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星空の説法
「月々に、月見る月は多けれど、月見る月は、この月の月」
と、謳われているように九月は空の美しい月である。満天にきらめく星を見上げていると、何とも言えない雄大な神秘的な世界に吸い込まれる気がする。
考えてみると、太陽を中心に、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星など、寸分の狂いもなく運行している。
天文学では、これらを惑星といい、これらの惑星群を太陽系宇宙と呼んでいる。
太陽と地球との距離は一億五千万キロ。一番遠い冥王星は、その約三十九・五倍の五十九億キロもあるから、太陽系宇宙の直径は百十八億キロ程の広さがある訳である。
地球を一列に並べるとすれば、実に、九十二万個並ぶ長さであり、一秒間に三十万キロ突走る光に乗ったとしても十一時間もかかる距離である。
このように太陽系宇宙は広大なものであるが、夜空にキラキラ輝いている星の一つ一つが、どれもこれも皆、この太陽系と同じ世界を、そこに形作っているのだ。
晴れた夜空に東北の空から西南の空にかけて、大空を一周する、俗に「天の川」と呼ばれているものを、世界一のアメリカの、パロマ天文台の、二百インチの望遠鏡で拡大してみると、太陽と同じ無数の恒星の集団であることが判るという。
この集団が銀河系宇宙といわれ、我々の太陽系は、実はこの銀河系宇宙の僅か一点を占めているにすぎない。
しかも、このような銀河系宇宙が、更に広い広い大宇宙に浮かんでいるような格好をしているので島宇宙とも呼ばれている。
この島宇宙(銀河系)の中に、恒星が幾つ位あるのかというと、太陽と同じ位の恒星が、何と二千億個も集まっているという。しかも、このような島宇宙が一千億個以上も存在することが確かめられているのが今日の宇宙観である。
かかる大宇宙からみれば、我々の住む地球などは、まさにその星クズの一つにすぎない。
その星クズの中に、うごめく人間は一体、何と言ったらよいのであろうか。
「やがて死ぬ、気配も見えず、セミの声」
と芭蕉はよんでいるが、かまびすしく鳴き叫んでいるかのセミも、地上に出て僅か一週間で死ぬのである。
人生五十年、いや、寿命がのびて、男七十才、女は七十五才と喜んでいると言っても、悠々たる大宇宙の生命と比べたら、我々の一生は、もっともっとはかない、ホンの一瞬にすぎない。
この一瞬の人生を如何に生くべきか、如何に死ぬべきかは、これこそ一生参学の大事でなければならぬ。
「人身受け難し、今すでに受く。仏法聞き難し、今すでに聞く。この身今生に向かって度せずんば、更に何れの生に向かってか、この身を度せん」
まことに、永劫の迷いを断ち切り、絶対の幸福を獲得する為に生まれて来たことがひしひしと身証される。
されば、美しい星空は、悠遠の彼方より生きた説法をしている。 まさに、正学の大音は、十方に響流したもうているのである。