Tip:
Highlight text to annotate it
X
トランジション・ネットワーク
グリーン・レーンフィルム制作
イン・トランジション2.0 トランジション進行中2.0
トランジション活動は、人々がそれぞれの違いを乗り越えて集い
創造力を発揮しようとする気持ちを刺激します
そしてそれぞれが持つ強みやエネルギー、情熱を最大限活用します
それは、行動様式を変えるのではなく
必要な時に必要なものが手に入るようなしくみをつくることです
必要だと気づいた瞬間に、もうそれがそこにあるというような状態です
私にとってトランジションとはみんなが自分の居場所を持ち
各々の価値観や目的が尊重されるような社会に近づくことです
そこでは、物理的な環境だけでなく、人々の価値も認められるのです
僕にとってのトランジションはコミュニティとの関わりだね
自分たちでコミュニティを作り、それに貢献するんだ
誰しも自分達のコミュニティには関心があり、誰にでも何かできる事があります
誰ものけ者にしない、このトランジションの考え方が私は好きなのです
私にとってのトランジションとは、自分たちのコミュニティが
20年、30年、50年先にどうなっているかを想像することです
みんなが参加して、誇りに思えるような何かを創造し、
みんなが幸せで、持続可能な生き方をしている、そんな未来を思い描き
それを実現するためにいま、何ができるのかを考えるのです
S・V・コーテン:「あれ? 何これ? 石油?」人間が、石油を見つけたところさ
「おや、これはなかなか便利なものだな」ってどんどん使いだした
そうして「おや、これは本当に便利だよ」ってもっともっと使いだした
そして僕たちが使う石油の量はどんどん増えていった
そのうちに石油の残りはどんどん減っていった
それは大きな問題になっているんだ
二酸化炭素のような温室効果ガス
それは僕たちが石油を燃やすと発生し、大気中にたまっていく
そして太陽からの熱を吸収してため込んでしまい、熱が外に出るのを止めるのさ
そして、地表に跳ね返った熱が地球を暖めてしまうのさ
これが不安定な天候や一般的な気温上昇の原因になる
極地の氷は溶け、海水面は上がり、洪水が起こる
つまり気候の大混乱が起こるのさ
ピークオイルは別の問題とも関連していて、それは経済危機と呼ばれているよ
経済危機とは、経済が破たんしてしまうこと
基本的に経済が成長するために最初に必要なのは消費者だ
それから消費者が買う商品が必要になる
そして、その商品は工場で作られる
工場を動かすには石油のような安いエネルギーが必要だ
ピークオイルのせいで安いエネルギーが得られなくなってしまったら
商品はぐんと値上がりし、消費者はものを買わなくなる
そして経済は縮小する
トランジション活動をやっている人たちは持続可能な経済を求めている
きまぐれに膨らんだり、縮んだりする経済の代わりにね
だって、今の僕たちの経済は
いつ、バーン! と消えてしまってもおかしくないんだから
でも、もし持続可能な経済ならそうはならない
だから何かしらの形でトランジションが必要なのですが、それには指針が必要です
私たちの文化は自分が消費者であると強く思い込むように仕組まれています
世界で起きていることにも気づかずにいます
こういった状況を変えるには何らかの支えが必要です
その支えこそがトランジション活動であり、それに取り組むコミュニティなのです
私たちの今の生き方は持続的ではありません
だから、これは消費主義から抜け出すための道なんです
消費主義はもう、限界に達しています
それは人と人とがもっと繋がった世界を創る方法です
人間同士がもっと互いにつながり、その周りにある自然界ともつながって
誰もが何かを提供でき、貢献できると感じられるような世界
また、それは専門家だけで創れるものではありません
トランジション活動は私の生活に勢いと強い目的意識をもたらしてくれました
加えて、人々のことを深く知り、本当のことを語り合えるのは
とても楽しく、やりがいがあり、得るものも大きいのです
私は人と話すこと、人を助けること、自分のコミュニティを作ることが好きです
世界中に広がるトランジションの活動地域
イギリス 200地域
ヨーロッパ(イギリス以外) 81地域
南北アメリカ 310地域
アジア・オセアニア 157地域
現在、全世界で登録された地域は900、未登録の地域も含めると1800を超えます
ロブ・ホプキンス(トランジション・ネットワーク創設者):トランジション活動はまず
人が集まることから始まります。人々はみなそれぞれが違った所から集まってくるのです
もしかすると、何か別の目的ですでに集っている仲間かもしれません
あるいはよく知った者同士だけど何かを正式に一緒にやったことのない仲間かもしれない
イベントやバーで出会い「トランジションをやってみようか?」と盛り上がった仲間
かもしれません。どんな形であれ、最初に人が集まり、仲間ができる
それが、その後に続くすべての活動の「タネ」なのです
グループ形成 アメリカ、マサチューセッツ州トランジション・ウェイランドの場合
キャット・ヴァンダー・ストリートン:最初の会合は4月3日、8人が集まりました
2度目は1人しかやってきませんでした
帰宅した時のことは覚えています。会の出席率が悪かったことで、夫は私に同情しました
その時、私は夫に「あなたは間違っているわ」と言ったのです
「これは、来るべき人が来たということなのよ」と
トランジション活動ではよく「来た人は皆、適任者である」といいます
私はその言葉に対して最初はとても懐疑的でした
でも、いまではそれが正しいと断言できます
最初の会合に来てくれた8人のうち
4人は今ではTTウェイランドの立ち上げメンバーですし
