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これ持ってる?
最近やたらと
モノに こってるの
買ったモノがどこから来て
どこに行くのか
気になったから調べてみた
モノは5段階で流れるんだって
採取→生産→流通→消費→廃棄
全部あわせて“物質経済” せっかくだから――
徹底的に調べたわ
そしてわかったの
この5つがすべてじゃない
多くの要素が欠けてるの
一見スムーズなシステムだけど
実は問題だらけ
それはこの流れが一直線だから
有限な地球で
一直線に流れ続けるなんて無理
各段階に現実の社会がある
ただ流れるんじゃない
社会の色んな要素が関わって
いたるところで無理が生じる
この図だけじゃわからないから
まずは空白を埋めてみましょう
まず肝心の“人”が欠けてる
どの段階にも人がいる
ただし注意したい“人”がいるの
誰よりも力のある“人”
まずは政府
戦車のほうが政府らしい?
たとえばアメリカでは
税金の半分が軍事費に消える
でもやっぱり人がいい
だって政治は
“人民の人民による人民のため”
国民を見守るのが政府の仕事でしょ?
次に企業
政府よりもずっと
大きな力があるわ
世界の経済主体トップ100のうち 51が企業
企業がパワーアップすると
政府は国民よりも
企業にゴマすり
人以外で欠けてるのは?
まず“採取”
悪く言えば天然資源の搾取
もっと悪く言えば地球の破壊
木を切って山を爆破して
水も動物も消えた
ここで最初の無理が生じる
それは天然資源の枯渇 使いすぎってこと
かなり切実な問題よ
過去30年だけで
地球の天然資源の 3分の1が消費された
人間は猛スピードで自然を破壊し
地球を住みにくい環境にしてる
アメリカでは原生林が 4%も残ってないし
川の水の40%も飲めない
資源の浪費だけじゃない
アメリカの人口は世界の5%なのに
世界の資源の30%を消費 ゴミも30%がアメリカよ
世界中がこうなら 地球が5つは必要
1つでも限界なのに
行き詰ったアメリカが 次に狙ったのは
第三世界の資源
我が物顔で横取りし
土地を破壊する
世界の水産資源の75%が乱獲されて
原生林の80%が地球から消えた
アマゾンだけで毎分2千本
フットボール場7つ分よ
そこに住む人はどう?
政府と企業は
地元の人に資源の所有を認めない
生産手段もなく消費も少ないって このシステムでは
所有も消費もしない人に価値はないの
次は“生産”
エネルギーを使って 有害物質と天然資源から――
有害な製品を作るの 合成化学物質は 10万以上 出回ってるけど
毒性を調べたのは一握り
複合毒性なんて
検査すらされてない
毒性は未知だけど断言できる
毒を入れれば毒が出てくる
工業生産体系に投入した毒は
普段使うモノに必ず入る
もちろん人体にも
たとえばBFR(臭素化難燃剤)は
耐火性を高めるけど 毒性がすごい
脳をダメにする神経毒 なぜこんなものが必要なの?
BFRは電気製品や家具 寝具に使われてる
消費者は神経毒まみれの枕に
毎晩 頭を乗せて眠ってるの
睡眠中に頭を火から守るなら
別の方法があるのにね
毒は食物連鎖で体にたまる
食物連鎖の頂点で
一番汚染された食物は何だと思う ? 人間の母乳よ
つまり社会で一番小さな赤ちゃんが
母乳から大量の 汚染物質を摂取してるの
信じられない話よね
母乳は赤ちゃんに一番大切なもの 安全でなくてはいけないわ
授乳が続けられるよう みんなで母親を守らなきゃ
というか政府が守らなきゃ
それが仕事でしょ?
でも一番危ないのは工場労働者
多くが妊娠出産期の女性で
環境ホルモンなんかを扱ってる
なぜ妊娠出産期の女性が
そんな危険なことを?
他に選択肢がないの?
