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東京都は今年度の名誉都民に3人を選定しました。そのうちの1人、
東京手描友禅の染色家、安達雅一さんの工房を訪ねました。
「突然、東京都から電話をもらって意外に思ったが、
だんだんとうれしさがあふれてきました」と話す、
名誉都民に選ばれた安達雅一さん――。
安達さんが作成したのは『うつし糊絵』という作風で、
安達さんは「友禅は一度塗りだが、うつし糊絵は何回も色を塗り重ねることができる」
と話します。 安達さんは1935年の元日、友禅染めの名家に生まれました。
「3歳くらいのときに母親に『何か描きたい』ということで
『紙をください』と(ねだっていた)。
1日中絵を描いていると静かだった」と笑います。
その後、父・直次さんの下、本格的に伝統工芸に取り組みますが、
その意識は伝統の継承にはとどまっていませんでした。
「伝統というものは革新であるというのが私の基本的な考え方」と話す安達さんは、
伝統的な友禅染めの傍らで取り組み、先代とともに完成させたのが
『うつし糊絵』の手法でした。安達さんは「失敗の連続で
非常に厳しい道のりだった。また、時代がそういうものを
まだ要求してくれなかった」と振り返ります。しかし、
安達さんは「新しい技術をさらに進化させていく、それが
伝統の基本だと思う。これからも1歳ずつ年を減らして頑張りたい」と話しています。
今年度、名誉都民に選ばれたのは安達さんのほか、
「川崎病」を発見し治療法を確立した医師の川崎富作さんと
歌舞伎俳優の中村芝翫さんの2人です。
顕彰式は10月1日に都庁で行われます。
伝統的な友禅染めに比べ立体的、絵画的な仕上がりです。
伝統工芸の枠を超え芸術の域に達した新境地は
次第に展覧会でも高い評価を得るようになりました。