1人だけの参加者だった彼もTTウェイランドの立ち上げメンバーになりました
図書館で行った最近の会合には10人が集まり、ほとんどがTTウェイランドの仲間です
話は夜まで大いに盛り上がりました
閉館時刻を過ぎても私たちが動かないので、ついに図書館員に追い出されてしまいました
その時、私がこの会合を計画し、実行したことを実感しながら、そこを後にしたのです
グループも形になり、まさに天にも昇る気分でした
トランジション活動に従事するグループを
過去5年にわたって観察するなかで
それらのグループは、必ずいくつかの段階を経験することがわかりました
第一段階: 始める
第一段階の「始める」は、創造的で遊び心に満ちた、また混乱も多い時期です
映画上映、ポスター貼り、イベント企画、問題意識を共有するための活動を通して
トランジション活動の基盤が築かれはじめる時期です
しかしこのステージではまだ「TT何々」といった名称はないかもしれません
問題意識の共有 イギリス マンチェスター モスサイドの場合
ジョエル・プリティ(TTモスサイド):モスサイドは貧困者の多いスラム街です
人口過密地区であり、様々な文化が交じり合った地域で
イギリスのブロンクスと呼ばれるほど悪名高い地区です
しかし、人口過密地域であることの利点もあります
立ち並ぶ家々をくまなく、そして手早く訪問することができること
留守宅だったら、すぐに隣へといった具合にです
僕は昔、複層ガラスの会社で飛び込みセールスをやっていました
エネルギー会社に勤めていたこともあります
飛び込み訪問には自信があるんです
だから「僕は飛び込みでも説得力ある説明ができ、よい印象を与えられる」と思いました
僕は以前やっていたどんなことよりもトランジション活動を信じています
その思いがさらに僕の自信を高め、こう考えるようになったのです
「僕がトランジション活動の説明を飛び込み訪問でやれば絶対うまくいくだろう」と
飛び込み訪問をすると、さまざまな反応が返ってくるでしょう
そして、それは問題意識を共有するための他の活動で得られるものとは異なるはずです
要するに、数が勝負なんです
大多数の人たちは参加してくれないでしょう。でも、やり続けることが大切なんです
「あなたと連絡を取る一番よい方法は?」
「私はいつもいるわ。毎日よ」
「そりゃいいや。メモしておくよ」
コア・グループのメンバーの1人、アリ・モハメドとは飛び込み訪問で出会いました
僕の知る限り、彼はそれまでどのような環境活動にも参加したことはありませんでした
アリ・モハメド:最初は「すごいことをやっているな」と思ったわけではありません
でも彼に心をひらき、その話に耳を傾けました。モスサイドについての話はなおさらです
これは僕たちのコミュニティに関わることなのだと感じ、さらに耳をそばだてました
僕にとって飛び込み訪問は、これまでに環境活動というものに全く参加したことがない
新しい人と出会い、つながれる、とてもわくわくする方法に思えたのです
それに、ご近所の人たちと知り合いになることは良いことです
だって、何かあった時には手助けしてくれるかもしれないじゃないですか
こうして自分たちのコミュニティとの関係性を築いていくのです
このような関係を築くことは、自分たちのコミュニティを守ることにもつながります
人々が互いに知り合い、助け合えるような関係です
ジョエルはこれまで1420戸のドアをノックしてきました
TTモスサイドは現在237名の名簿を持っています
そのうち3分の2は飛び込み訪問によって得られたものです
トランジション活動には、これが正しいという決まった方法はありません
まず最初にコア・グループを立ち上げる場合、その活動の第一歩として
問題意識を共有するためのプログラムを始めるケースがあります
チラシとポスターを作り、映画を上映して、という具合に
それとはまったく逆に、少人数、もしくはたった1人で
問題意識を共有するためのプログラムを始め
外へ出向いて、映画を上映したり、他の団体とネットワークを築いたり
といったことをやっているうちに
そうしたプログラムを通してコア・グループが立ち上がる場合もあります
どちらが正しい方法というわけではなく、何があなたの地域で最も適切か? ということ
夢見ること アモレイラスの持続可能な村(ポルトガル アレンテズ地方)の場合
私たちが住む地球は孫たちのものです。自然を破壊せず、他の地域に依存することなく
母なる大地が与えてくれる恵みによって生きなければいけません
アルデイアは私たちの土地、持続可能な方法で手入れしていかなければいけません
最初のステップは夢見ることです
あなたの村への夢、あなたの夢の村はどんなものですか?
村は小さくはありませんが、ほとんどが空の状態です
老人は亡くなる一方で、若者は他の場所へと出て行きます
村には年寄りは、もう6人しか残っていません
私の夢は、私たちがみんなとよい関係をもつこと
それは私たちが見失っているもの。みんなが一緒に仲良くすること
そして私たちができるかぎり、互いに助け合うこと。それが私の夢なのです
私の夢? 何だと思いますか?
それは医者が来てくれる場所をつくることです
近い将来、私は病院まで行けなくなるでしょうから
これが私の夢でした
子ども達のために何かもっと
公園や遊び場所のような場所があればいいんですが
もう赤ちゃんのことを考えているんですね!!
村の人がウリーケの町まで遠出しなくてもいいように
村に食料や日用品を買える店を作ることです
つまり、もっと村の中で商売をすることですか?
そう、小さな商いを村の中で起こすことです
すべてが片づけられ
きれいになった庭が見られるといいな
もしほんのわずかでも村の夢が叶えば素晴らしいことです
そうなれば本当にいいですね...
