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翻訳: Aki Morioka 校正: Hanako Fujisawa
子供の頃 私は両親がなぜ
ルールに従うように言うのか よく分かりませんでした
例えば なぜ芝刈りをしないと いけないの?
なぜ宿題がそんなに大事なの?
なぜジェリービーンズを オートミールに入れて食べたらダメなの?
子供時代は そんな疑問で溢れていました
子供である以上 当然のことですし 時には―
意味がわからなくても 言うことを聞くのが一番だと考えていました
両親は私に批判的思考を してほしくなかったわけではありません
私の両親は常に 私たち兄弟に
世界の現状を理解させながらも
その現実が必然であると思わないように 育ててくれました
私はこの考え方自体が
強い目的を持った教育だと 理解するようになりました
私の好きな教育者 ブラジル人作家で 学者のパウロ・フレイレ氏は
教育は批判的な考えを呼び起こし
人間性を共有するためのツールで なければならないと明言しています
彼の最も有名な著書 『被抑圧者の教育学』で
「人は他者を人間として 見なすことができなければ
真の人間にはなりえない」と述べています
私はこの人間性について 最近よく考えています
特に この世界で「完全なる人間」という
特権を与えられているのは 誰なのだろうということについてです
この数ヶ月の間で
世界では 武器を持たない 黒人の男性や女性が
警察や自警団に命を奪われる事件が 次々と起こりました
このような事件や その後の出来事によって
私は自分の子供時代を思い起こし
両親が「アメリカで黒人の男の子を 育てる」際に下した決断が
昔は分かりませんでしたが 今はきちんと理解できるのです
私がちゃんと毎晩 家に帰って来られるように
私から子供時代を奪うのが 両親にとってどれほど辛く
どれほど不公平に感じられたことでしょう
例えば ある夜
12歳ぐらいの時 別の街に旅行したときのことです
友達と一緒に水鉄砲を買い
ホテルの駐車場を戦場に見立てて 水鉄砲遊びをしていました
車の陰に隠れながら
街灯のあいだの暗闇を走り回って
私たちの笑い声は 歩道に響き渡りました
しかし10分も経たないうちに
私の父がやってきて 私の腕を掴むと
これまでにないような強い力で 部屋に引っ張って行きました
私が何かを言う前に―
友達の前で恥ずかしい思いをさせられたと 父に言う前に
父は私が世間知らずであることを あざ笑いました
私の目をじっと見て 恐怖に溢れた面持ちで
父はこう言ったのです 「クリント 悪いが―
お前は白人の友達と 同じような行動はできないんだよ
銃を撃つまねをしたり
暗闇で走り回ったりしてはいけない
自分の歯以外の物陰に 身を隠してはいけないんだ」
私はその時 父が感じた恐怖を 今になって理解できます
私が夜の闇に飲まれて
誰かが水を実弾と勘違いし
最悪の事態になることもあったでしょう
私の人生はこのようなメッセージで 溢れていました
手はいつも見えるようにしろ 手を速く動かすな
日が沈んだら パーカーのフードは被るな
私の両親は私たち兄弟に 「助言」という鎧を着せて育てました
誰かに息の根を止められないよう 肌の色を記憶されないよう
多くのことに 気を付けなければなりませんでした
私たちが棺やコンクリートではなく 子供でいられるように
そして これは他の子供より 良い子にするためではなく
ただ生きてほしかっただけなのです
黒人の友達は皆 同じようなメッセージを受けて育ち
出る杭は打たれるような年齢に達したり
肌のメラニン色素が 何か恐ろしいものであるように
思われるたびに忠告を受けました
でも考えてみてください
「ただの子供ではいられない」 と感じながら育つ子供のことを
思春期の気まぐれが 命取りになってしまうことや
純粋に好奇心を感じることができず
ほんの失敗が許されない状況を
誰かの間違った偏見のせいで
翌朝目覚めることがないかもしれないことを
しかし 私たちは これに定義されはしません
両親は私たちに教えてくれました
私たちの体は銃弾の標的になるためでなく
凧を上げたり 縄跳びをしたり お腹を抱えて笑うためにあるのだと
学校の先生は 降参の意味ではない 授業中の手の挙げ方を
教えてくれました
自分に生きる価値がないという考えこそが
捨て去るべき唯一のものだと
「黒人の命は大事だ」というのは 他の命が大事ではないと言うのではなく
いくら否定されたとしても 私たちには恐怖を感じることなく
この世に存在する価値があると 主張したいのです
私は自分の息子が
生まれた瞬間に 悪さをしていると疑われ
手にしているものが玩具以外の何かに 見間違われることのない世界に生きたいです
新しい世界を構築することはできない という考えは受け付けません
子供の名前が
抗議デモのTシャツや 墓石に刻まれることがない世界―
ある人の命の価値が
息をしていること以外の何かで 決められることのない世界―
みんなが同じように 生きられる世界は作れるのです
ありがとうございました
(拍手)