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皆さん、こんにちは。Ma Longです。キーサイト・テクノロジーの デバイス・モデリング・アプリケーション・ディベロッパです。
このショートビデオでご紹介したいのは、 SRAMモデルの抽出方法で、
セルレベルの指標を組み込んで行います。
このビデオの目的です。最初に、 SRAMとそのモデリングの課題をご紹介します。
次に説明するのは最適化の手順で、デバイスレベルの 特性評価に基づいたトラジスタ・モデル・パラメータと
SRAMセルレベルの指標をすべて同時に最適化します。 最後に紹介するのは、ダウンロードして
プロジェクトファイルを入手する方法です。私がこの ビデオで使用するファイルを、お客様のSRAMセルモデリングに
ご利用いただけます。
最初に、少し背景を説明します。 SRAM、スタティック・ランダム・アクセス・メモリは
半導体メモリの一種で、双安定ラッチ回路を 用いてデータを保存します。先頭の用語、
「スタティック」により、ダイナミック・ラム、DRAMと 区別され、DRAMは定期的にリフレッシュが必要です。
SRAMが多く利用されるのはCPUのキャッシュメモリです。 DRAMよりも高速だからです。
SRAMはより低密度でより高価です。 インテルの最新の14 nmテクノロジーの
セルサイズは、22 nmプロセッサの占有面積の たった0.54倍です。
DRAMメモリセルを構成しているのは、1つの トランジスタと1つのキャパシタですが、これとは異なり、
従来のSRAMセルを構成しているのは6個のトランジスタです。 SRAMの各ビットを保存するのは4個のトランジスタで、
これが2個の交差接続されたCMOSインバータを構成しています。 こちらのm1と m2はプルダウントランジスタと呼ばれるもので、
m5と m6はプルアップトランジスタと呼ばれるものです。 ストレージセルには2つの安定状態があり、
この状態によってロジックの0/1を表します。
2個の追加パスゲートトランジスタであるm3とm4の 役割は、ストレージセルへのアクセス制御で、
これはリード/ライト動作中に行われます。ワード線 WLが接続されるのはパスゲートトランジスタのゲートで、
これにより、オン/オフの状態を制御しています。 2個の相補ビットラインとしてBL/BL(バー付き)があり、
これらは物理的にソースまたはパスゲート トランジスタのドレインに接続されています。
SRAMセルには3つの異なる状態があり、スタンバイ、 リード、ライトです。それらの詳細を見ていきましょう。
スタンバイという状態は、回路がアイドルの 状態です。ワード線はオフで、
PGトランジスタであるm3とm4はセルを ビットラインから切断します。2個の交差接続された
インバータは引き続き互いを補強しながら、 電源に接続されている間は状態を
保持します。
メモリの内容がロジック1になってQに保存されて いると仮定します。リードサイクルを開始するために、
両方のビットラインがプリチャージされて ロジック1になります。その後、ワード線がオンになり、
両方のPGトランジスタがオンになります。次のステップに 進むのは、QとQ(バー付き)に保存された値が
ビットラインに転送されるときで、このとき BLはプリチャージされた値のままですが、
BL(バー付き)は放電されてロジック0になります。
ライトサイクルが開始するのは、ビットラインに、 書き込む値が印加されるときです。
ワード線がオンになり、保存される値がQノードに ラッチされます。この動作を実現するために、
慎重にSRAM内のトランジスタの大きさを決める必要があり、 これによって適切な動作が保証されます。
スタティック・ノイズ・マージン(SNM)の測定は、 バタフライ曲線の開きの大きさによって得られ、
よくSRAM安定度の指標として使用されます。
2つの欠点がスタティック・ノイズ・マージンにはあります。 そのうちの1つは、SNM測定を自動的に
ラインテスタを使用してできないこと、もう1つは、 統計情報を作成できないことです。SRAM安定度の
不都合を解決するために、SRAMビットセルのN曲線を 使用できます。N曲線を取得するには、
電圧を掃引しながら内部ストレージノードQに 印加し、同時に、その結果生じる
同じノードに流れ込む電流を測定します。全体から 臨界電流を得ることで、重要な情報が
セル安定度に関して得られ、トランジスタの 大きさや電源電圧スケールへの依存性がわかり、
これをモデリング指標として使用できます。
N曲線を使用して特性評価できるのはセル安定度 のみではありません。ライト性能も評価できます。
評価を行うには、ライト用の臨界電流を 使用/定義するために、最小電流を
ライト用のN曲線で求めます。これを得るには、 1つのビットラインをグランドに固定し、
他方を電源電圧に固定します。
正確なSRAMセルのモデリングが極めて重要なのは、 セルの成功を左右するからです。
