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トム・オーバーハイムSEM 〜 クラシック・アナログの復活 〜
audioMIDI.comのミッチェル氏による独占インタビュー 〜 前編 〜
こんにちは audioMIDI.comのミッチェルです
こちらはトム・オーバーハイム氏
SEMことシンセサイザー・エキスパンダー・モジュールを 設計したご本人です
この度 改良を経て SEMが見事に復刻されました
〜 Oberheimシンセサイザーの歴史 〜
オリジナルSEMを開発した当初の目的は
小型のシンセサイザーを 開発することでした
私が開発したデジタル・シーケンサーに 接続させようと思ったんです
1972~1973年頃にデザインしたのがDS-2です
当時 ポリフォニック・シンセサイザーは まだ開発されておらず
シンセサイザーを1人で 2台所有している人も珍しく
私の開発したデジタル・シーケンサーを もし所有していても
それにシンセサイザーを接続すると 演奏できるシンセサイザーがないという問題があったわけです
そこである考えが浮かんだんです
デジタル・シーケンサー用の 最も基本的な機能だけを持つモジュールを開発すれば
ミュージシャンはシンセサイザーを 演奏に使えるだろうってね
そして1973~74年頃に
新しいSEMと同様のオリジナルSEMを 開発しました
オリジナルSEMには このパッチ・パネルがなかったですけどね
SEMはアクセサリーとして 有力な製品だったと言えますね
MinimoogやARP 2600 ARP Odysseyのインターフェースとして
モノフォニック・サウンドを よりファットにできました
当初の意図通り デジタル・シーケンサーに接続して 使う方法も受け入れられたし
1973~74年の発売当初 SEMは売れました
その後1975年に別の製品として
キーボードとSEMモジュールを複数搭載した ポリフォニック・シンセサイザーを開発しました
こちらも売れましたね
〜 100%アナログのSEMサウンド 〜
SEMのサウンドと他社製品のサウンドとの 違いは何ですか?
当時売れていたMinimoogやARPなどの アナログ・シンセサイザーとの違いは?
SEMは着想が違います
コンパクトでロープライスなセカンドシンセサイザーを作ることを 第一の目的にしていました
手持ちのシンセサイザーのサウンドを 拡張する目的もありました
そのために私はある工夫をしました
4ポールのフィルターでなく 意図的に2ポールのフィルターを採用しました
MinimoogもARPも その他のアナログ・シンセサイザーも
4ポールのフィルターを採用していましたからね
だからSEMは 当時発売されていた シンセサイザーの拡張用として使われたんです
他社製品とは少し違ったサウンドにできたのも そのためですね
フィルターを単純にできたし
“別のフィルター・モードを作れた”と 私達は言っていました
どのシンセにもある標準的な ローパス・フィルターに加え
ハイパス・フィルターや バンドパス・フィルターも搭載でき
特定の周波数だけをカットする ノッチも搭載できたんです
オシレーターは 極めて標準的な回路を搭載しただけです
ノコギリ波とパルス波ですね
エンベロープはある意味 Minimoogそのものです
機能性もほとんど同じです
でもフィルターが違うし サウンドもモードも違うから
多くの人にとって 好都合だったんです
SEMを最後に製造したのは いつ頃だったんですか?
SEMは後々キーボードに搭載して 販売するようになって
Oberheim 4 Voiceや2 Voice SEMを8基搭載した8 Voiceも開発しました
あのポリフォニック・シンセサイザーのシリーズは
1979年頃まで製造していました
もう少し詳しく経過をお話しすると
ポリフォニック・シンセサイザーの 売れ行きは順調でした
1975年後半から1977年にかけては よく売れていました
でも ある“事件”をきっかけに 雲行きが怪しくなりました
1978年初めにProphet-5が発売されたんです
1978年の終わりには
Oberheimのポリフォニック・シンセサイザーは 全くと言っていいほど売れなくなりました
Prophet-5に みんなが欲しがっていた機能が 全て揃っていましたからね
プログラム可能なポリフォニック・シンセサイザーで サウンドも抜群でした
事情をご存じない方のために補足すると
Oberheim 8 Voiceは8音を同時に出せたものの SEM 1台が1音ずつ出力するため
キーボードへ物理的にSEMが8台 接続されていました
つまり本体がかなり巨大で 一方のProphet-5はコンパクトでした
そう その通りです
SEM自体がプログラム可能ではなかった上に
ボイス・モジュールが4基も8基も 搭載しているなんてね
巨大でプログラム不可能と言われ 売れなくなって当然ですね
一部をプログラムできる製品も 後に開発しましたが
それでも使いやすい大きさではなく まるでビーストみたいでした
多くの人はせいぜい1音しか プログラミングしないだろうと思っていましたが
全設定をメモリーに保存できたのも Prophet-5の強みだったようです
マシンのパッチやノブの設定を 保存して
ライブでそれを呼び出せるなんて 当時は本当に画期的でした
復刻のきっかけ 〜 インスピレーションを受けた出来事 〜
面白いことに
いくつかの出来事が重なりました
ちょっとしたハプニングが続いたんです
実はとある会合へ週に1度行っているんです
カリフォルニア州バークレーで 電子音楽とか コンピューター・ミュージック関係の人が集まっていて
そこに私の親友 ロジャー・リンも来ています
あれは2008年の夏の終わり頃だったと思います
ロジャーが集会で 私にこう声をかけてきたんです
“オリジナルSEMを復活させるべきだ”とね
私は“プログラムもできないのに意味ないよ”と 答えました
“あれは古い時代のマシンだ”とね
“それでも構わないからとにかく発売して欲しい”と ロジャーは言うんです
“もしシンセサイザーを作るならば全く新しいものを”と 私は考えていました
“最新技術を導入すべきだ”とね
ロジャーは私を励ましてくれましたが
彼はオリジナルが良いと譲らなかったんです
その後あまり真剣には考えずにいましたが
やがて大きなきっかけが訪れたんです
2008年の秋 Red Bull Music Academyに招かれて バルセロナに行った時
インタビューを受けるような形で レクチャーをしたんです
その時 沢山のDJやプロデューサー ミュージシャンに出会い
彼らと話しているうちに
SEMを復活させるのは面白いのかもしれないと 思い始めたんです
そうして様々な人に刺激を受けて 本腰を入れることにしたんです
2008年末に本格始動し 今こうして現実になったんです
この映像のサウンド・トラックは新しいSEMのみで制作され ノンエフェクトのマルチ・トラック・レコーディングです
このインタビューには後編がありますので お見逃しなく!
トム・オーバーハイム独占インタビュー:前編 © audioMIDI.com|日本語訳:エムアイセブンジャパン
〜 SEMの詳細は正規代理店のエムアイセブンジャパンにて 〜 www.mi7.co.jp