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かつて労働者の当然のことだった 1週間40時間労働と健康保険
そして年金という「基準」は脆くも崩れ去り
セーフティネットがないのに 簡単に解雇される「使い捨て労働者」は
新しい「基準」となりつつある
このプロジェクトはその使い捨て労働者を「人」として描き
国際競争に生き残りを賭ける 世界第3位の経済大国で
使い捨ての労働力になることは
何を意味をするのかを問う
かつて世界は日本経済に 憧憬と嫉妬の眼差しを送っていた
だが今は何を誤ったのかと首を傾げている
使い捨て労働者の描写は中流の崩壊と
特に若者において顕著な
世界に広がる就職難を
生々しく映し出す
このプロジェクトは ホームレスの日雇い労働者の
協力のもとで始まった
彼らは過去20年間の経済成長の支え役だった
高速道路や橋、港
学校、高層ビルは
彼らによって建設された
今彼らはその橋の下で生活し
かつては「高給」の仕事が見つけられた
職安の床そうじという
政府によって時おり「賄われる」仕事をしている
私は大阪の釜ヶ崎を
訪問した
かつて栄えていた労働者の街は 25,000人の年老いた労働者の
集い場と化した
内1,300人はホームレスである
アル中や路上死、自殺、結核、 孤独は決して珍しいものではない
家族の絆が無い彼らは、サラリーマン社会の 負け犬として孤独に生き、孤独に死ぬ
かつての栄えた労働者の街 釜ヶ崎は
若者と大卒者を含めた
失業率5.7%という
記録的失業率の高騰の影に 消え去ろうとしている
年老いた元土木作業員の希望はあまりにも乏しい
私は日雇い労働がもたらす心理的影響について
調べることにした
過労は危険であるという今日の
認識にも拘らず
過労死する労働者は後を絶たない
「ホワイトカラー」のサラリーマンは
失業への恐れと労働力不足から
労働時間を伸ばすばかりだ
過剰な労働はうつ病等の
精神疾患をもたらし
時として自殺を招く
釜ヶ崎で出会った労働者は
これが負け犬の人生だとよく言った
しかしサラリーマンであっても
企業の使い捨て社員であるということが
わかってきたのである
従ってこのシリーズの
第3部と第4部では
若い派遣労働者と
正規雇用と派遣の間で40%にも上る
拡大著しい賃金格差に
焦点を当てる
格差は1985年の16%から着実に拡大しており
2007年に34%に達した
これに伴い経済的不安を 抱える社会層は厚みを増し
派遣労働者はいわゆるネットカフェ難民という
「第二級市民」となった
彼らは仕事を転々としながら 24時間営業のネットカフェで寝泊まりする
無職の期間は家賃を賄えないからだ
私は彼らの人生と苦しみを記録する
最後に
最底辺の仕事を請け負う女性について
若年女性の雇用機会は最底辺の仕事か
派遣に限られることが多い
酷評する者に至っては女性こそが 日本の非生産性の問題であると断じる
世界最高水準の教育を受ける女性が 経済には影響を与えないような
退屈な仕事を強いられている
女性に自分たちの可能性を試す機会はない
私は今仕事の無い大卒者の間で数を増やしている
呑み屋のホステス等の
女性限定労働に従事する
女性の失望と希望を
描き出したい
雇用の維持と拡大は
使い捨て雇用の増加に伴って
より困難になってきている
使い捨て労働者の描写は
働く権利の重要性と
競争の激しい世界経済で雇用を確保する社会的責任を 私たちに見せつけてくれるだろう
翻訳: 芝池 拓臣