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翻訳: Mizuhiro Suzuki 校正: Jarred Tucker
あるところに ビリーという子がいました
学校で先生はビリーに聞きました
「お父さんのお仕事はなあに?」
ビリーはこう答えました 「お父さんはピアノを弾いているよ
麻薬サロンで」
先生はびっくりして 家に電話をかけました
「今日 息子さんからお聞きして驚いたのですが
お父さんの職業はピアニストなのですか?
麻薬サロンの」
父親は言いました 「すみません もちろん全くのウソです」
でも8歳の男の子に
父親が政治家だなんて 説明できないですよね」(笑)
私も政治家ですが この様な場でも
実のところ 世界のどこで誰に会っても
私が職業を明かすと
変な目を向けられます まるで私が
蛇・猿・イグアナの合わさった 気味の悪い何かであるかのように
こういう経験を通して強く感じるのは
何かが間違っているということです
民主主義が誕生して400年になります
国会で働く議員たちは 私から見ると
皆 すばらしく 学歴も優秀です
国民の教養 エネルギー 学識も 高まりつつあります それなのに
この国は 深い深い失望に陥っています
新しく議員になる人の中には
医者、実業家、教授
著名な経済学者、歴史家、作家
大佐から特務曹長にいたる あらゆる軍の関係者などがいます
しかし 私を含め 国会議員は皆
国会を出て この古い建物の横を通るとき
ふと 自分の無力さを感じ
まるで自分が消えてしまうような そんな気持ちになるのです
そしてこれはイギリスだけの問題ではありません
発展途上国の至るところでも問題になっており
中所得国でも同様です ジャマイカでは…
例えばジャマイカの国会議員ですが
彼らはたいていこんな人達です
ローズ奨学生として アメリカの一流大学を卒業した優等生たち
しかしジャマイカの首都の中心には
とても悲惨な光景が広がっています
世界中の中所得国で見られる光景ですが
ぼろぼろの 半分廃墟と化した 建物の並ぶ
ひどい光景なのです
過去30年間こうなのです
1980年にエリート家族出身の党首が
ハーバード出身の経済学博士である党首と
政権交代した頃には
麻薬をめぐる争いにより この街で
800人以上が殺されました
しかし10年前には 民主主義への期待が
非常に高まっているように思えました ブッシュ前米大統領は
2003年の一般教書演説で
民主主義は世界にはびこる悪を滅ぼす
唯一の力であると国民に呼びかけました
民主的な政府は 人民を尊重し
隣国を尊重し 自由は平和をもたらすと言うのです
当時の著名な学者たちも 民主化により
様々な便益がもたらされると賛同しました
民主化は繁栄や安全をもたらし
宗派の争いをなくし
テロリストを守る政府はなくなると考えたのです
でも現実は違いました
これまで イラクやアフガニスタンで
民主主義の政府が生まれましたが
まだ これらの便益をもたらしてはいません
アフガニスタンでは 選挙を行うことに
成功しています それも大統領選挙 議員選挙を含む
3回もの選挙です では 選挙は何をもたらしましたか?
社会は繁栄し 法は整備され
安全は確保されたでしょうか? 答えは No です
国家の法制度は機能しておらず 汚職は横行し
市民社会と呼べるようなものは ほとんど存在せず
メディアは独立しつつありますが
腐敗したと見なされる政府に対する
国民の不満はいまだに大きく
安全は全く確保されていません とても危険です
パキスタンや サブサハラ・アフリカの多くの国でも
民主主義と選挙が
腐敗した政府や不安定で 危険な国と共存しています
腐敗した政府や不安定で 危険な国と共存しています
私は市民とよく話をしますが
以前イラクでこんな出来事がありました
現地の人に こう聞かれました
「私達の目の前で 暴徒が
政府の建物をめちゃくちゃに荒らしているが
これが新しい民主主義なのか?」と
これまで多くの中所得国や 途上国を訪問しましたが
どこへいっても同じような問題があります
先進国でも同じだと言えるかもしれませんね
では どうすればいいのでしょうか
民主主義を諦めることが正解なのでしょうか
もちろん違います
もし イラクやアフガニスタンで
今回のような作戦を再び展開し
突然 民主主義以外のシステムを
推進するとしたら
そんなの馬鹿げています
民主主義以外は 私達の価値観に反しており
人々の望むものではなく
また 私達の利害にも反しています
例えば イラクを巡って
民主主義の導入を遅らせるべき ではないかと議論されました
ボスニアでは 選挙を実施するのが早すぎたために
宗派間の闘争や過激派政党が
活発になりました この教訓を生かして
2003年にイラクの選挙を
2年後に遅らせることが決まりました
選挙教育や民主化に 力を注いでいこうとしました
その結果なにが起こったでしょうか? 私のオフィスの外では
群衆が選挙の実施を要求しているのです
これはリビアで撮られた写真ですが
イラクでも同じ光景に遭遇しました
私が外に出て「暫定州政府の
何が不満なのか?
私達が選んだ役人に問題があるのか?