なぜなら、村は活気づき
持続可能になることを必要としているのですから
村にとってとても必要なことなんです
アモレイラス村では、すでにいくつかの夢を実現しています
彼らは村全体をきれいにして、家々の壁も塗り替えました
彼らはローカルマーケットをつくりました
子どもと健康管理改善のための施設について
話し合うためのミーティングも行われています
将来についてのビジョンを持つと、あたかも目の前に磁石や渦巻きがあるかのようになり
時が経つにつれてあなたを、その方向へと引きつけ始めます
ビジョンにはそれだけの強い力があると私は思います
内なるトランジションのワークショップ イギリス、デヴォン州
ソフィー・バンクス(トランジション・ネットワーク):人々の居場所があり
幸福であると感じられるような素敵な場所にしたいと思ったら、それを実現できるような
暮らしの基盤を整えることが必要です。しかし、私たちに求められている
もっとも大きな挑戦、もっとも大きな移行は、実は私たちの内側にあります
人々の中に幸せをつくりだすにはどうすればいいのかを理解することが大切です
なぜなら大量のモノを所有することでは、幸せはにはなれないからです
私たちに必要なのは、人々が幸せな状態へと移行するのを支える文化です
私たちの内面で起こっていることの中で、まずは自分で自覚できるところから始め
次に、あまり自覚できないけれど、確かに起きていることに意識を拡げ
これら、内面で起きていることがどれほど
他者との関わり方や現実世界における行動に
影響を与えているかに気付くのです
これが「人間の内面で何が起きているのか?」を知るための方法です
現実世界で私たちが競争を重視したり
できるだけ多くを手に入れようとしたり
自分よりも多くを持つ人に、負けずについてゆこうとしたり
他人や、自分と異なる人を
脅威として見たりするのは
実は意識の状態、つまり私たちの内面で起こっていることに起因しているのです
私たちがそのことを感じ、その事実を受け入れ
何が起こっているのか認識し、何らかの方法でそれに取り組むまでは
それは現実世界にさまざまな形をとって、現れ続けるでしょう
第二段階:深化
第二段階は 「深化」です
この段階になると、突然次のようなことに気付くでしょう
「私たちは今”TT何々”となって1つの組織になりつつあり
もう少し仕組みを整えてちゃんとしたものにしないといけない」と
それは先の「始める」の頃の段階とは打って変わったものに感じるはずです
近所の人を変えるための組織になる必要はありません
ピッツバーグでは、トランジション活動ではない方法で変化をつくりだしています
クリス・コンデロ(都市農場設立者):トランジション活動のサイトを見つけたとき
そこには私がやろうとしていたのと同じような方法で活動している様子が載っていました
そこはまさに知恵の宝庫であり、私はそれらの知恵を活用しようと強く思ったのです
パーマカルチャーに関することもいろいろ書かれていましたが
それは前から私が都会で実践できないかなと思って関心を持っていたものでした
トランジション活動は私が興味のあることのすべてを1つのサイトで網羅していました
こんな活動をしている人たちを他で見つけるのはとても難しいんです
私はよく自分と同年齢で、ガーデニングに興味がある人なんていないと考えていました
女性の趣味と思われていたガーデニングをする人が、案外いることがわかりました
パンクスタイルで、ヘビメタの音楽を聞きながら土いじりをしています。いい感じですよ
私たちが住むウィルキンズバーグというピッツバーグの郊外の町は
あらゆる意味で荒廃した地域です
私たちが朝一番にすることは人気のない家々の見回りをすることで
そこに不法定住者がいないか確認し、私たち自身の安全を確保することから始めます
イエローハウスと呼ばれるこの建物は区画の20%の窓が板で囲われているか空き家です
こんにちは? こんにちは? 誰かいますか?
「君は立派な人間になれる! やり続けろ!」
よかった。ここには誰もいないようですね
これがホイットニー通り都市農園です
ここにあった家々は、確か5,6年前に焼け落ちました
私たちがここで育てる野菜はほとんどが無料で配布されるかフードバンクへ寄付されます
近所の人たちはみんなここへ気兼ねなく来ることができて
果物や野菜など好きなものを採っていいと知っています
ローナ・テイラー(住人):クリスとコラリーがホイットニー通りへ来た時
そこはほとんどが空き家という古くさびれた通りでした
彼らは誰の力も借りずに通り全体を美しくしたのです
それによって人々は食べ物に感謝するようになりました
この通りに住む人の中には、食べ物に苦労している人もいましたが
あの菜園に行けば、何か食べるものを採ることができるようになりました
私たちは近所の子どもたちと一緒にこの活動をします
実は、私たちのもとにはあらゆるトラブルを抱えた子どもたちがたくさんいたので
何か彼らを夢中させる方法が必要だったのですが、これが私たちの考えついた方法です
ブランドン(ボランティア):最初は 「こんなのつまらないよ」と思いました
今もそんな感じだけど、ここにいればトラブルには巻き込まれずにすむからね
私たちはブランドンに悪い影響を与えていた他の通りからの子どもたちも抱えていました
彼は自分に悪い影響のある他の子ども達についていっていたんです
その子どもたちがいなくなってから、クリスとコラリーが彼に仕事を与えて
彼はよい子に変わったんです
食べ物を菜園から採ってきたら、それをどうするんですか?
とうもろこしのこと?
全部です
あー、売りました
どこで売ったのですか?
すぐそこですよ
そこまで連れて行ってくれる?
もちろん
お客さんがやってきたらこう尋ねるんだ
「トマトはいかがですか。ズッキーニやトウモロコシもありますよ」
もし「いらない」って言われたら「ありがとう。またどうぞ」って言えばいいのさ
私たちはこの子を愛しています。息子同然です
彼には、自分の家では学べないあらゆることを教えてあげたいのです
ウィルキンズバーグの街が荒廃した大きな理由の1つは
「父親の不在」です
この街の多くの子どもたちの父親は、刑務所に入っていたり、殺されたり
行方不明だったりします
この街にはギャングが多く、FBIが乗り込んで彼らを解散させるたびに
60~70人が一度に逮捕され、刑務所に20年も収容されたりします
その人たちは全員男性で、多くは子どもを持つ父親です
決めつけないで
こうした菜園をウィルキンズバーグ周辺にどんどん作っていきたいのです
そうすれば、ここの人たちは自分の食べものを自分で作れるわけです
ここでやっていることは、この町のどの通りでも実現可能なモデルなんです
どの通りにも、家が取り壊されて空き地になっている場所が最低でも1つは必ずあります
あきれるほど簡単ですよ。だって、ウィルキンズバーグの住人が
小さなグループを作り、小さな菜園を持てばいいのです
私は持続可能性とはどういうものなのか、1つの例を示しているわけですが
2年前の時点では、この通りのほとんどの人は
持続可能性とは何かを説明することができなかったと思います
この通りはウィルキンズバーグの誰もがうらやむような場所に生まれ変わったんです
いまでは、ホイットニー通りは誰もが訪れたいと思う、この町一番の通りです
涙が出てきた。あなたが泣かせたのよ!
