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翻訳: Yuko Yoshida 校正: Mari Arimitsu
今晩 お話しするのは
カミングアウトについてです
いわゆる「カミングアウト」
ゲイだと打ち明けること ではありません
誰しも 心に 壁を作っています
その後ろに 隠れているのは
誰かに初めて 愛の告白をすることや
妊娠したこと
ガンであることを 伝えることかもしれません
他にも 私たちが 人生で経験する―
さまざまな重い話が 隠れています
心の壁の向こうにあるのは 重い話です
抱える問題は 本当に さまざまでしょう
でも 心に 押し込めていたものを
扉を開けて解き放つ経験は 誰しも同じです
怖いですし 嫌ですが しないといけないことです
数年前
私は サウス・サイド・ ウォールナット・カフェという
地元の食堂で 働いていました
その食堂で 私は さまざまな段階を経て
過激派レズビアンに なりました
脇の処理をせず
アーニー・ディフランコの 言葉を崇めました
だぶだぶの カーゴパンツで
頭を剃って すぐのときには
こんな質問を よくされました
たいていは 小さな子どもからで
「あのー あなたは男の子? それとも女の子?」
その場は ぎこちない沈黙に包まれ
私は いつもより少しだけ固く 歯をかみしめ
コーヒーポットを ここぞとばかりに 強く握りしめました
父親は あたふたと 新聞をめくり
母親は その子を ダメよという目で見ます
それでも 私は何も言いませんでした
ただ 心の中で 激しい感情が渦巻いていました
そのうち 3~10歳の子どもがいる―
テーブルへは 戦闘態勢で 臨むようになりました
(笑)
最悪の気分です
ですから 次こそは 何か言うぞと心に決めたのです
あの重い会話を すると決めたのです
何週間も経たないうちに そのときが やってきました
「あなたは男の子? それとも女の子?」
あの沈黙が訪れます でも 心の準備はできていました
私は まさに 女性学入門の講義を
始めんばかりの 勢いでした(笑)
ベティ・フリーダンの言葉も
グロリア・スタイネムの言葉も
さらには『ヴァギナ・モノローグス』からの 引用も用意していました
深呼吸をして 声の方を見ると
私を見上げていたのは ピンクのドレスを着た4歳の少女でした
フェミニストの決闘相手に ふさわしくない
ただの子どもが 知りたがっているだけ
「あなたは男の子? それとも女の子?」
もう一度 深呼吸をして
そばに しゃがんで 言いました
「ねぇ 困るわよね 分かるわ
髪も短くて 男の子みたいだし
服装も男の子っぽいわね でも 女の子よ
あなたも ピンクの服を 着たい時もあれば
ゆったりしたパジャマを 着たい時だってあるでしょ
私はね パジャマ好きな女の子なのよ」
その子は 私の目を まっすぐ見て
ひるむ様子もなく 言ったのです
「私はお魚さんがついた 紫のパジャマが好きよ
パンケーキを もらえますか?」
(笑)
それだけでした 「そう 女の子なんだ
あのパンケーキを お願いね」って
あれほど軽く 重い話をしたのは
初めてでした
なぜでしょう? パンケーキの子と私は
お互いに 本心でぶつかり合ったからです
皆さんも そうだと思いますが
私も いろんな思いを 壁の奥に押し込めてきました
たいてい 私の壁は 虹色をしていましたが
一歩中に入れば 暗闇で
壁の色も分かりません
暗闇で 息をひそめて生きることが どんなものか分かるでしょう
結局 壁の後ろにある世界は 同じなのです―あなたのも
あなたのも 一緒です
もちろん 私の方が あなたよりも
つらい理由なんて いくらでも あげられます
でも つらさは 相対的なものではありません
つらいものは つらいんです
自己破産をしたことを 告白する方が
浮気を告白するより つらいなんて言えますか?
あの人が 打ち明けることの方が
5歳の子どもに離婚を話すより つらいと言えるでしょうか?