スンニ派とシアイ派のリーダーを始め
7つの 大きな部族のリーダーがいて
キリスト教徒もいて サービア教徒もいて
女性の代表もいて すべての政党が議会に存在している
彼らの何が問題なのか?」と聞きました
すると彼らは 「選ばれた人が問題なのではない
選んだのが あなた達であることが 問題なんだ」と答えました
アフガニスタンでは 人里離れた集落でも
誰が自分達を統治するのか決めるのに
誰もが参加したいと思っています
どんなに辺境の土地に行っても 選挙権はいらないと
言う人はいませんでした
世論調査などで
こんなデータが得られます
84%の英国民が イギリスの政治は崩壊していると感じており
2003年にイラクで世論調査を行い
どのような政治形態がよいかを聞いたところ
返ってきた答えは
アメリカが7%
フランスが5%
イギリスは3%
40%もの人が ドバイの政治形態がよいと答えました
ドバイは君主制を採用する裕福な国で 民主主義ではありません
でも このような数字は気にせずに 民主主義の価値を認め
民主主義を守るべきです でもそのためには
民主主義を手段として 扱うことをやめるべきでしょう
民主主義の重要性を説くのに
その利益を理由にするのはやめましょう
人権や女性の権利の重要性も同様に
人権や女性の権利の重要性も同様に
その利益を理由に考えるべきではありません
それはなぜか
なぜならこれらの主張は とても危険だからです 例えば
「有益な情報を得ることが出来ないので 拷問は間違っている」という主張や
「労働力が2倍に増えて 経済成長が促されるので
女性の権利を認めることは重要だ」 という主張があったとしましょう
すると 北朝鮮の役人は
こう言うかもしれません
「私達は拷問によって多くの有益な情報を
得ることができているがね」
サウジアラビアの役人はこう主張するでしょう
「おかげさまで私達の経済は順調に成長しているよ
あなたの国よりよっぽどね
だから女性の権利を認める必要は ないのではないかな」
民主主義はある目的のための 手段ではありません
なにをもたらすかは関係ないのです
合理的で効率的な法律を
つくるためのものでもありません
自国や周辺諸国の平和を 保障するためのものでもありません
民主主義はそれ自体が重要なのです
公平や自由といった概念を反映し
個人の尊厳を認め
公平な選挙権により
一人一人に政府を形成する 権利を保証する
だから民主主義は重要なのです
もし私達が民主主義にもう一度
勢いを付けたいと考えるのなら
市民や政府の プロジェクトに参加していく必要があります
民主主義とは 単なる構造を指すのではありません
それに対する姿勢であり 行動でもあるのです
そのひとつは「誠実さ」です
ここでお話しした後 私は『Any Questions』という
ラジオ番組に出演します お聞きになればお気付きになるでしょう
こういったラジオ番組で 政治家は
どんな質問にも「わかりません」とは 絶対に答えません
何を聞かれてもです
子供の税金の控除はどうなるのか
南極のペンギンの将来はどうなるのか
中国の大都市の成長は 環境問題に どう影響するか
そんな質問を政治家にすると
彼らは必ず何か答えてくれます
こんなふうに何でも 知っているふりをするのは
もうやめましょう
時には政治家も
有権者が求めているもの
有権者と約束したものを
実現することができない
あるいは実現すべきでないと 言えるようになるべきです
次に私達がすべきことは 社会の気風を
理解することです
今 社会は かつてないほど 教養が高く
活力にあふれ 健全で
何事にも関心や情熱を持って
社会に貢献したいという市民で構成されています それこそが社会の気風なのです
かつては 今 私たちがいるような
天井に 王位に就いた王などの
素晴らしい絵が飾られた 大きな広間が
政府の中心でしたが
以前 イギリス国王の首が飛ばされた
この歴史的な場所や
このような権威の象徴であるような場所から
次第に 市庁舎の方 庶民の持つ力により近く
位置するようになりました この力をもっと利用する必要があるのです
この方法は国によって異なるでしょう
イギリスの場合 フランスを見習い
市長が直接選ばれる
フランスのコミューン制度を
導入すべきかもしれません
アフガニスタンの場合は 大統領選挙や議員選挙のような
大きな選挙に集中するよりも
アフガニスタンに根付いたシステム
つまり地区レベルで直接選挙を行い
州の長を選ぶという方法を とるべきだったのかもしれません
これらが上手く機能するために必要なことは
真摯な言葉でしょうか 地域レベルでの民主主義でしょうか
カギを握っているのは政治家ではありません
カギを握っているのは市民です
政治家が正直であるためには 市民の協力が不可欠です
そしてメディアは 政治家と市民とを
つなげる役割を果たし 政治家を正直たらしめる必要があります
地域レベルでの民主主義が活発ということは
そこに住む 全ての市民が 活発に政治参加しているということです
つまり もし民主主義が再建され
もう一度活発な民主主義が達成されるためには
市民が政治家を信頼すること
そして同時に
政治家が市民を信頼することが必要なのです
ありがとうございました (拍手)