自分自身に誇りを持てるようになりました
家族が訪れるたびに、自分の住むこの場所を誇りに思うからです
おかげで私は変わりました
「食」は多くのトランジション活動が最初に取り組むテーマ実践的なプロジェクトです
なぜなら、それを始めるにあたって何かを待つ必要などないからです
許可も資金も必要ありません
街の外れに風車を設置しようと思ったら、5、6年かかるかもしれません
共同菜園を始めたり、野菜などを自分で栽培したり、プランターで植物を育てたり
それらは今すぐにでも始められ、とてもシンプルです
だからこそ、多くのトランジション活動がまず最初に食に関するプロジェクトに取り組み
それをきっかけに活動のはずみをつけていく例が数多く見られるのでしょう
土地活用 ロンドン、トランジション・ケンサル・キルバーンの場合
マイケル・スチュワート(推進メンバー):私たちはジュビリー線キルバーン駅にいます
4ヶ月前、この花壇は空っぽでした
それを見て、私たちはここに何か植物を植えてもいいですかと地下鉄に尋ねてみました
私たちは、果物や野菜はどこでも育てられることをまず示したかったんです
ここはおそらくロンドンの地下鉄で唯一、果物や野菜を育てている駅だと思います
リンゴの木があるという点でも、唯一でしょう
1日12,000人が行き来する、こうした目立つ場所を私たちが借りられたのは幸運でした
通勤、通学の人々が電車を降りて
イチゴやトマトを摘み取り、帰り道に食べられるなんて素敵じゃないですか!
サンチア・ダン(フードグループメンバー):私たちはロンドン交通局を訪れ
食べ物を育てても良いかを尋ねましたが、最初、彼らの反応は少しナーバスなものでした
「食べ物は困ります。花なら大歓迎ですけどね」
このように私たちの最初の試みはやや残念な結果となりました
しかし、打ち合わせの中で、彼らは提案してきたんです
「“地下鉄花盛りコンテスト”というのがあるので、これに参加してみませんか?」と
そして、どの応募カテゴリーでなら参加できそうか、その一覧に目を通していた時
「野菜を育てよう」というカテゴリーがあることに気づいて、彼らも心底驚いていました
私たちは言いました。「ぜひ参加させてください。リンゴの木や野菜の種もあります」
彼らは、駅のプラットフォームで食物を育ててもいいなんて、思ってもみなかったんです
どんな人が関わるかで状況は変わるし、ときには忍耐力が必要な場面も出てきます
なにごとにつけよくあることですよね
冒険するのを極端に避けようとする人もいれば、楽しそうだと感じる人もいるので
どんな組織であっても、話す相手によって状況は変わるのです
同じ場所でも違った見方ができるということです
私はここに10年も住んでいますが、全く異なる見方でこの地域を見ています
これは私にとって、この地域でこうした関係を作り出すために活動した初めての経験です
本当にわくわくしますよ
トランジション活動の中で「お祝い」の機会を持つ事はとても重要です
理想を掲げる、プランを練る、実行する、というサイクルがありますが
次のサイクルに移る前に、それまでに達成したことを祝うのを忘れてはいけません
TTトゥーティングは「ゴミ集め人カーニバル」を開催して、お祝いしました
100万を超えるペットボトルとレジ袋
50万ものポテトチップの空袋
そして膨大な量の他の不要物が
このイベントのために6ヶ月間にわたって集められました
お祝いしたり感謝したりというポジティブなコミュニケーションは
私たちの心を満たし、自分に対して肯定的な気持ちを抱かせてくれます
仲間の成果を祝ったり
仲間の優れているところを認めあえるような心の余裕があれば
信頼関係もできるし、いっしょにいることに喜びを感じられるようになります
逆に、絶えずプレッシャーにさらされ、やるべきことに追われ
そうした時間すら持てない人たちはすぐに疲れ果ててしまうでしょう
トゥーティングのカーニバルへようこそ!
トランジション活動は、抗議デモというよりもパーティのようです
会合のたびに、起きたことをお祝いしたり感謝したり
自分たちの成果を祝うために、意図的にイベントを開催したりするといいでしょう
もしこの映画が、トランジションがいつも機能し、まばゆいほどの成功を
いつもおさめているという印象を与えるとしたら、それは誤りです
個々のプロジェクトでも、それぞれのトランジション活動でも、また組織全体としても
華々しく失敗したり、熱意を失って失速してしまうことがあります
TTランカスターは、立ち上がって1年足らずで失速してしまいました
全員が同じ夢を抱けばうまくやっていけるというバラ色のビジョンを抱くことも可能です
しかし、それが現実になることはなく、すれ違いや対立はどのグループでも必ず起きます
クリス・ハート(トランジション・ランカスター発起人):正直、ひどい経験でした
個人的なこともありますので、詳細には触れませんが、本当に最悪な結末でした
非常に傷つくことを言われたり、ひどい罵声を浴びせられ
ついには自分自身にも腹を立て、上品とは言いがたい態度をとってしまいました
ああ、あれが団結して世界を救おうとする人たちだと言うのなら
もうこんな星にいても何の希望も持てないので、さっさと出て行きたいと思いました
私たちときたら勘違いばかり、きっと世間知らずな愚か者なんですね
もし私たちがこの試練を乗り越え、そこから学ぶことが出来たなら、それこそ大変化です
そうなったら次回はもっと上手くできるはずです
この経験を通して、私たちが学んだ最も重要なことは、新しいグループが立ち上がった時
地球を救うとか、ピークオイルに対応するといったこと以上に
互いの声に耳を傾け、互いの考えを尊重することに集中することが重要だと気づきました
必ずしも同意する必要はありませんし「同意出来ない」と言っても構わないのですが
一番大切なのは、互いの関係に配慮し、互いに寛容であるということです
新しいTTランカスターには、今では約450名の地元の人々が関わっています
数え切れないほどの上映会、講演会、話し合い、露店の出店、食事会や祭りを開催した後
2010年4月、公式に発足しました
内なるトランジションでは
「トランジションの活動の中で責任を果たすことがいかに大変か」を話す場や
それを支えるしくみを用意することが本当にみんなの役に立つと指摘しています
リーダーシップ・サポート ロンドン、TTフィンズリーバークの場合
ジョー・ホーマン(TTフィンズリー):会社ではないので、ほめてくれる上司もいません
だからこの活動に携わっている人たちには、最近取り組んでいることに耳を傾けたり
直面している問題を理解してくれるような、互いにサポートし合える仲間が必要です
先頭に立ってやっていくこと、あるいは先頭に立っていると感じるのはとても疲れるので
なんでそれをやっているのかわからなくなることもあります
そういう意味で、時に自分の感情が湧き起こる源泉にさかのぼることも有用です
