Tip:
Highlight text to annotate it
X
presents
香水づくりとは イメージと音と
色を織りなして語る
通訳のようなものです
つまり 嗅覚の言語を理解し
翻訳する作業です
この嗅覚の言語は 誰もが 理解できる言葉ですが
話せる人は多くありません
幸いにも 私達は 話す事が出来ます
パルファン
ディオールのどの香水にも 折衷主義が見られます
メンズ用の香水も含め 全ての香水に
フローラルノートが 使われています
これは長年変わる事なく
我々は常に
ディオール調香師 フランソワ・ドゥマシー
花をふんだんに使用する事に こだわり続けてきました
それは
クリスチャン・ディオール自身 が花を愛し
花こそが香水の基本であると 考えていたからです
南フランス、グラース
グラースのジャスミン
グラース、ドメーヌ・ドゥ・マノン ディオールのための収穫
フランソワは定期的に 畑にやって来ます
グラース、ドメーヌ・ドゥ・マノン オーナー キャロル・ビアンカラナ
特に花が咲く頃
色と香りが最高潮に 達する時期に来ます
かごや袋に
鼻を近づけたり
手で花を触ったり
原料となる花と香りに 直接触れる
贅沢な時間を過ごします
コル・ノワール城は
南フランス、モントルー コル・ノワール城
グラースから 約20キロの所にあり
クリスチャン・ディオールの 別荘でした
古い建物で 彼のお気に入りでした
ある種の古典主義や本物に
囲まれていながら
光にあふれ 海にも続いています
グラースは山と海に 囲まれています
つまり 湿度が 適しているだけでなく
植物の中でも 特に花にとって
理想的な気温です
この場所は昔から
ディオールが 花を栽培していた場所でした
ローズ・ドゥ・メ ドメーヌ・ドゥ・マノン
ローズ・ドゥ・メや グラース ジャスミンといった
最高の原料を使う理由は
それらの花が持つオーラです
また 花が持つ 特別な香りだけでなく
香水にした時に生まれる
グラース、ロベルテ 花の加工工場
深い奥行きです
香水づくりの 最後のちょっとした工程が
香りに深みを与えます
ローズ・ドゥ・メの摘出
ローズ・ドゥ・メ
グラースが象徴するものとは 何か?
それはノウハウです
何世代にも渡り 受け継がれる中で
技術は進歩しましたが ノウハウは変わりません
伝統のこだまは 響き続けます
この土地のジャスミンを 使える事は
私達調香師にとって 大きな喜びです
豊かな郷土は かけがえのない存在です
1キロのジャスミンの香料を 得るには
1万もの花を 手で摘まなくてはいけません
1キロのアブソリュを 作るためには
600キロのジャスミンの花が 必要です
つまり1キロのアブソリュが あるとすると
600万の花を 意味するのです!
興味深いことに
調香師が作った製品を 嗅ぐ事は
香水の裏に隠された 思想も含め
ロベルテ、原料開発部ディレクター ロベール・シニガグリア
全てを発見する事です
つまりアーティストが
何かのイメージや 女性らしさなどを
香りによって 表現しようとしているのです
フランソワ・ドゥマシーも私も 情熱を注いでいます
南インド
香りには
際限なく発見があります
新しい感性は 旅を通して
出会う事が多いと思います
旅は他者に向かう事であり 異質なものとの出会いです
例えば私はインドの花市が 好きなのですが
南インド、マドゥライ 花市
視覚的な魅力だけでなく 色々な香りがあるからです
花だけではない様々な香りです
インドは色の国
生命の国です
奉納などの
宗教的な儀式や 子供の誕生や結婚式といった
家族単位のものなど
全ての儀式において
花はインドの生活の 一部となっています
華麗な花には
美学と香りがあり
神秘的な側面を持っています
神々の花なのです
サンバックジャスミン畑
サンバック ジャスミンは ジャスミンの一種で
インド固有の花と言えます
サンバック ジャスミンは ジャドールのお陰で
誰もが知る香りとなりました
つぼみの状態では 香りはないので
つぼみが開き
香りを放つまで
数時間待たなくてはいけません
マドゥライ、ジャスミンコンクレット工場
午後 つぼみの状態で
届けられます
平らな所に置かれ 花を開かせます
2~3時間ほどかかります
他の多くの花と同様に
香りがより放たれるように
夜になって花開する 傾向があり
多くの虫が 花粉を求めてやって来ます
つぼみが開いたら
なるべく早く
機械を使って 花を加工します
サンバックジャスミンの摘出
この作業は多くの人出を 必要とする
大変な仕事です
花を育てるだけでなく
加工する工程が必要です
人間が行う作業が とても重要なのです
人と人が出会い 話し合いを重ねます
信頼関係を築いて 意見交換をします
サンバック ジャスミン について
もう少し若い香りが 欲しい等と伝えたとします
すると、つぼみが 開き終わった後ではなく
開花し始める頃に摘出し
試作品を作ってくれるのです
こうした信頼関係が 最も重要です
イタリア ムラーノ島
ムラーノ島 サルヴィアッティ ガラス工場
私の仕事は常に有機的で 身体と関わりがあります
香水の仕事に興味があるのは そのためです
香水も身体に関係しています
造形芸術家 ジャン=ミシェル・オトニエル
私の仕事には 一貫した論理があり
香水についても 同じ考えです
長年挑戦したかった事です
ゼロから 始めたわけではなく
伝統的な形から出発しました
過去に存在した デザイナー達の仕事の
再検証をしました
ムラーノ島にはガラス彫刻の 技法があります
全て手作りです
このような製造方法は 世界にほとんどありません
息を吹き込む行為や
ガラス職人による 口づけといった
官能的な考えを 私の作品の中に
感じてもらいたいのです
私がここで仕事をするのは そうした技術があり
色の使い方も 素晴らしいからです
この色付け方法は 世界最古のものです
ガラスのネットも 古い技法です
この香水のガラス瓶を
一目見て 最初に湧き上がる感情は
触れたいという欲求です
香水作りとは 感性の問題なので
この感情には納得がいきます
らせん模様が好きなのは 香水が消えてゆく
そんな比喩を感じるからです
調香師にとって 香水の製造所は
データバンクのようなものです
パリ ディオール香水製造ラボ
ここで言うデータとは 原料で
一般的には原料から 摘出したエキスや
エッセンスです
私達のラボでは常に
2500種ほどの原料があり
実際の製造過程では
600種ほどを使用します
それだけ多くの
豊富な原料が必要なので
世界を旅するのです
現地で原料を 調達するだけでなく
様々なアイディアも 得る事が出来ます
ラボは私達の旅の
ポストカードのような 場でもあり
考えたり作るために
立ち止まる 人間でいうところの 中枢神経とも言えます
自分の香水をつけた女性と すれ違うと感動します
自分のアイディアを 身にまとっているからです
とても嬉しく誇りに思います
また同時にドキっともします
自分が作った香水を通して
誰かと通じ合う事が 出来るのですから