SRAMのセル動作のリード安定度とライト安定度の 重要性を考えると、セルトランジスタのSPICEモデルは
各トランジスタのIV特性に近い値でフィッティング する必要があり、それと同時に、忠実に
主要なセルの指数を全体として再現 できる必要があります。
したがって、シリコンデータとSPICE モデルがよく一致するような
臨界電流と動作が必要になります。動作とは、 電源電圧や温度に対する依存性などです。
そのために必要なのがモデリングソフトウェアで、 機能として、複数のデバイスモデルを
同時に扱えるものが必要です。好ましいのは、1つの ウィンドウですべてのフィッティング対象を表示できるもので、
これによりモデリングの繰り返しを削減できます。
最後に、全種類のSRAMセルの指標を 簡単に定義/シミュレーションできる必要があります。
では、簡単なサンプルをご覧ください。 使用するセルは、利用できるようになっていて、
ダウンロード方法をビデオの最後でお知らせします。 こちらはIC-CAPの結果です。ある程度、整理して
ウィンドウを並べているので、モデルの最適化を 実行して目標値に到達させるのを同時にできます。
次にプロジェクトの作成手順を紹介します。 このサンプルには4個のモデルがあります。
PD(プルダウン)、PG (パスゲート)、PU(プルアップ トランジスタ)、SRAMセルです。こちらのPD、PG、PUを
使用して良好なフィッティングをトランジスタ レベルで行います。その後、SRAMモデルに移り、
最終的な最適化を実行します。モデルパラメータと プロットのクロスリファレンスを
こちらの4個のモデル間で、IC-CAP自身の 階層構造を利用して行えます。参照いただける
追加資料を差し上げるのは ビデオの最後になりますが、その資料で、
このサンプルの構造とコンポーネントを確認できます。
最初の手順で、各セルトランジスタの モデルを取得します。PDを例として使用しましょう。
ご覧のように、非常に良好にフィッティングする IDVDとIDVGが得られます。
モデル・ビルダ・プログラム・ ソフトウェアを使用して抽出する場合は、
モデルカードとデータをIC CAPに 転送できます。
次に定義するのは、2個のSRAMセルの指標で、 リード用の臨界電流と
ライト用の臨界電流です。こちらは SRAMをサブサーキットとして定義したもので、
6個のトランジスタで構成されています。 セットアップのN_rdに私が設定したのは入力、出力、
バイアス条件で、これをN曲線シミュレーションに使用します。 リード用のN曲線はプロットタブで
取得できます。
次の手順で取得するのは、リード用の臨界電流と そのバイアス依存性です。スクリプトを
使用してカスタマイズします。 プログラム・エディタ・ウィンドウに、数行の
Python コードを書きました。これを用いて 臨界電流シミュレーション結果を、
さまざまな電源電圧で取得します。
次に、セットアップI_rdで表示できるのが、 リード用の臨界電流対電源電圧の
プロットです。青い三角形が表しているのが 測定で、赤い実線が表しているのが
シミュレーションです。このプロットも、後で フィッティングするものの1つです。
同じ操作をライト用の臨界電流についても行います。 こちらでは、別のN曲線のシミュレーションを
別のバイアス条件で行う必要があり、これにより、 N曲線で最小の電流が決まり、その値を臨界電流として、
最終的に電源電圧依存性を取得 できます。
こちらは私のメインワークスペースでSRAMセル モデリング用のものです。最初にウィンドウを用意して、
すべてのプロットを表示し、後で必要なフィティングを できるようにしています。次にモデルパラメータを選択し、
目標値と最適化する領域を設定しました。 こうすれば、自動的に、最適化が
トランジスタレベルのIV特性と セル回路レベルの指標の両方に対して同時に実行されます。
良好なフィッティング結果を短時間で 得られました。さらに、
引き続き、微調整を数個のモデルパラメータに対して 手動で行え、最も気になるプロット/領域で調整して、
環境温度でのモデルパラメータを確実に 固定できます。モデルのフィッティングを
環境温度で実行した後に、引き続き 熱関連モデルパラメータを最適化するために、
別のプロットを追加してフィッティングできます。 例えば、臨界電流対温度を追加できます。
複雑なSRAMセルのモデリングで苦労されている場合は、 ダウンロードにより、
このビデオで使用したサンプルを利用できます。 このビデオの概要説明に記載されているリンクをクリックするだけで、
または、こちらに表示されているURLリンクを直接入力するだけで、 入手できます。このプロジェクトを今すぐ利用して、
独自のSRAMセルのモデリング作業を開始できます。 また、プロジェクトをカスタマイズしたい場合は、例えば、
別のSRAMセル指標をフローに追加するだけで、 非常に簡単に行え、これも、
サンプルに基づいて変更できます。
ご覧いただきありがとうございました。