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翻訳: Emi Kamiya 校正: Yuko Yoshida
人生の どの段階においても
私たちは その後の人生に 大いに影響する
決断をするわけですが
いざ「その後」になってみると
過去の自分の決断に 喜ぶとは限りません
だから若者は10代の頃に
大枚はたいて彫ったタトゥーを
また大枚はたいて除去します
中高年が離婚に急ぐ相手は
若い頃 結婚に急いだ相手です
高齢者が懸命に減らそうとしているのは
中年の頃 懸命に増やそうとしたものです
ずっと同じパターンです
心理学者の私が夢中になっている 疑問は これです
なぜ私たちは 未来の自分が
後悔することになるような 決断をするのか
これからご説明しますが
その理由の一つは
時間の持つ力について 私たちが根本的に
思い違いをしているせいだと考えています
人生が進むにつれ変化が遅くなるのは
皆さん ご存じですね
子どもは分単位で 変化しているように見えますが
親の変化は年単位にしか 見えないというわけです
人生における この不思議な分岐点― 変化が突然
猛スピードから ノロノロになるのは
いつなのでしょう
10代のうち? 中年になってから?
老年期? その答えは 何と
ほとんどの人にとって「今」です
どんな時も「今」なのです
皆さんに納得していただきたいのは
私たちが皆 常に錯覚を抱えているということです
自分の過去 自分の歴史が終わり
ずっとなるはずだった―
本当の自分に 最近なったばかり
残りの人生は このままの自分で行く
という錯覚です
この主張を裏付けるデータがあります
人の価値観の 経年変化を調べた研究です
喜び 成功 誠実さ という
3つの価値です
皆さん3つとも お持ちですね
成長に伴い 年齢を重ねるにつれ
3つのバランスが変わるというのも ご存じでしょう
何故 そうなるのでしょうか
何千もの人に尋ねてみました
半分の人には 今後10年で
価値観が どれくらい変わるか 予想してもらいました
もう半分の人には
過去10年で価値観が どれくらい変わったか聞きました
これによって 実に興味深い分析ができました
たとえば18歳の人たちの予想と
28歳の人たちの振り返りとを
比較するといった具合で
あらゆる年代を網羅した分析ができました
結果はこうです
まず当たっていたのは
年齢と共に 変化は緩やかになるということです
しかし間違っていたのは
そのペースが思ったほど遅くないのです
データによると18~68歳の どの年齢でも
今後10年間で経験する変化を
大幅に少なく見積もりました
これを「歴史の終わり幻想」と 呼んでいます
この結果の大きさを示すために
2つをつなげてみましょう
18歳が予測する変化は
50歳の報告した変化と
同じだということが わかります
価値観だけではありません 他のどんなことでもそうです
たとえば性格
性格特性を5つの因子に分けて
現代の心理学者が論じているのは ご存じでしょう
情緒不安定性 開放性
調和性 外向性 勤勉性です
今一度 尋ねました 今後10年間で
どのくらい変化すると思うか
そして過去10年間で どのくらい変化したか
結果は こちらです
同じ図が何度も出てきますよ
やはり 年齢と共に
変化は緩やかになりますが
今後10年間で 自分の性格が どれくらい変わるか
どの年齢でも
少なく見積もっています
価値観や性格のように
一過性のものだけではありません
好き嫌い つまり基本的な好みについて
聞いたっていいですよ
たとえば 一番の親友や
お気に入りの休暇の過ごし方
お気に入りの趣味
お気に入りの音楽を挙げてもらいます
答えられますよね
半分の人たちへの質問は
「今後10年で変わると思いますか?」
残りの半分への質問は
「過去10年で変わりましたか?」
結果は もう二度も ご覧になった通りですが
これも同じです
予想では 現在の友達が
今後10年間も友達で
現在の楽しい休暇の過ごし方は
10年経っても同じですが
10年後の人たちは 口を揃えて言うのです
「いやぁ 変わっちゃったよ」
何か問題でしょうか
何も影響を生じない 単なる予測のミスでしょうか
いいえ 大問題です 理由をいくつか説明します
これが重要な局面での 私たちの意思決定を惑わせます
今 好きなミュージシャンと
10年前 好きだったミュージシャンを
思い浮かべてください
画面には私の例を挙げておきました
さて 人々に
答えてもらいました
現在 好きなミュージシャンが
10年後に開くコンサートのために
今 いくら払うかと聞いたところ
そのチケット代の平均額は
129ドルでした
そして10年前に好きだった人が
今日 演奏するのを見るのに
いくら払うかと聞いたところ
答えは たったの80ドル
理屈どおりに行けば
両者は同額になるはずですが
私たちは不変性を多く見積るために
現在の好みを満たす可能性に
お金を出しすぎてしまうのです
何故こうなるのかは 明らかになっていませんが
おそらくは
思い出す容易さと 想像する難しさの
相対的な差が関係しています
10年前の自分のことなら 思い出せますが
これから先の自分を想像するのは難しい
すると私たちは誤って 想像が難しいということは
起きないのだろうと考えます
残念でした 「想像できない」と言うのは
その人の想像力が 欠如しているという話であって
思い描いた出来事が
起きないということには なりません
つまり 時間とは強力なものだ ということです
私たちの好みを変え
価値観を新たにし
性格を変えてしまいます
私たちが この事実を認めるのは
後になってからです
後から振り返った時にだけ
10年間で どれほど変化したか 気づくのです
ほとんどの人にとって
今という時は まるで魔法の時なのです
それは時の流れの分岐点
自分が いよいよ
本当の自分になる瞬間です
人間というのは未完成なくせに
自分たちは完成したと 勘違いしているものです
現在のあなたは
過去の どのあなたとも同じように
はかない 束の間の存在です
人生において変わらないのは 「変わる」ということだけなのです
ありがとうございました
(拍手)