Tip:
Highlight text to annotate it
X
アーヴィング・ハーパーです。
インダストリアルデザイナーで
アーティストです。
自宅にはいろいろな
紙の彫刻を置いていますが、すべて私のデザインです。
小さいころは絵を描くのが好きでした。
同じものを何度もデッサンし続けました。
木、幹、枝、葉、すべてをです。
1日中ずっとデッサンばかりして過ごしていました。
ジョージ・ネルソンが
『フォーチュン』誌の仕事をしていた当時、
スタッフとしてエンパイア・ステート・ビルのオフィスに通っていたのですが、
そのときエンドテーブルをいくつかデザインしました。
シンエッジグループやマシュマロソファなど思い出します。
紙の仕事を始めたのは、
作業やプレゼンテーションをするときに
試作品を作っていたのがきっかけで、
紙の扱いが得意になりました。
ジョージ・ネルソンのオフィスで働いていたときには、
紙作品を作ってはストレスをやわらげ、
リラックスしたものです。
私はアフリカの美術が特に好きです。
それほどハッとさせてくれるものはありません。
私の構想するフォルムや、
紙で作る作品はその影響を受けています。
紙の作品を作るのが好きなのは、特別な器具がいらないためです。
ただ座って紙を切って折り目をつけ、折りたたんで糊づけをするだけでできますから。
紙というのは、
素材として万能なのです。
動物も人の顔も頭も作りました。
そこにある馬は始終眺めているというので愛着を持っていますが、
特にお気に入りがあるわけではありません。
前もってスケッチをしたりはしません。
頭で考えたらすぐにとりかかり、
完成品を作ります。
ずーっと考えていることもあります。
このリビングルームには昔、丸のこがあって、
部屋を取り囲んでいるこのカウンターを作ったことを覚えています。
ほかにはなにも持ちこまなかった。
なにひとつつけ足さなかった。
ジョージが立ち寄ってこのがらんとした空間と、
なにもないカウンターを見ていいましたよ。
「なにもないね」って。
ほめてくれたのでしょうか。
そうじゃないでしょう。
もうジョージがここに立ち寄ることも眺めることもないと思うと、
さみしいですね。