それがこのシステムの罠
途上国では環境と経済が衰退し
人々は次々と行き場を失った
世界では毎日20万人が 先祖の土地を捨て
都市部で職探し 大半がスラムに流れ
劣悪な環境で働くの こうして資源だけでなく
人と地域も崩壊する
毒を入れれば毒が出てくる
毒は製品になるけど
副産物の毒はひどい汚染を生む
アメリカの排出量は 年間180万トンて話だけど
実際はもっと多いはず
企業はまた行き詰る
大量の毒はさすがに まずいから考えた
汚い工場は海外に 移せばいいんだって
でも残念 汚染物質は 風にのって戻ってくるわ
さて できた製品の行く末は?
そう“流通”に乗る つまり
粗悪品を急いで売りさばくの
目標は価格を抑えて消費を促すこと
低価格維持の方法は?
賃金や手当を削ればいいの
つまり“費用の外部化”
真の費用が価格に 反映されないってこと
消費者は対価を払ってないの
たとえばこの前
ラジオが欲しくなって 電気屋に行ったら
4.99ドルでいいのがあった
でも不思議に思った
これを作って売るまでの費用は 4.99ドルで足りたの?
金属は南アフリカ
石油はイラクから プラスチックは中国製
組み立てはメキシコのマキラドーラ
4.99ドルじゃ 陳列スペースにもならない
店員の給料にも
輸送費にもならない そう!
対価を払ったのは私じゃない じゃあ誰が?
この人たちは天然資源を犠牲に
この人たちはきれいな空気を 対価に払った
コンゴの鉱山地域では――
30%の子が学校を辞めて コルタン掘り
安い使い捨て家電のためにね
この人たちは無保険
みんなが対価を払ったから 私がラジオを安く買えた
そんなのは帳簿に載らない
これが真の生産コストを 外部化するってこと
そして登場するのが金の矢印 “消費”
システムの原動力
政府と企業にとって 何よりも大事なものよ
9・11の悲しみの中
大統領が国民に言った
祈りや希望ではなく “買い物しろ”って!
アメリカは今や消費大国 国民のアイデンティティは消費者
職業に関係なく消費者
人間としての価値は
この矢印への貢献度で決まる
私たちは消費を続け 物質も流れ続ける 流れていく物質のうち
北米での発売から 半年後 廃棄されずに 残ってるのは何%だと思う?
50%? 20%? 正解はなんと1% たったの1%!
様々な段階を流れていった物質の 99パーセントが発売後半年以内に――
ゴミにされるってこと そんな暴挙を続けたら 地球がもたない
昔は違ったわ
アメリカ人の消費量は50年で2倍
昔は倹約が美徳だった
どうしてこんなことに? 実は仕掛け人がいるの
戦後 政府と企業が 景気刺激策を練ったとき
小売アナリストの
ルボーが提案した
“生産性あふれる米国経済は”
“生き方としての消費行動を 儀式化し その中に――”
“精神の充足を求める”
“消費 買い替え 処分を 加速すべきだ”
アイゼンハワーの 経済諮問委員長も言った
“消費財生産の拡大が究極の目的”
消費財が究極の目的ですって?
医療 教育 安全な輸送 持続可能性 正義をさしおいて消費財?
そんな話が通用するの?
秘密は“計画的陳腐化”と “心理的陳腐化”
“計画的陳腐化”は捨てるための設計
すぐ壊れるように設計すれば
買い替えが進む
ビニール袋や紙コップはもちろん
モップにDVD カメラ グリル パソコンもそう
新製品を買ったって
技術が進歩して
すぐ不便になるわ
試しにパソコンを開けてみたわ
毎年変わるのは小さな部品だけど
形が違うから取替えは無理
だから丸ごと新調よ
50年代の工業デザイン雑誌で
こんな議論があった
“消費者の信頼を守りつつ”
“いかに壊れやすく作るか”って
確信犯ね でも
それだけじゃ足りないから
“心理的陳腐化”よ
まだ十分使えるモノを 捨てさせる作戦
つまり商品の外観を変えるの
古い製品を使ってたら
最近買い物してないことがバレる
消費が人間の価値なら これじゃ恥ずかしい
私のモニタは旧式だけど
同僚が新しいのを買ったの
クールな薄型よ ついでに
電話 ペン立てまでコーディネート
彼女のデスクは近未来風なのに
私のはまるで洗濯機
流行もいい例だわ
ヒールの太さが毎年変わる理由を 考えたことある?