なぜなら、そうすることで自分を突き動かしている原点に立ち戻ることができるからです
そうすれば、退屈な気分から、また幸せな気分になれるでしょう
デビー・ワレナー(サポートグループ・ファシリテーター)
トランジション活動では全員が今までとは違ったリーダーシップをとることが重要です
異なるプロジェクトのリーダーが集まり、互いを支え合い、互いにつながる機会を持てば
そこで自分のグループに持ち帰れるようなスキルを学べることだってあるでしょう
これはステキなことだし、自分がなんでこの活動をしているのかを思い出させてくれます
その結果、今では自分の周りにとても強力なサポートのネットワークができたと感じます
これは私が想像していた以上の成果です
第三段階:つながる
第三段階は「つながる」です。この段階は活動が軌道に乗り
その地域の議会やビジネスを含む、より広義のコミュニティ
つまり、これまであまり接触のなかった団体や個人に対して
いよいよ本腰を入れて働きかけ始める段階です
つまり、この「つながる」段階ではトランジション活動をより一層深く地域に根づかせ
より多くの人たちにとって関心のあるものにしていく必要があります
行政との協働:イタリア・ボローニャのTTモンテヴェリオの場合
C・ボットーネ(TTモンテヴェリオ発起人):08年の夏に最初のトランジション説明会を
開催しました。参加者はトランジションについてもっと知りたいと思ったようです
ダニエレ・ルッシーニョ(モンテヴェリオ市長):説明会で聞いたことは、衝撃でした
その後数か月が経って、さらに問題意識が高まってくると
中にはトランジション活動に積極的に関わる人も出てきました
一方、ウンベルトとダニエレを含む何人かは地方議会に立候補することを決めました
彼らは選挙で勝ち、今や1人は市長、1人は環境系の議員になりました
その結果、地方議会にトランジションを良く理解する人が2人もいることになったのです
それ以外の人たちも、この先どんな困難が待ち受けているかをはっきりと認識しています
ウンベルト・フォンダ(環境系議員):限りない成長を追求した結果のピークオイルや
気候変動といった問題に人口5000人の小さな町がどんな政策を打ち出せばいいのか?
最初は戸惑いました。そこで、まずはすべてを書き出してみることにしました
すると、それが1つの決議案になったのです
それはエネルギー削減計画を作り、化石燃料の消費を真っ先に減らすことを謳っています
どうやって政治家にこのような画期的な決断を下させたのか、とよく聞かれるんですが
幸い、私たちにはロビー活動も、誰かを説得する必要もありませんでした
私たちはすでに重要な目標を達成しています
まず初めに、都市開発計画の抜本的な見直しを行い
地方議会と力を合わせることで、不可能と思われたことも達成することができました
たとえば、エネスコム・プロジェクトでは、この谷にある6つの集落が
この一帯のエネルギー削減計画の作成を私たちに一任するという協定を結びました
これらの政策がきちんとしたお墨付きを得られれば
私たちは石油中心の経済から脱却し、地域のレジリエンスを高めることが可能です
この一帯すべてがこの協定に参画するというのはとても興味深いものがあります
なぜなら、この協定はCO2の排出量を減らし
新たな再生可能エネルギーの開発を促すためにEUが展開しているプログラムだからです
この協定はトランジション活動にとっても
市民や行政をエネルギー消費の削減に集中させる上で役立つツールとなるはずです
モンテヴェリオで起きていることは、他の多くの活動地域で見られるものと変わりません
ただ、ここでは地方自治体を巻き込むことで変化の過程を加速させています
トランジション活動のように草の根的なアプローチと
ローカリゼーションやレジリエンスに関心を持つ、前向きな地方自治体が出会った時
その接点で何が起こるかはとても重要だし、すごくおもしろいテーマだと思います
どうすれば地方議会がトランジション活動を主導するのではなく、サポートできるのか
どうすればピークオイルやレジリエンスについての問題意識を彼らの仕事に組み込めるか
そして、両者の動きが一緒になった時、何が起きるのか? といったテーマです
トランジション・ストリート イギリス、デヴォン州トットネスの場合
「トランジション・ストリート」は、もともとTTトットネスの活動を通して
小さな区域毎に人々を巻き込んでいくための方法として考案されたものです
F・ワード(トランジション・ストリート):通常は誰かがふらっとやってきたり
電話をかけてきたりして、ご近所さんたちとグループを始めたいと言ってくるところから
始まります。そして、彼ら自身がご近所さんをまわって参加者を集めてくるんです
そこが他のプロジェクトと違う点で、私たちは一軒一軒をまわったりはせずに
彼らが自分たちでやるんです
通常6人から10人くらいのご近所さんが集まり、7回のセッションを行います
つまり全部で7回集まるわけですが、その最初の回だけ私たちが司会進行を務めます
誰かを派遣し、そのグループがちゃんと軌道に乗り
次回の集会の予定を決められるよう手助けします
2回目のセッションでは各家庭におけるエネルギーの使い方について取り上げます
そこで現実的に実践できることを12個ほど紹介しますが、どれもお金はかかりません
つまり、私たちは無料もしくは低額でできることに焦点を合わせているわけです
セッションの最後には、ちょっとした行動計画をみんなに書いてもらいますが
たいていは自分が次回の集会までにやってみようと思うことを2、3挙げます
J・ロタス(参加者):エネルギーの節減方法や地球の資源をより賢く使う方法に関して
多くのことを実行に移すことができました
我慢せずにね
この我慢しないってところが大切で、実際にやってみると結構おもしろかったんです
小さな区域毎に見ていくので
石油がなくなった後の低炭素社会がどんなふうになるのかが、より身近なレベルで
想像できるようになるんです
世界がすべて変わった様子を想像するのではなく
自分たちが住む世界の片隅のほんの小さな地域が
まったく新しい姿に生まれ変わるのを想像する方が取り組みやすいのではないでしょうか
集会で読んだり話したりしたことを実際に試してみたら、ずいぶんと変化がありました
それは行動の変化というより、生活における姿勢の変化といった方が近いかもしれません
つまり、自分たちの生活の中でエネルギーをどう使っているかをもっと意識し
ベストを尽くすということです
グループで取り組むことの長期的な利点は、社会的な団結をもたらす点にあると思います
ホリー・ティファン(参加者):普段何の関係もない人たちばかりなのに
こうやってつながることができました
本当に種々雑多な人たちの寄せ集めだけど、そこが素敵なんです
そんな私たちにも共通する関心事があり、それがこの集会が続いている理由でもあります
そのことがこの区域に強い仲間意識をもたらしました
これまでのところ、56のグループが結成され
