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長嶋一茂はなぜいつも半笑いなのか? テレビ界が渇望する「自由さ」の裏にあるもの | 週刊女性PRIME [シュージョプライム] | YOUのココロ刺激する
古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。
勝手に称えまくって表彰していきます。 第51回は樋口卓治が担当します。
長嶋一茂 様。 今回、私が勝手に表彰するのは長嶋一茂さんである。
毎日のようにテレビに一茂が出ている。 テレビ界ではこれをブレイクという。
今どきのブレイクは視聴者ではなく、業界が渇望しているようにも思えるが、一茂の活躍は、坂上忍さん、梅沢富美男さん、ヒロミさんと同じように、一過性ではない定着する人気だ。
一茂はなぜかいつも半笑いだ。
日に焼けた半笑いのダンディは、何か言いたそうで、何か言った後、周りから突っ込まれることを想像して思わず笑みが溢れるのを我慢しているように見える。
あの落書き騒動の事を話した時、。
「バカ息子って書かれたけど、うちは娘しかいないんだけどなー」。
誰もが「バカ息子はお前のことじゃ!」とジャストミートで突っ込めるボケをかます。
北朝鮮のミサイル発射時の角度が45度と聞くと、。
「ホームランを打つ角度と一緒だね」。
狙って言ったわけはなく、そう思ったのだから言わずにはいられないのだ。
出演者はコンプライアンスという檻(おり)の中で、個性を発揮しなければならない今、一茂は自由だ。
テレビのやりとりに飽きると、檻を抜け出し、ふらりとハワイに出かけたりもする。
「働き方改革」の先を行く、「休み方改革」を誰よりも早く実践している。。
これだけ自由奔放でいられるのは、ボンボンだからとか、国民的スターの二世だからわがままなんでしょと思考を停止して片付けてしまいがちだが、そうではない気がする。
一茂は常に勝手に期待され、比べられて生きてきた。
何をしてもマスコミは、一茂にピントを合わせてきた。
少年野球を始めた、立教野球部に入った、プロ野球に入った〜その都度、期待され、比べられ、がっかりされてきた。
国民的スターの息子という十字架と物差しを背負って生きてきたのだ。
そりゃ、カメラを向けられると習性としてボケたくもなる。
防衛策としてボケる術を身につけたのだ。
禍福は糾(あざな)える縄の如しというが、一茂は究極のメリットとデメリットという縄をより合わせ生きてきた。
その中で培った哲学が「人生を楽しもう」なのだ。
かつて長嶋茂雄が引退の時、自分の人生をミスターに重ね合わせ泣いたおじさんたちがいた。
今その二世たちはおじさんになり、ヒステリーな時代を生きている。
ミスタージャイアンツの華麗なプレーと、一茂の自由な発言。
全く逆なように思えるが、どちらもワクワクするのだ。
テレビはこのワクワクする空気が大事だ。 一茂の半笑いは、何を意味しているのか?。
ボケたくて仕方がない顔なのか。
「自分が消耗されてるってことに気づいているよ!」という顔なのか、それとも私たちに、「楽しいことしないと人生終わっちゃうよ!」と言っている顔なのか。
<プロフィール>。 樋口卓治(ひぐち・たくじ)。 古舘プロジェクト所属。
『中居正広の金曜のスマイルたちへ』『ぴったんこカン・カン』『Qさま!!』『池上彰のニュースそうだったのか!!』『日本人のおなまえっ!』などのバラエティー番組を手がける。
また小説『ボクの妻と結婚してください。
』を上梓し、2016年に織田裕二主演で映画化された。
著書に『もう一度、お父さんと呼んでくれ。 』『続・ボクの妻と結婚してください。
最新刊は『ファミリーラブストーリー』(講談社文庫)。