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僕の名前はハリー・ベーカー ハリー・ベーカーが僕の名前
君の名前がハリー・ベーカーなら 僕らの名前は 同じ
(笑)
ちょっとした導入部でね
やあ 僕はハリー
数学を研究し 詩を書く
だから 素数をテーマとした 愛の詩から始めよう
(笑)
題は『59』
『素敵な素数』とでも しようかと思ったけど
そうやって 皆 ひいちゃうからね
(笑)
では『59』を
59が目覚めたのは 縁起悪くも ベッドの反対側
なぜか髪の毛は 片側にペッタリ
ちょっと考えて 寝相のせいだと気付く
適当な服を探して 身に付ける
鏡をのぞいて ちょっと悦に入る
荒削りながら カジュアルさも兼ね備える自分
窓の外に目を見やると 目を奪われるのは
向かいの「60」
60の美しいこと
爪の先まで完ぺきで ピッタリの装い
ぶしつけさ など微塵もない
これ以上ないほど いつも ピッタリの時間に現れ
それも 超クールに やってのける
59は伝えたかった 彼女の好きな花を知っていると
毎分 毎秒 毎時間 彼女のことを思い続けるも
思いが届かないことは分かっていた 決して結ばれない運命
通りのすぐ向かいにいる 彼女とは
住む世界が違うのだ
59は 丸まったキレの良い60を こよなく愛すも
60は 59を“奇”数としか 思えないから(笑)
59が好きな映画は 『101(ワン・オー・ワン)』
60が好きなのは 続編の『102(ワン・オー・ツー)』
ロマンティックな59は 二人を薄幸な恋人だと疑わず
二人の力を合わせ “奇”“偶(遇)”で軌跡を起こせると信じた
一方 60は母からの 厳しい言いつけどおり
二人の溝は埋められない そう固持した
そのとき 59は ママに支配された娘を
愛そうとすることに 無力さを感じていたが
少し計算を働かせれば 癒されたはずだった
60から59を引けば 残りは1で唯一無二の存在だから
ウジウジして 2ヶ月が過ぎ
61日後に 59は「61」と出会った
彼は鍵を失くし 両親も外出中だった
ある放課後のこと 彼がその家をふと見ると
ドアの番号は 少しくずしたスタイルだと気が付いた
なぜ これまで 話しかけなかったのだろう
彼女に招き入れられた59は 口をあんぐり
61は60に似ていて ちょっと大きいだけ(笑)
彼女の方が目が可愛らしく 親しみある笑顔だった
そして彼と同様 荒削りでカジュアル
そして彼と同様 すべてが無秩序
そして彼と同様 母親は友だちが来ても気にしない
彼女は彼に似ていて 彼は彼女が好きだった
二人が似ていることを知れば 彼女も好きになると 彼は踏んだ
今回はいつもと違った この子は素敵だった
彼は勇気をふり絞って “数字”を尋ねた
「私は61よ」という彼女に 彼はにっこり「僕は59」と答えた
「今日 僕はすごく楽しかった
明日 良かったら 僕の家に来ないかい?」
「もちろん」と彼女
奇抜な人と話すのが 大好きな彼女は
非公式のファースト・デートの 誘いに乗った
彼の準備が整ったのは 約束の1分前
でも彼女は1分遅く到着したので 何の問題もなかった
その瞬間から ノンストップでおしゃべりが続いた
二人は『Xファクター』を好み 二つのファクター(因数)を持つ
これは欠点どころか 二人の存在意義を高めていた
夜が明けるころには 互いが運命の人だと感じていた
ある日 彼女は うぬぼれ屋の60について話していて
少し不愉快そうにする 59に気付いた
彼は顔を赤らめ かつての恋心を打ち明けた
「ああなって良かったんだ 僕たちが出会えたからね」
61は賢明だった 嫉妬にとらわれることもなく
彼の目を見て とても優しく諭した
「君は59で私は61 二人合わせると60の2倍になるの」
(笑)
このとき 59は 目に涙をため
こんな唯一無二の娘に 出会えたことを喜んだ
彼は“素数”たることの 意味を話した
彼の心を分かつのは “一(いち)”と彼自身だけ
そして彼女こそ 心を預けたい唯“一”の存在だと
彼女は 同じ気持ちだと答えた 映画は半分本当だとやっと分かった
あれは真の愛ではなく ただの見本にすぎない
真の愛においては 二人こそが“素”晴らしい例なのだ
ありがとう
(拍手)
これが僕が初めて書いた詩で
素数がテーマの詩の夜会のため―(笑)
いや 素数がテーマの 詩のコンテストのため書いたものです
僕は 素数がテーマの詩の コンテストで優勝したから
まさに “素”晴らしいわけだ(笑)