468の世帯が参加し
人数は1100人に達しています
各世帯の平均で年間600ポンドを節約し
概算で1.2トンに及ぶCO2の排出量を削減することに成功しました
そうなると、みんなの創造力に火が付き、互いの庭をこれまでとは違った視点で見たり
互いの屋根の上に大いなる可能性を感じたりするようになりました
長い目でみると、おそらくこうした変化こそが長続きすると私は思います
社会、そして私たちすべてが求めているのは安全な世界に住むことです
このプロジェクトはその足がかりになるでしょう
第四段階は「形にする」です。この段階では、住んでいる地域の
ローカリゼーションについて戦略的に考え始めます
また、このステージはエネルギー会社や地域通貨、社会的企業を立ち上げていく段階です
つまり多くのアイデアの中からその地域に必要な新しいインフラを実際に構築するのです
社会的起業 ウエストヨークシャー TTマーズデン・スレイスウェイトの場合
この場所には昔から長く続く八百屋があります
私自身、ここで少なくとも50年は買い物しています
G・ミッチェル(グリーンヴァレー商店共同設立者):八百屋は戦時中からありました
しかし、経営が上手くいかなくなり、今にも店をたたんでしまいそうな状況でした
私たちは持ち主に店を譲り受けコミュニティビジネスとして再開したいと提案しました
地域が店を所有するという方法は倫理的な観点からだけでなく、地域の人たちに
店を利用してもらいたいという現実的な観点からもよく考えられた提案でした
店の所有権を与えることほど店を利用してもらうために効果的な方法はあるでしょうか
C・ウッド:地域の食料自給の試みは、以前は皆無でしたが、今はそれに集中しています
近所の人が「カリフラワーが6つ採れたんだけど、欲しい?」なんて言ってきますが
品質さえ良ければ、引き取るようにしています
このルバーブ、すばらしいじゃない!
これは地元で採れたルバーブです。美味しいんですよ、これ
ディグル地区で採れたこのルバーブをわざわざ買いにくるお客さんだっているんですよ
そこは「ルバーブ三角地帯」の一角なんです
私たちは地域の人たちがより多くの食べ物を自分たちで栽培するよう働きかけることで
地域全体のレジリエンスをもっと高めていきたいんです
自分たちの作物を売って得た13ポンド50ペンスは、この店で使うようにしています
でも、たいていはその金額以上のものを買っちゃうんですけどね
私たちがやったことはこの地域に多くの恩恵をもたらしました
雇用も創出したし、地域の中ですべての買い物をすませられる人たちも増えました
また、周辺の小売り業者の売上アップにも貢献しました
郊外のスーパーまで車を飛ばす代わりに地元で買い物をする人たちが増えたからです
この店だけではなく、他の店でも多くのお金を落とすようになったのは喜ばしいことです
ここまで上手くいくとは思わなかったので、ほんとに満足しています
わたしたちの行動が、これだけ大きな変化を生み出したんだ
一番最初からパンを扱っているんですが、これは特別なことなんです
というのも、2つの協同組合が理想的な形で組むことになったからです
パン屋の方は労働者の協同組合で、私たちの方は消費者の協同組合なんです
ダン・マックティエナン(ハンドメイドベーカリー共同設立者):労働者の協同組合では
一緒に働いている人たちとの絆が非常に強くなります。会社の同僚とは違います
この絆はまた次元が異なるつながりなんです
社会的企業 イギリス、ウェストヨークシャー ハンドメイドベーカリーの場合
3年ちょっと前にパン屋を始めたんですが
60ほどの世帯がパンの前払いをすることに合意してくれ
中には12ヶ月分も前払いをしてくれる世帯さえ現れました
長期で契約してくれればくれるほど、高い割引率を適用するしくみにしたところ
地域の人たちは大いに歓迎してくれ、これは上手くいくなと確信しました
間もなく15平方メートルの場所じゃ手狭であることがはっきりしてきて
思い切って自分たちが所有できる場所を探そうということになりました
しかし、資金がなかったので、どうやって捻出するかを考えなければなりませんでした
地域の人たちやお客さんから資金を集める「パン債」というアイデアは
私たちではなくアンドリュー=ウィットリーという人が発案したもので
利子は6.25%といいのですが、パンで払うことも可能です
週におよそ2.5ポンドの利子がつきますが、それはパン1斤の料金と同じくらいです
結果として、この地域やこのお店を大事にしたい人だけが集まるのです
これは私たちにとっては安いローンですし、お金を出す方にとってもお得な利率なんです
こんな小規模な投資で、これほど割のいい利回りは、どの銀行でも望めないでしょう
食べ物とのつながりを取り戻せば、他のあらゆるものとのつながりも取り戻せるでしょう
現時点では、光熱費を支払う度に、そのお金はすべて地域から出て行ってしまいます
それはその地域が「トランジションする力」を失うことを意味します
そういう意味で、最近、多くの地域で自分たちのエネルギー会社を立ち上げ
エネルギーと同時にお金も生み出し、地域を潤す動きが見られるのはすばらしいことです
コミュニティ所有の電力発電所 イギリス、イーストサセックス TTルイスの場合
D・キャンベル(OVESCoマネージャー):私たちはイギリスで最初の地域所有の
太陽光発電所を設立しました。そのことを私たちは誇りに思っています
98キロワットの発電能力で「太陽光発電所」と呼ぶのは、いささかおおげさですけどね
これは、現在の消費量で40世帯ほどの電力がまかなえるくらいの規模です
もちろん、この町の電力をソーラーパネルだけでまかなうのは無理な話ですが
電力を生み出す方法は他にもありますからね
太陽光発電には設置作業が簡単で、経費も安く、計画しやすいという利点があります
私たちはハーヴィーズ社が所有する醸造所の屋根を貸してくれないか頼んでみたのです
すると、法的な細かいことをこちらがやるのであればいいですよと言ってくれたんです
発足式を町中で行ったんですが、その宣伝は、すべての人の目や耳に触れるよう
地域のメディアを通じて、かなり大々的に行いました
お金はすぐに集まり始め、申込書とともに小切手もどんどん届き
わずか3週間ほどの短い期間に
パネル設置に必要な資金を上回るお金を集めることができました
H・I・デイヴィス(影のエネルギー相):これは紛れもなく地域の人たちによる
地域の人たちのための投資です。しかも、CO2の排出を抑え、環境の改善にもつながる
発電所を自分たちで所有し、みんなで取り組むのというとこも魅力的だったのでしょう
いずれにせよ、地域の人たちの力こそが、資金を集めたりプロジェクトを実施する上で
とても大きな力になることを示す興味深い先例だと言えるでしょう
H・エルダー(ハーヴィーズ社重役):これは、他に考えられるたくさんの地域活動の
優れた温床にもなるはずです。
