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…その時ね、お父さん一生懸命あなたのことカメラで撮ろうとして一番前に出ちゃって
後で家でお前に怒られたんだよな
父さん?母さん?
あなたに嫌われたんじゃないかって、お父さん悩んじゃって
女の子って難しいよなぁ
は?何言ってんの?
俺がもうちょっと、気の利いた親父だったらよかったんだけどな
ごめんね、みっちゃん、あなたのこと見てるつもりだったのに
瑞江、アタシあんたのこと、本気で心配してたんだよ。なのにいきなりアドレス変えたりするんだもん
うちらあんまし頭よくないからさ、声のかけ方とかわかんなくてさ
お前、俺は一応お前のこと友達だって思ってたのにさ。なんで何も話してくれねえんだよ
瑞江、なんでこっち向いてくれなかったの
ごめんね、何もできなかったね、あたしら
なにこれ?どういうこと?
上から聞こえてくる声だ
みんな、あなたのことを思って来てるの
ちょっと、そんなに謝んないでよ。ねぇ、アタシが悪かったっていうか、アタシがバカだっただけでさ
ねえ、ごめん!
アタシ、ちゃんと見えてなかった…。気づいてなかっただけなんだ…。
幸子!陽子!勉!お父さん!おかあさん!
聞こえんぞ!地下の声は地上には届かない。それが、死ぬってことだ。本当の闇の世界に来るってことだ
あなたはこんなに思われてたのに…どうして、何も見えなかったの?
お前は光のある世界にいたのに、光が作る影ばかり見てた、違うか?
影ばかり見てた…?
人間は愚かだ。地下に来て闇に包まれて、初めて上が明るかったことに気づく
光は全てのものを照らすから、時には嫌なものが見えることもあるわ
でも、だからって光から目をそむけたら何も見えなくなる。影ばかりに目を向ければ、全てが闇に思える
アタシ、あの時から何も見なくなってた。何も聞かなくなってた
アタシは…自分で闇を生んでたんだ
本当は、夜の後には朝が来たし……薄暗くたって、必ずどっかから光がさしてた。ここみたいに…真っ暗じゃなかった
そうね。ここは暗い。真っ暗ね
もっと…生きてたかった…光を見たかった
大丈夫よ。永遠にここにいるわけじゃない。順番が来れば光があるところにいける。闇と光の真実に気づけば、上に上がれるわ
でも、じいちゃんは62年もここにいるんでしょ?あたし、そんなに耐えられないよ
この人の場合は……ちょっと特別だから
特別?
すいませ~ん。ここ柳原家さんでいいですよね?
誰?
あら、噂をすれば
来たか
ああどうも、初めまして、お孫さんですか
そうなの
誰ですか?
どうも神サマです
は?
神様でーす
どの辺が?
失礼だぞ
柳原さんお待たせしました。やっと空きが出まして。二人分です
長かったわね、あなた
…あぁ
二人分?
そうなんですよ。忠義さんがツキさんと二人同時じゃないと嫌だって言うもんですから、ずっと二人分の空きがでるのを待ってたんです
二人…同時?
この人は、ここに来てからすぐにでも上に上がれたのよ。でも、わたしを待つんだって頑固に居座って
ばあちゃんを…待ってたの?
そう。50年ね。そして二人で12年待って …ようやく二人で行けるわね
ああ
そっか……二人とも行っちゃうんだ
すいませんね、あなたの分はもうちょいかかりそうです
しょうが…ないよね。うん
みっちゃん…
あ、じゃまた!…またってあれか。元気で…ねって変か死んでるし
とにかく…ありがとう
ツキ…
えぇ。わかりました
何何?
すみません、申し訳ないが、この小娘を先に連れて行ってはもらえませんか
え?なんで?
順番を守らなければならないのはわかっています。でも…この子は来たばかりで
地上でも一人だと苦しんでいたのに、ここで一人残していくわけには行かんのです
それ困りますねぇ。せっかく二人分の枠持ってきたのに
孫を思うバカな年寄りのわがままだと思って
年寄りって…あんた達僕から見たらヒヨっ子だから!
お願いします
ちょっと、何言ってんの?
早く行け。出発するぞ
生まれ変わった時は、アタシがあなたの孫になるかもしれないわね
え?なんでよ?じいちゃん、62年もこのために…
また、その日は来る。待つことには慣れた
しょうがないなぁ、わかりました。じゃ、行きますよ
嘘!
気をつけて
いきなさい
でも!
みっちゃん
達者で……な?
じいちゃん、疑問系の使い方間違ってる…
お行きなさい
…ありがとう。今度は、下を向かない人生を歩くから
出発しますよ
あ、はい
あ、そうだ。あなた上に上がる前に厳しい修行しますからね
なにそれ?聞いてないけど?
あなた、地上での素行悪すぎです
ちょっと!ありえない。なにそれ。マジ勘弁
マジカンベン、て何?
さぁ…まじめで寛大な弁天様の事じゃないか?
あら、じゃ私たちも拝みましょう
おう
マジカンベンマジカンベン
あの子大丈夫かしら
手のかかる孫だな
よかったんですか…?
ああ……また子供を待つ楽しみもある
縁起でもない
それに…ここにも光はある
え?
ツキの光がな…
あなた
お前が、私の光だ