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翻訳: Yasushi Aoki 校正: Takahiro Shimpo
今日は 僕の写真をご覧に入れます
でも写真と言っていいのかわかりません
この写真はもちろん
カメラでは撮れません
僕が写真に興味を持つようになったのは
初めてのカメラを手にした
15歳のときで それは以前からの
絵への情熱と混じり合っていましたが
違いもありました
カメラで重要なのは
構想の段階になります
カメラで写真を撮る場合
シャッターを切った瞬間にプロセスは終わります
だから写真というのは
しかるべき時にしかるべき場所にいるということが大部分で
誰にでもできることに思えたのです
僕は何かもっと違ったものを作りたいと思いました
シャッターを切った瞬間に
プロセスが始まるような何かです
たとえばこんな写真です
往来の激しい通りで
工事が行われていますが 予想外の捻りが加えられています
それでいて
リアルさも依然保たれています
あるいはこのような写真
暗いのも色鮮やかなのもありますが
共通するのは 一定のリアルさを
保っているということです
僕がリアルと言っているのは
フォトリアリズム的ということです
もちろんこのようなものを
実際に撮すことはできませんけど
何か本当にカメラで撮ったような感じを
出したいと いつも思っています
仕掛けに気づくのに 一瞬
考えなければならないような写真です
だから瞬間を切り取るというよりは
アイデアを切り取るというのに近いでしょう
では これをリアルに
見せているものは何でしょう?
ディテールでしょうか
色でしょうか
それとも光でしょうか?
何がイリュージョンを生み出しているのでしょう?
見え方がイリュージョンということもあります
つまるところ 僕たちが世界をどう解釈し
二次元平面上でどう表現できるかということにかかっているのです
何がリアルかというよりは
何がリアルに見えるか というのがポイントなんです
基本は
ごく単純です
現実の別々な断片を組み合わせて
新たな現実を作り出す—
パズルのようなものです
簡単な例をお見せしましょう
ここに想像上の物体が3つあります
三次元世界の物として捉えることができます
しかしある種の組み合わせ方をすると
依然 三次元的に—
ありえそうに見えながら
存在しえないものができます
脳が騙されるのです
脳はそれが意味をなさないという事実を
受け入れようとしないからです
写真を組み合わせるときにも
この現象を利用します
異なる現実の組み合わせ方が大事なんです
写真をリアルに見せるのは
僕たちが意識さえしないもの
身の回りにある日常的なものです
写真を組み合わせるときには
これをよく考える必要があります
そうしないと どこか変に見えてしまうからです
リアルな結果が得られるためのシンプルなルールが
3つあると思います
これらの画像には特別なところは何もありません
しかし組み合わせると このようなものができます
第一のルールは 組み合わせる写真は
同じ視点でなければならないということ
第二に 組み合わせる写真は
光の条件が同じである必要があります
この2枚の写真は どちらの条件も充たしています
同じ高さから撮られ 光の条件も同じです
第三のルールは 別な画像が
どこから始まるのか分からないよう
継ぎ目をなくすということです
画像がどう組み合わされたのか
分からなくするのです
境界部分の 色とコントラストと
明るさを合わせ
被写界深度や彩度を落としたり
ノイズを入れるなど
写真に効果を加え
画像の間の境界を消して
実際には何百ものレイヤがあっても
1枚の写真であるかのように
見せかけるのです
これは別な例です
(笑)
ただの風景写真の下の方の部分を
加工したように見えますが
実際には別な場所で撮った
たくさんの写真から構成されています
場所を探し出すよりも 作り出してしまう方が
簡単だと思います
その方が頭の中のアイデアを
そのまま実現できますから
でもよく構想する必要があります
このアイデアは冬に思いついたんですが
パズルのピースとなる場所を
見つけるために
何ヶ月も検討しました
たとえば
魚は釣り旅行で捕まえたものです
岸辺は別な場所で撮りました
水中の部分は石切場です
そして島の上の家を赤くして
スウェーデンっぽくしました
リアルな結果を得るためには
構想が重要ということです
僕はいつもアイデアのスケッチから始めます
それから別の写真を組み合わせます
それぞれのパーツは とてもしっかり構想されています
写真の撮影がうまくいけば
結果はとても素晴らしく
すごくリアルなものになります
必要な道具はすべて揃っており
できることを制限するのは
自分自身の想像力だけです
ありがとうございました
(拍手)