女性の足の健康なんて 全然 無関係
細ヒールが流行の年に――
太ヒールを履いていたら 恥をかくようにするためなのよ
つまり毎年 新しい靴を 買わせる戦略なの
ここではメディアと広告がカギ
アメリカ人は1日で 3千の広告にさらされる
1年で50年前の人の一生分だって
広告は自分への不満をあおるだけ
毎日 広告は私たちに訴える
“髪も肌も家具も車も自身もダサい”
“でも買い物で解消できる”とね
メディアはこれらを隠して
消費活動だけをクローズアップ
採取 生産 廃棄の実態は見えないわ
モノが一番あふれている現代
アメリカ人の幸福度は下がってるわ
幸福度は消費ブームが始まる 50年代をピークに下降
興味深い偶然だけど 理由はわかってる
モノはあっても 幸せを感じる時間がないからよ
家族との時間も余暇もない
忙しすぎて 余暇の少なさは中世以来だとか
なけなしの余暇は2つの活動に使う
テレビと買い物よ
アメリカ人の買い物時間は ヨーロッパ人の3~4倍
悪循環もいいところ
汗水流して働いて
”疲れて帰って テレビ観て
CM見たら 買い物で気晴らし
もっと稼いで もっと疲れて
もっとテレビ観て もっと買い物
こんな悪循環 やめちゃえばいいのに
買ったモノは結局どこへ?
買ったモノは結局どこへ?
家は広いというのに
置き場がないからゴミになる
つまり“廃棄” 物質経済の重みは――
ゴミ出しの時に実感できるわ
アメリカ人は1日1人あたり 約2キロのゴミを出すの
30年前の倍よ
ゴミは穴掘って埋立てるか
ひどい場合は一度 焼却してから埋立て
空気と土壌と水が汚れ 気候も変化する
焼却はタチが悪いわ
生産段階で入れた毒が
焼却で大気中に排出されるとき
新たな猛毒が生まれるの たとえばダイオキシン
科学史上最強の人工毒物よ
最大の発生源は焼却場
つまりゴミの焼却を止めれば
すぐにでも猛毒の大元を絶てるの
埋立地や焼却場を作りたくなくて
廃棄物を輸出する企業もあるわ ではリサイクルは?
もちろん有効よ 廃棄も減るし――
採取のプレッシャーも減る
そうなの リサイクルしたらいいの
でもそれだけじゃダメ
家庭ゴミは氷山の一角
バケツ1杯分の家庭ゴミを生むのに
生産段階ですでに
70 杯分が廃棄されてるわ
家庭ゴミを100%再生できても
解決には程遠い しかも再生できるのはほんの一部
汚染物質を含むとか 再生しにくい設計だとか
内側が銀色の紙パックだって
真のリサイクルはできない
このシステムは問題だらけでしょ?
気候変動も幸福度も限界なの でも
地球規模の問題だからこそ
介入方法もたくさん
森林保護やクリーン生産
労働権 フェアトレード
自覚ある消費 焼却・埋立の阻止
政府にも訴えるの
“人民による人民のための政治”を
みんなが大きな視野に立って
力を合わせれば
この一直線のシステムを変えられる
資源や人を無駄にしないシステムにね
使い捨てを改め 持続可能な
新しい考え方を取り入れるの
グリーンケミストリー 廃棄物ゼロ クローズドループ生産
再生可能エネルギー 地域共生経済
非現実的って批判もあるけど
これまでの浪費主義こそ非現実的
ただの夢想よ
今のシステムは自然にできたんじゃない
人間が作ったんだから 人間が作り変えなくちゃ
( 字幕) subtitled by Tony Carvalho