こうして僕は 「ポエトリー・スラム」なるものを知った
念のために言うと 「ポエトリー・スラム」は
アメリカで30年前に 作られたもので
人をだまして 詩のイベントに参加させる方法です
それも 最後に「スラム」とか 格好良い言葉を付けるだけ
(笑)
参加者が与えられた3分間で 詩を披露すると
ランダムに選ばれた聴衆が スコアカードを掲げ
最後に集計されて 点数が出される
つまりは―
パフォーマーと聴衆の 垣根をなくし
聴く者とのつながりを 強めるもので
さらには あなたも勝てるということ
ポエトリー・スラムで優勝すれば スラム・チャンピオンを名乗って
レスラーのふりもできる
負けたらこう言えばいい 「何?詩は主観的な芸術形式だ
数で評価するとは何事か」
(笑)
でも僕は気に入って 何度もスラムに参加し
イギリスの スラム・チャンピオンになり
パリのポエトリー・ワールド・カップに 招待されました
信じられないことでした
世界中から人々が集まり 自国の言語で話し
英語のできないフランス人5名が 評価をするんです
(笑)
ともかく 僕は勝った 最高だったよ
以来 僕は 世界中を旅できたんだから
ということで これから紹介する詩が
まさに世界で 最高の詩なんです
(笑)
ですから―
(拍手)
英語のできない フランス人5名によればね
『ペーパー・ピープル』です
僕は人が好き
僕は紙の人も好き
紫色の紙の人 飛び出す紫色の紙人も
ちゃんとした 飛び出す紫色の紙人
「飛び出す紫色の紙人なんか 立たせられないだろう?」
君の叫びが聞こえるよ それはね...
僕は 飛び出す紫色の紙人の ペーパークリップで
飛び出す紫色の紙人を 立たせるわけさ
でも 念のために 接着剤も用意しておくかな
粘着剤「ブル・タック」を一箱 紙がすべったときのためにね
飛び出す都市を つくることができるけど
紙人の政治問題に 巻き込まれたくなくてね
紙政治家の政策なんて 紙のように薄っぺら
公約を破ろうが ちゃんと謝罪もしない
小さな紙の僕と 小さな紙の君がいて
僕たちは紙のペーパーテレビを見る ペイ・パー・ビューでね
(笑)
ケシの紙ラッパーは 紙パックをラップし
紙人の乗り物が A4地点で紙詰まりを起こすのを眺める
(笑) ペーパー
紙のプリンセス・ケイト でも 皆が目を離せないのは 紙のピッパ
誰もが紙裂きジャックに 怯えて生きる
紙のプロパガンダは 偏見を広め
写真写りのよいテロリストたちの 写真を紙に印刷する
小さな紙の僕 小さな紙の君
飛び出す人々の間では 問題も飛び出す
仰々しい紙の議会は 聖域となり
紙削減に対する プロテストを無視
平和的な紙のプロテストは 粉々に破れ去る
先制攻撃の警察による 紙吹雪弾で
もちろん紙のお金もあり 紙(私)欲もある
意地汚い紙の銀行員は 必要以上を懐におさめ
ポプリを買って 紙(資)産を粉飾
他の者は貧困に生き 軽くあしらわれる
“正しき”貧しい経済は 多くが“正しく”貧しいが
彼らの要望は無視され お金は大戦へとつぎ込まれる
折り紙軍隊は 紙飛行機計画を広げて見せるものの
一方 我々は自らの紙鎖に 囚われたまま
もっと恥ずべきことに 事態はまるで変わらない
ただ 権力者が変わり 責任転嫁先が変わっただけ
権力者は名をあげて非難するが それが人の名であったことを忘れてしまう
結局 名前というより 人の問題だからだ
僕は人が好き
切迫したときでも
人だけが 元気づけてくれる
紙の上では 僕たちの動きは見えにくい
でも パンドラの箱の底にだって まだ希望が残っている
だから 僕は希望を持っている 人を信じているから
人に好かれている 僕の祖父母
僕が生まれてから 一日もかかさず
僕のために 毎朝祈りを捧げてくれた
7892日続けて 僕のことを心配してくれて
本当にありがたい
おばのように 囚人と劇を演じる人たちもいる
真の許しをできる人たち
迫害を受けた パレスチナ人のような人たち
私利私欲のために 道を外れた人たちは
何も得ることはできない
人は強くなれるんだ
権力を牛耳る人が 被害者ぶるからといって
そんな制度に 屈することなんてない
紙人の世界だって同じ
小さな紙の僕と 小さな紙の君がいて
飛び出す人たちの間では 人の問題が飛び出す
でも たとえ世界が崩れ落ちようと 僕たちは大丈夫
だって 僕たちは人だもの
ありがとう
(笑)
ありがとうございます もう1つ行けそうです
僕にとって 詩は自由に アイデアを表現する至極の手段
詩を始めたとき
