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[ハミルトンの薬局方]
[ハイチのゾンビ薬 パート4]
材料分析のため 入手した毒薬は 全て持ち帰りー
関連する文献も調べた
いろんな材料が入ってたよ
ヘビや 干しガエルからー
いろんな種類の植物
興味深い魚までね
別の司祭と連絡がつくまでー
自分でも 材料を探してみることに
植物や両生類を 特定した後ー
私は ある魚類学者を訪ねた
その学者は ちょうど 巨大な魚のアゴに頭を入れー
歯を数えていたんだ
彼は書棚の上の段に 手を伸ばしー
1冊の本を取って 私に差し出した
『007 ロシアより 愛をこめて』の原作だ
物語の中でボンドはー
罠にハメられて1度死ぬが 次作で見事に生き返る
つまりオレが その現象の鍵を 掴んだという サインだったんだ
フグは 驚異の進化を遂げた魚だ
体の中には 強力な神経毒が含まれている
テトロドトキシンと呼ばれ 摂取すると 体がマヒしー
仮死状態へと陥る
魚の特定によってー
不可解だった ゾンビとの距離が縮まりー
現実的な存在になったんだ
毒薬に使われていた魚は 体に興味深い分子を保有する
腸や肝臓ー
そして 卵巣や皮ふの表面にね
テトロドトキシンという 複雑な分子構造の神経毒だ
麻酔薬としては コカインより16万倍も強力
青酸カリの 約1000倍の毒を持ちー
わずかな量の摂取でも 人は死に至る
そして 興味深いのは その効き方だ
まさに この現象の通りだ
神経内の回路をブロックしー
神経機能をマヒさせる
代謝率も落ちるがー
意識は死ぬまで ハッキリしたまま
- 〈シルヴェーヌ こっちだ!〉
〈分かった〉
- 〈見ろ!〉
捕ったな
パンパンに膨らんでる
魚は 頭から腹にかけてー
ヤリで一突きされていた
- 〈死んでる?〉 - 〈まだだ〉
また膨らんだ
驚いたことにー
傷穴があるのに 魚は丸々と膨らんだ
不思議だ
見た目から オレはこの魚がー
トゲまで猛毒な ハリセンボン科の ネズミフグだと考えた
毒薬の調合に 使われていたのはー
熱帯に生息する魚で フグ目に属するものだ
日本では フグは珍味として 愛好家が多い
何世代もの間ー
訓練された調理師が この毒魚をさばいてきた
毒のある器官の全てを 慎重に取り除きー
食べられる身を 提供してきたんだ
だが 私の考えではー
調理師は毒を除くのではなく 減らすのさ
それを食べた人たちが 軽い陶酔感やー
興奮を味わえる程度にね
ドラッグと紙一重だとも言える
ゾンビの製造は 二段階なんだよね?
まずテトロドトキシン 次にスコポラミンを投与する
最初にテトロドトキシン
これを使って 仮死状態を形成する
その後 よみがえった段階でー
通称〝ゾンビのキュウリ〟が 与えられる
主な材料は チョウセンアサガオ
これにスコポラミンや アトロピンが含まれるんだ
〈ゾンビのキュウリを見せよう〉
デイビスは チョウセンアサガオ内の 化学物質がー
ゾンビを従順にさせると考える
〈あそこに〉
これは ノニの身では?
実際のところ 見た目は ノニの実にそっくりだ
非精神活性植物で アメリカ中で手に入る
まだ実が若い?
この植物は ドラッグとして 投与すると 精神障害を起こしー
頭が狂ってしまう
その威力はとても強くてー
症状は 幻覚からノドの渇き 恐怖心の増長まで 様々だ
黒魔術で よく使われるドラッグさ
方向や場所の感覚も 混乱させる
体験した人は一様に ひどい恐怖を感じたと言うよ
ネズミフグから トゲと肝臓が取り除かれー
残りの身が 食用として調理される
フグの毒についての文献は 非常に多い
日本の民俗風習では フグにあたった場合ー
数日 床に寝かせ 死んだ事を確認する
仮死状態のまま 棺に入れられた人がー
生き返ったという話も
皿の上には ネズミフグの料理
猛毒があろうかという魚を 食べるというのにー
周囲の関心は薄かった
歯ごたえがありー
味は チキンと ほとんど区別がつかない
フグが毒を作る仕組みは 当時 知られていなかった
毒性は 非常に多様性に富みー
無毒のフグも 実は半分程度いた
つまり 最低でも 50パーセントの割合でー
ゾンビの薬が 効かなかったことになる
これは重要なポイントだ
全てのクスリ 特に幻覚剤の影響はー
場合によって 善と悪のどちらにも傾く
文化的な背景が クスリの善悪を左右するのさ
【パート5へ続く】
字幕翻訳 日本映像翻訳アカデミー 字幕監修 大石レナ