コンテンツ産業とか
そういったこと言うけれども― そういったものの そういう
文化の本当の力はそこから しか出てこないんです
アルトアーツというのはね
それをやろうと思ってるわけ
アルトアーツ通信の第1回は そういったマニフェスト的な
私の主張で終わって しまいましたけれども
まあこれから様々な世界の 特にロシア映画の事情
なんてのはほとんど日本では 紹介されていないし その意義
なんてものは そんじょそこら の研究者が
文献を読んで まとめ られるもんでもないので
そういったものをちょっと
不定期に発表していこう と思います