こんな形で地域の人々が力を合わせることは、10年前には想像もできなかったでしょう
どんな種類でも構わないのですが、再生可能エネルギーを生み出す装置を設置すれば
単位あたりの発電量に対し、政府から対価が支払われます
固定価格買い取り制度(FIT)からの収入を積み立てることで
初期投資をしてくれた人たちに返済するための資金にあてようと考えています
ここまで来るのは非常に困難な道のりでした
私は作曲家であって、ビジネスマンでも、銀行家でもなんでもありません
ですから、短い時間にたくさんのことを勉強しなくてはなりませんでした
このようなことをやろうとした時にかかる時間や努力
献身を決して過小評価してはなりません。はっきり言って大変です
レジリエンスの高い地域こそ、私たちが目指すべき未来です
そのためには、地域のニーズに応えるためのしくみを地域毎に用意する必要があります
私たちが先駆的に取り組んでいるモデルは
いずれ世界中の他の地域にも何らかの形で適用してもらえるようなものです
あなたが住んでいる地域の経済を
大きなバケツのようなものだと考えてみてください
そのバケツの中に年金や給料、補助金などが入ってきます。しかし、現在では
スーパーでの買い物や電気料金、ネットでの買い物などがこのバケツに穴を開けています
つまり私たちが蓄えた財産やそれが生み出し得るものがどんどん漏れていっているのです
バケツのあちこちから漏れていっているのは、本来ならその地域でビジネスを興したり
若い人に職業訓練を提供したりするために使われるはずのお金です
これに対して、地域所有のエネルギー会社を支援したり
地域の食料自給を普及・促進したり
地域通貨を活用したりすることは
すべてバケツの穴を塞ぐのに、とても役立つ方法です
デジタル地域通貨 イギリス、ロンドン TTブリクストンの場合
ブリクストンはイギリスの中でもっとも文化的に多様な、とてもユニークな町です
ここには、この地球上に存在する、あらゆる国の出身者が住んでいます
2009年にはブリクストン・ポンドを始めました
現在、およそ200のお店や会社でこの地域通貨を使うことができます
電子マネーによる地域通貨はイギリスでも私たちが初めてです。素晴らしいことです
今や通貨もデジタルの時代へと進化しつつあるのです
これがあることで、ブリクストンの町や商店街に来て
お金を使ってくれる人たちがますます増えるんじゃないでしょうか
新経済基金とCOIN(オランダの組織)、トランジション・ネットワークの3者は
電子マネーを運用するためのソフトウェアを共同で開発してきました
ブリクストンはこのしくみを実際に使った初めての地域です
「時計のお医者さんです!」
やあ、こんにちは。お元気ですか?こっちはぼちぼちやってますよ
ちょっと私の時計を見てみてくれませんか
これを直してほしいんですか? じゃ、特別な修理道具を取ってきましょう
どれどれ、ちょっと見てみましょう。これはバッテリーを交換する必要がありますね
ほら、直りましたよ。2.5ポンドいただきます
携帯メールで払ってもいいですか?
もちろんですよ
携帯サイトのブリクストン・ポンド銀行で、時計屋さんを探し。メッセージが来てますね
来てましたか? じゃ、これで手続き終了ですね。すばらしい。じゃあ、また!
ありがとう、さようなら
私たちが開発した決済システムは、クレジットカードの読み取り装置がなくても
携帯電話さえあれば誰でも使えるシステムです
スマートフォンである必要はなくて、普通の基本的な携帯電話があればいいのです
携帯メールさえ送ることができれば、それで十分です
携帯メールで払えますか? はい、大丈夫ですよ
あなたのユーザー名は? サナ・フーズです
地域ビジネスは私たちが直面している経済的な問題を解決する上で非常に重要な存在です
なぜなら、小規模から中規模の企業がイギリス経済の生命線だからです
ブリクストン・ポンドをつくった一番の目的は、住人が地域にお金を落とすことで
地域のビジネスをテコ入れし、彼らの成長や繁栄を促すことなんです
ブリクストン・ポンドの役割は、ロンドンの北から南にお金を動かすことではなく
異なる経済のしくみをつくることなんです。ここで問われるべきなのは
「地域のニーズを地域内で供給できるのか?」「供給できる人がこの地域にいるのか?」
「それを今までとは違うやり方でできるのか?」といったことです
つまり、それは地域のすべての人たちが何らかの役割や仕事を担い
活気があって、多様で、力強い地域経済をつくるということなんです
「すばらしい! 確認のメールが届きました」「では、またお会いしましょう」
ほら簡単でしょ。電子化したブリクストン・ポンド、なんて素晴らしいんでしょう
トランジション活動は当初、より裕福な西洋諸国がCO2の排出量を減らし
逆に排出量が増えている発展途上国の増加分を吸収する手段として始まりました
しかしここ数年、発展途上国でもそれが見られるようになったことは興味深い現象です
2011年3月「ヒール・ザ・ソイル」はトランジションの考え方を採用することにしました
まずは、私たちが住むコッタカライという村で始めることにしました
その結果、この村はインドで最初のトランジション・タウンになりました
S・トリヴェディ(ヒール・ザ・ソイル共同設立者):私たちの最初の目標は自分たちの
村や家、そして家族に栄養のある食べ物を行き渡らせることです。これこそが私たちの
活動の核です。質のいい食べ物をすべての人が入手できるようにするということなんです
ある家に行って、「菜園を始めませんか?」と話しかけます
タネを提供して育て方を示してあげるのです
始めてみるとすぐに近所の人たちがやって来て「私たちもほしいんですが」と言います
このようにして私たちはトランジションの考え方を広めてきたのです
今までタミル・ナドゥの4つの村で100超の世帯に対して家庭菜園が導入されました
インドの田舎でも、このようにとてもポジティブな結果をもたらします
たとえば、これがアメリカに住む人のカーボン・フットプリントだとします
すると、インドに住む人のカーボン・フットプリントはこれくらいになります
さらに、インドの田舎に住む人のカーボン・フットプリントはこれくらいです
だから、私たちはこれだけの量を減らす必要はないんです。もうここにいるんですから
ただ、環境に優しく、再生可能な技術を採用しさえすればいいんです
田舎に住む人たちが、そこに住み続けられるようにし、過疎化に歯止めをかけるのです
これによって昔ながらの村という古いモデルから成熟したインドへの移行を促しながら
彼らが都市生活から置き去りにされていると感じないようなバランスを模索しているんだ
村の人たちの笑顔が見ることが私たちにとっての喜びです
彼らは私たちを暖かく歓迎してくれ、心を開いて、家にも招いてくれます
トランジション活動を始めた時から、こうなったらいいなと思っていたことがあります
トランジション活動が世界中のどんな地域でも、その場所特有の文化に十分溶け込み