どちらが つらいかではなく ただ つらいんです
つらさを他人と比べるのは やめないといけません
他人と比較して 安心したり落胆したりするのでなく
ただ皆 つらいんだと 気持ちを寄せるのです
長い人生 誰しも 心に壁を作ることがあります
その中にいれば 安全と感じるでしょう
少なくとも 扉の向こうよりマシでしょう
でも 皆さんに お伝えしたいのは
その壁が 何でできていようとも
そこは 人が 生きる場所ではありません
ありがとう(拍手)
20年前の自分を 思い浮かべてみてください
当時 私はポニーテールで ストラップレスドレスを着て
ハイヒールを 身に付けていました
当時は 過激派 レズビアンではなく
カフェにいた4歳児に 立ち向かう用意もありませんでした
私は恐怖で凍りつき 壁に囲まれた真っ暗闇の中
隅っこで 丸まっていました
ゲイという手りゅう弾を 手に握りしめ
筋肉をちょっと 動かすのでさえ
今までにないくらい 恐ろしく感じていました
私の家族 友人 見ず知らずの他人―
私は こうした人たちの
期待に応えるべく 生きてきました
でも 今は自ら 世界をひっくり返しています
わざとです
長い間 私たちが 従ってきた筋書きを
すべて破り捨てて いるのです
自分の手にある手りゅう弾を 捨てなければ 死んでしまいますから
手りゅう弾を手放した中で 最高だったのが
姉の結婚式での 手りゅう弾トスです
(笑)
私がゲイだと知っている方が たくさん集まるのは
初めてだったので 花嫁の付き添いをしながら
黒いドレスで ヒールを履いたまま
各テーブルを まわったのです
ついに 私のことを 長年知っている―
両親の友人たちのテーブルに 行きつきました
世間話のあと ある女性が大声で言いました
「私は ネイサン・レインが好きよ」と
すると皆が 親ゲイ派を アピールし出しました
「ゲイタウンのカストロ通りは 行った?」
「実はサンフランシスコに 友だちがいるのよ」
「行ったことがないけど 素晴らしいと聞いたわ」
「美容師のアントニオは 知ってるかしら?
腕は確かだし 彼女の話なんてしないのよ」
「好きなテレビ番組は?
私たちは『ふたりは友達? ウィル&グレイス』ね
誰が好きかって? ジャックよ
ジャックが お気に入りなの」
ある女性は 言葉に詰まって 困っていましたが
それでも なんとか応援したいと思い
私の味方だと 伝えようとして
ようやく 出てきた言葉が―
「ほら 私の夫も 時々 ピンクのシャツを着るわよ」
(笑)
そのとき 私には 2つの選択肢がありました
手りゅう弾を放り出す誰もが 必ず通る道です
一つは そのまま 彼女やゲイ仲間がいるテーブルに戻り
今の出来事を バカにすることです
世間知らずで ゲイについて差別・偏見なく
話すこともできないのか と非難することもできます
もう一つの選択肢は 彼らに共感して
きっとこれまで体験した中でも 大変なことだったに違いない
この話題を取り上げ 会話をすることで
彼らも心の壁を破ったんだ と理解することです
もちろん 他人の至らなさを 指摘することは簡単ですが
彼らの立場に立ち 努力したという事実を
認めることは 実際 本当に難しいことです
結局 他人に求められるのは 努力だけでしょう
他人と 本気で 向き合うなら
自分をさらけ出さないと いけません
重い会話は まだ苦手です
私が付き合った人に 聞けば分かります
でも マシになってはいます 私が大事にしているのは
「パンケーキ少女の3原則」です
これからお話しすることは ゲイの立場でのことですが
どんな心の壁を 破るのでも
結局は 同じなんです
第一の原則は ありのままであること
鎧をかなぐり捨て 素の自分になります
カフェの あの子は 丸腰だったのに
私だけが 戦闘態勢だったんです
誰かに本気で 向き合ってほしいなら
あなたも 血の通った人間だと 知ってもらうべきです
第二の原則は 単刀直入に言うこと 絆創膏は一気に剥ぎ取るのです
ゲイなのであれば はっきり そう言えばいいんです
親に「ゲイかもしれない」と言えば
何かの間違いかもと 希望を持たせます
そんな変な期待は させてはいけません
(笑)
第三の原則は 最も重要なものです―
(笑)
申し訳なく 思わないことです
あなたは 真実を話しているだけ
謝る必要なんか ちっともありません
もしかしたら これで 傷つく人もいるかもしれません
もちろん 自分がしたことは 謝るべきです
でも 自分が悪いと 思う必要はありません
そうですね がっかりする人もいますね
でも それは彼らの問題で あなたの問題ではありません
あなたに対する 勝手な期待ですから
彼らの筋書きで あなたのものではありません
大事な筋書きは ただ一つです
あなたが書きたい その筋書きだけです
もしも 自分が 心の真っ暗闇にいて
手りゅう弾を握りしめているのに 気づいたら
皆が経験することだと 思ってください
孤独に感じるかもしれないけれど 決して一人ではありません
つらいでしょうが 皆 あなたを必要としています
どんな壁であれ 突き破らないといけません
皆 心の壁の 後ろに隠れて
鍵穴から 外をのぞいています
誰かが 扉を破るのを待っています だから 勇気を出して踏み出し
世界に見せつけてください 私たちには もっと大きな価値があり
そして そんな壁の中では 誰も 真の意味で
生きることは できないのだと
ありがとうございます 素敵な夜を (拍手)