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おいしい料理は、すぐれたデザインのようなものだと考えます。
ぱっと見た瞬間に、
味わいたいと思わせ、じっさいに口にしたときに、
あるいは椅子であれば腰かけたときに、
満足できるものでなければいけません。
ジャンフランコ・ザッカイです。インダストリアルデザイナーで建築家です。
エンジニアとContinuumを設立し、共同経営しています。ここはボストン市内にある、
私のお気に入りのレストラン、「51リンカーン」。
ここに来ると料理と
デザインが似ていることがよくわかります。
格式ばって主張するタイプの料理もあります。
繊細な料理もあれば、なくてはならない料理、
この先お目にかかれないような料理もあります。
デザインについても同じです。デザインの場合は、空間、物、
サービスやアトラクションでも、見たとたんに視覚でとらえ、クオリティを判断します。
次に触れて、
味わう時には、また別の感覚を使います。座ると別の感覚を使う。
つまり物をデザインするだけじゃなく、
体験をデザインするわけです。
多くの場合、人が相手だということを考えます。
交流するという認識が大事です。
人とのつきあいを考えるなら、
その文化独自の慣習や期待はもちろん、
サプライズの要素もありますからね。
そうでしょう?
楽しい会話も、意見の違いがまったくなければ退屈なものになります。
これまで
考えてもみなかった要素が必要なのです。
すぐれたデザインができるときにも同じことがいえると私は考えます。
それは、
真空の中で作るものでも、
白い部屋にすわって紙と鉛筆だけで作るものでもありません。
すぐれたデザインとは、
いろいろな人々の生活の中に入り、
視野を広げてくれる人と交流して刺激を受けてできるものです。
そうすることでデザインはいきいきと輝き、
本当によいものになりますから。
おいしい料理とすぐれたデザインのもうひとつの共通点は、
機能だけを重視しているのではないということです。つまり栄養だけではないということ、
椅子であれば座り心地だけの問題ではないということです。それは他人との関係性であり、
新たに生まれる社会的な交流です。
おいしい食事はおいしい食べ物にとどまらず、すばらしい仲間をもたらします。
すばらしいデザインは、人と人とをつなぐ力があるのです。