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2011年3月11日に発生した東日本大震災からの母国復興を願い、 彫刻家・吉野美奈子は大理石彫刻三部作「祈りのシリーズ」を制作した。
この記録は、三部作の最終作品「EMERGE」が、ある朝、 損傷を受け、壊されて発見されたことに関するものである。
私は未来へのメッセージとして 何か残せるのではないかと考えていました。
その大理石彫刻三部作のうち、最後の作品がこれでした。 作品名は、”EMERGE” と言います。
彼女は今、目覚めて石の中から出てこようとしています。
そこには、母国日本が震災以降の困難な状況から抜け出し
復興するようにという私の祈りがありました。
2月13日の月曜の朝、およそ10時半頃、 友人のルッチーナとこのスタジオに来たところ
作品は床に落とされていて、 タオルで覆われているのを発見しました。
実際何が起こったのかタオルを開くまで判らなかったのですが、 でも私には、彼女が無事ではないことだけは明らかでした。
タオルをとると、彼女は壊されていました。
彼女の鼻は砕け、頭部は割れ落ちていました。
私は、とにかく受け入れることが困難で、、、
でも、母国の状況のように「世界は完璧ではない」のです。 アクシデントは起こります。
それが起こった時、問題は、 「あなたはどうするのか?」ということです。
私はひたすら、「再生」を目指しましたー
いったい自分にどこまでできるのか、全く未知でした。 でも、とにかくやってみようー
私にできる最善を尽くそう、 そして結果は天に任せよう、と。
私は2つの鼻の欠片と、大きな頭部の割れ落ちた部分をみつけました。 でも、他にも砕けてなくなってしまった部分が随所にありました。
まず欠片をエポキシで接着しました。
次に隙間を埋めてゆきますが、
最初に調合した色が適正かどうかは乾燥前ではわかりません。
なぜならそれを研磨するとまた色が変化するからです。
ですから、この作業を何度も何度も繰り返さなければなりません。
修復をはじめて3週間ほどすると、 新しい調合や技の発見に成功してゆきました。
私にとってはとにかく大きな挑戦でした。
私はただ、彼女を「救う」ことができて良かったー
壊されて「さよなら」とか、「新しいものを創る」じゃなくて。
きっとこれは彼女の運命で、 私はそれを共有する必要があったのだと思います。
この体験を通して、私は母国日本にメッセージを送りたい。
私達みんなにできることがあります。どんな時でも。 以前のように完璧にはならないでしょう。でも、
それは、別の芸術作品として生きるでしょう。