僕が刺激を受けたのは 素晴らしいストーリーのある人たち
順風満帆の18歳の僕は フツウすぎると思った
でも 僕の経験や夢 信じることを話せる―
そんな世界をつくれた
だから 今日こうして 皆さんの前に立てて光栄です
ここにいる皆さんに感謝します
皆さんが ここにいなければ
昨日のリハーサルと 同じ状況ですから
(笑)
こちらは もっと面白いです
『サイシャイン・キッド(太陽の光の子)』
それではお楽しみください―
年老いた日の光は 息子のような太陽が自慢だった
小さな彼が走る姿に 一日が一層輝いた
彼が何かしたわけでも 問題が解決したわけでもない
ただ彼が日当たりの良い場所に ずっといただけ
いつも こんな風にはいかない
明るさを隠そうと するときもある
どんな星だって 困難の周期にぶち当たる
暗闇の彼らを呼び覚ますには より明るい光が必要だった
彼が星雲に 生まれたとき
誰も彼が普通だなんて 思わなかった
彼はフレアを放っていたから
ミダス王が触れると 黄金になるが
彼が近づくと 全てが少しブロンズ色になった
そう この子は 他の人よりも愛された
ヨセフと彼のドリームコート 兄弟のように
目立つのも 善し悪し
彼が輝きすぎれば 妬みが敵を生んだ
シャドー・ピープルみたいに
シャドー・ピープルは サンシャイン・キッドを嫌った
シャドー・ピープルの闇の行いに 光を当てたから
シャドー・ピープルが隠した場所を 照らしたとき
シャドー・ピープルは キッドを始末しようと企んだ
まずは 彼の黒点を からかった
空から彼の夢を打ち砕いた 銃弾のごとく
彼はクールではないと 思い知らせるために
お蔭で彼は 学校の人気者に溶け込めなかった
宙ぶらりんな彼の頭を 地に着けてやると言った
彼は何者でもなかったが それこそ 彼の存在価値
彼は大学にも 行くことはなかった
彼が唯一取った“一番”は “第一”度熱傷
近寄りすぎた者たちは
彼は明るすぎると言った
だから 誰も 彼の目を見ようとはしない
彼の判断は曇った
太陽が泣き始めると
蒸発した涙で 空は曇った
サンシャイン・キッドは明るく 温かい性格で
心は燦々と燃えていた
影の人たちの汚い言葉で 傷ついていた
彼の心には穴が開き ぽっかりと傷跡が残った
彼が頑なになるにつれ 輝きを失っていった
名前が呼ばれるたび 彼の炎は勢いを失った
彼は 少し光を落とせば 彼らに好かれるかと考えた
でも 彼らは忙しなく 光はひどいと話して回った
彼はもはや ついていけなかった
彼は そんな言葉を呑み込み 影に隠れた
テキサス州のように ひとつ星の州になった
まるで みぞおちを 殴られたようだった
そこに現れたのが リトル・ミス・サンシャイン
大好きな歌を歌っていた ―私たちは強くなれる
人に合わせなくていい そのままでいい
だって 私たちの心は お星さまだから―
リトル・ミス・サンシャインは 超イケてた
一目見ただけで
すべてを忘れてしまう
彼はとにかく 彼女が忘れられなかった
一目見たときから 彼女の姿が網膜に焼き付いた
とびきり素晴らしい彼女は 彼を受け入れた
この子が好きだったのは いつも彼のそばにいると分かっていたから
事態は思ったほど暗くない 彼は夢を見た
影なんてどこにもない 彼女がいると 彼は輝いた
彼の目はランランとし もはや隠せなかった
彼女の笑顔は眩しく 憎悪の言葉も消え去った
二人は互いにニックネームを付けた 「クール・スター」「陽気・サン」
次第に 彼に影を落としていたことも 消え去って行った
10の24乗ある宇宙の星に1つという 特別な存在の彼女は 輝かしく
冷血の爬虫類でさえ 朱に染めた
チリ人からブラジル人まで 何十億人に愛され
サンシャイン・キッドに “しなやかな心”を教えてくれた
彼女は言った 「世界中の暗闇を集めても
たった一本のろうそくに灯る明かりを 消すことなんてできない
なのに なんで君の光が 消されてしまうの?
君自身が消しているんだよ 空は果てしない
光を灯し続け 批評家を黙らせるのよ」
心の窓である目にかかったカーテンを 彼女は再び開け
卑しき者たちにも 太陽の光を当てた
逆境の宇宙では 星々は共に身を寄せ合う
昼が夜になっても 記憶は永遠に消えない
天気予報がどうであれ 晴れ晴れとした顔で
雲に隠れても この子はずっと輝く
そう サンシャイン・キッドは明るく 温かい性格で
心は燦々と燃えていた
火に勢いを借りて 銀河の先にいる彼に
信じることを教えてくれた 彼女に支えられて
ありがとうございました
(拍手)