A Day in The Life of a Hotel Inspector

NOWNESS 提供 イェロン・フーベン 監督作品 イタリア人画家のアルベルティは 絵画は世界へつながる窓だと言った 世界のどこにいようが どこに行こうが その窓の向こうには必ず 世界が広がっている 永遠の旅人にとっての 錨のようなものであり 日々の喧騒から逃れたい人のための 避難場所であり 時が止まった場所であり 今この場所から逃れることのできる 外界につながる隙間でもある 私は本当の窓の方がほしい 「おはようございます　７時半なので モーニングコールを差し上げました」 私はルートヴィヒ 毎朝違うホテルで朝を迎える それが私の仕事だ これまで 27 年間 １年に 300 日そうしてきた 大きいホテルもあれば 小さいものもある エキゾティックな場所もあれば そうでもないところもある いつも偽名で宿泊する 私の名前を知る人は 休暇に出っぱなしだと思うだろうが 私はホテルに住んでいるのだ ミニバー ルームサービス 常に補充される清潔なタオル 小さな石鹸 そして世界へつながる窓 これが我が家なのだ ホーム・スイート・ホーム 私は 7 時 20 分に モーニングコールを頼んだんだ 7 時 20 分と 7 時半は違うだろ - 7 時半にかかってきたんだ - ねぇ あなた... - フランス人は何を考えてるんだ？ - あなた？ 全く１日中何をしてるんだか - 私はただ... - 寝てるんじゃないかしら ル・グラン・ピエールは学習しない スタッフは気が利かんし カードを書き間違う メニューにも工夫がない この席 いいですか？ シチューはうまいが マナーがなってない すみません 「問題はありませんか」と ３回もやってくるんだ - 何がしたいのかわからん - 問題がないか知りたいんでしょ - 何？ - なんでもない あるといえば雰囲気が台無しだし ないといえば嘘になる　罠なんだよ - メインコースときたら... - いらっしゃいませ ほんの小さなひな鶏と チコリーのタルトタタンだ おいしそうじゃない タタン姉妹が墓の中で ご立腹だろうよ レビューに対する文句が聞こえるようだ 考え方がまったく ― - 「トルガル」って名前あるかな？ - 漫画の登場人物よ 今夜は高級ホテルになりたがっている 中級ホテルに泊まる 色褪せた栄光にたくさんの鏡 金の装飾だらけだから 気を引き締めんとな - イネス？ もしもし？ - あなたの気分を聞いたのよ ルートヴィヒ 悪くないよ まだ部屋を見ていないんだ - あ そう - イネス？ イネス？ ウサギのパルモンティエールの 輪切りズッキーニ添えを 食べるところだ メニューにはズッキーニの花とあったが これはただの輪切りだ それからワイン このひと皿に合わせたのは ブルゴーニュ・ワイン ワイン自体は悪くないが 料理との相性は... スパイシーね 辛味がある - ワインはいかがですか？ - 素晴らしい　いい出来です 自然で酸化防止剤が入っていない 手作りの味わいね ブルゴーニュ・ワインを出されたんですが この料理にはもっと酸味があるものがいい じゃあ これをお試しになったら？ 「シャトー・カスティーニョ」 ラングドック=ルシヨンのものですが？ その地方は好かんのです フランス屈指の醸造家２人が 作ったワインなんです フィリップ・カンビと ― ミシェル・タルデューかな？ どちらのレビューをしているんですか？ あなたには死んでもらわなきゃ その手間は無用です 厨房のスタッフに殺されかけてますから このホテルをどう思います？ 少し時代遅れね メニューは特に素晴らしくはないけど きちんとしたものを出している 私の嫌いな よかれと思っての軽薄さはない スタッフが地元出身でなくても 強いフランス訛りを使っています それはいいことだと？ 見せかけのロマンスには弱いの 目がないんです 私は質の良い睡眠に目がないんです 私はステラと言います 本当のお名前を教えてくださる？ ルートヴィヒです 今度はあなたに死んでもらわないと 1979年7月13日 結婚式の翌日のことです 妻と２人で車でパリに向かった 計画もせずに気まぐれにね 素晴らしい旅だった 到着するや 頭にあるのは１つだけ すぐにホテルを探しました 空室なんかどこにもない 7月13日 しかもパリの中心ときた フランス革命記念日の前日です とんだ間抜けでしょう ２時間探しまわって ユースホステルにたどり着いた 興奮しましたね 部屋があったんですよ - でも どうなったと思います？ - 二段ベッドだった？ - 男女別々の共同寝室だったんです - まあ！ - 冗談でしょう - 本当ですよ - 別々に寝たの？ - 一睡もできなかった 私の上に太った男が寝ていて 深く大きな ― ありがとう 置いておいてくれ - 深く大きないびきをしていてね - あら まあ バリー・ホワイトより １オクターブは低い音を出していた - ルートヴィヒ - はい 先生 ホテルでの最大の戦利品は？ 言いなさいよ 言っちゃえ 知りたいんだもの 恥ずかしい話だが 一度だけ 枕を拝借した - 恐いもの知らずね - おう！ - とても快適な枕だったんでね - かわいい まだホテルは探してるんじゃないかな 君は？ 全てのヒルトン・ホテルの頂にある 大きな H のネオンを知ってるでしょう？ あの H を？ そんなまさか そんなの無理だ 冗談だろう？ どうやって？ 教えてくれよ 失礼します もう閉めますので ちょっと まだ残ってたぞ - 空でしたよ - 残ってた！ - 今は空です - 残ってたのに - 流しちゃったのよ - 君のグラスも下げられたぞ くそフランス人め このホテルは最悪だ！ - これは何だ？ - アートでしょ 巨匠殿 あなたがお描きになったのかな？ いいね 才能がおありのようだ - 触らないでください！ - おっと すまんね 「触らないで」 触らないでください と言ってるでしょう！ すみません すみません - 本当にすみません - あら 困ったことになるわよ 弁償しますよ 弁償しますって！ どうせ安物でしょう？ こんなことはなかった これまでこんなことはなかったね これは随分やらかしてしまった - ほら来た - 随分なサービスね ユーモアのセンスもない これからどこに行けばいいのかしら？ - ナポレオンに行ったことは？ - 嫌だわ あんなひどい場所 近くには... 「ロム・トランキル」があるけど - ちょっと田舎臭いな - 「ル・ジャルダン」は？ もっとマシな場所があるだろうに ５区にいるんだから「パンテオン」は？ そう遠くないところに すごくいい小さなホテルがあるんだ すみません ここ空いてますか？ ええ どうぞ