その地域が不確実で困難な状況に直面した時、それに対応するための方法の1つとして
トランジション活動に取り組んでくれたら、どんなに素晴らしいだろうかということです
ここ数年、大きな困難に直面した地域で、それを乗り越えるためにトランジション活動が
自然な形で中心的な役割を果たすような地域が出てきたのはとても興味深いことです
大川裕司(トランジション・ネットワーク参加者):大震災が起こる前から
トランジション活動は自分の人生でできるもっとも素晴らしいことだと思っていました
そして、大震災が起きた今、それは私たちがやらなければならないことだということが
ますますはっきりしました
藤野電力 日本 神奈川県相模原市 TT藤野の場合
The Fujino Electric Power company consists of about 80 to 90 members who are on a mailing list.
It started when the nuclear disaster of 3.11 happened.
We got together to discuss the way we resource our energy and how safe and sustainable it is for the future.
We had a series of meetings and talked about what we wanted to do, but we weren't about to move into action.
So when 3.11 happened someone suggested we do something for the disaster relief.
... and that's when the company took off.
The Light Festival was a catalyst for the company to get clearer about its specific plans.
This year was the eighth year and we decided to generate all the electricity through renewable energy.
There were 5,000 visitors over three days
After the success of the festival, members decided to take it to Tohoku area where the disaster was
and we supplied electricity to the disaster area.
We would also like to make energy in our local area completely green.
So we have to find out what resources we have in Fujino and the first thing we thought of was this woodland.
And small hydro-electric generation.
There are some strong streams in the valleys.
We are now in the process of thinking how we can facilitate this dreaming the future together.
トランジション活動はニュージランドのクライストチャーチでも、活用されています
彼らのタイムバンク・プロジェクトは危機における地域のレジリエンスを示す好例です
私がかつて住んでいたリトルトンという町は、最近大きな地震に襲われました
そこに戻るのは胸が張り裂けるような思いでした。「息をして」
町の大部分は破壊されてしまいました
しかし、これほどの大きな喪失の最中に、人々の善良性や親切心といった
コミュニティの真髄が露わになったのです
ジュリー・リー:私はリトルトン・タイムバンクのコーディネーターでした
私は過去数年間、コミュニティを立ち上げたり、つなげたりしてきました
タイムバンクは人々がお金を必要としなくても生活できるような方法を提示すべく
補完的な通貨として紹介されました
同時に、これは近所の人たちが知り合ったり、互いの技術を交換したりすることで
コミュニティの強化をもたらす驚くべきツールでもあります
そこに2010年9月、あの恐ろしい地震が起きたのです
市民防災チームはクライストチャーチに派遣されました
というのも、ここリトルトンには彼らの助けが必要ないと見なされたからです
しかし、ここでは市民防災チームとは違った種類の助けが必要だったんです
消防隊は電話で「あなた方が地域と深く関わっていることは知っています」
「しかし、あなた方が実際に何ができるのでしょう? 助けてもらえますか?」と
そこで私たちはオフィスに本部を設置し、水や食糧を届けたり緊急の修理を引き受けたり
コミュニティのニーズに応えるべく何週間も忙しく、必死に働きました
ようやく物事が落ち着いたのは2月の大地震が発生する2週間前でした
今度の地震はその前の地震よりも揺れがひどく、すべての建物が倒壊しました
それはまったく違う地震で、それに比べたら9月の地震は準備運動のようなものでした
私たちはコミュニティとして力を結集し
タイムバンクのボランティア・データベースを使って、必要なものを見つけていきました
その時点でボランティアの数は400人を超え
活動がさらに活発になり「今ここではこういう物が必要です」といったメールが飛び交い
多くの人が押し寄せ情報を各自のネットワークやフェイスブックにも流していきました
ほんとに信じられないくらい、たくさんのボランティアが手伝ってくれたんです
タイムバンクのコミュテニィなしでは
こんなに早くこの地域が立ち直ることはできなかったでしょう
たとえ何もかも失ったとしても、お互いの存在さえあればなんとかなるものです
だって、コミュニティにとっての真の財産はそこに属する人たちに他ならないのですから
ごきげんな「但し書き」
トランジション活動は壮大なスケールで行われている社会的な実験です
したがって上手くいくかどうかは分かりません。でも、私たちは確信しています
もしも政府が何かしてくれるのを待っていたら、全然足りないし、間に合わない
もしも個人として行動したら、全然足らないでしょう
しかし、コミュニティとして行動すれば、
ギリギリ足りるかもしれないし、間に合うかもしれません
日本語版制作協力(あいうえお順)
飯田夏代・榎本英剛・角田総子・川合知子
後藤拓也・中園順子・中村香織・中山義規
縄井千乃・Paul Shepherd・吉田俊郎・Lipton