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[マザーボード]
[ニューヨーク州 ビーコン]
オレの名前は デイビッド・リーズ
鉛筆削りが仕事だ
[鉛筆削り師 デイビッド・リーズ]
[2010年 風刺漫画家を辞め 鉛筆削り業を立ち上げた]
[1本15ドル 最近 本も出版した]
鉛筆削りの道具は カッターが主流
まずは 鉛筆の六角形の角に 刃先をあて 削り始める
鉛筆を回し 角を落としながらー
木の部分を出していく
削る作業は 二段階ある
まずは 芯が出るまで 木を削る
今は説明が目的だからー
見た目は気にしないでくれ
鉛筆の中心から ある程度 芯が顔を出したらー
次の段階へ 芯の形を整えて とがらせる
漫画家を辞めた後 国勢調査の仕事を
2010年の春のことで 新人研修の時にー
仕事道具が支給された
その中に HBの鉛筆が
マークシートを塗る時に 必要になるからね
研修初日に 鉛筆を削るよう言われー
全員 指示に従って ゴミ箱の前で削った
それが楽しくて 仕方なかったからー
鉛筆削りを仕事にしようと 考え始めたのさ
ここは クリップ工場の跡地だ
クリップの跡があるし 錆びたクリップも転がってる
こういった廃れた工場や 倉庫はー
アメリカ中に たくさんある
廃墟になった工場はー
操業を明日に控えた 無人の工場とは 決定的に違う
後者は 新品の道具と同じで 可能性に満ちている
新しい真っ白な帳簿やー
紙に触れるのを待つ とがった鉛筆のようにね
この跡地は アメリカの過去や未来ー
それに 我々の死にざまを 表してるようだ
きっと 不毛の地で 飢え死にする...
- なぜ漫画家を?
元々 ブッシュが退任したらー
[『ゲット・ユア・ウォー・オン』] 辞めるつもりだった
潮時だと思っていたし 新しいことにも挑戦したかった
アブグレイブ刑務所の 虐待事件の時ー
ひどく不愉快で 気が滅入ったよ
でも 事件は 風刺漫画の題材だからー
漫画を描かないわけには いかなかった
だが 本音を言うとー
考えたくもなかったし 毛布にくるまって 隠れたかった
鉛筆の部位を 個別に言い表すのにー
独自の用語を作った
先端の部分の名前を説明する
削り始めから 芯の先端までをー
鉛筆の〝軸先〟と名付けた
そして 削られた木の部分を 〝首〟と呼ぶ
つまり 首の最下部は 軸先の一番下と重なる
そして 木と芯の ちょうど境目のところがー
首の最上部だ
最近出した本から 一節 読もう
「輪先に切り込むのは つらい」
「なぜなら 鉛筆削り師は 何としてでも 輪先を守れとー」
「教わっているからだ」
「しかし 最初は気が引けてもー」
「すぐに 報われるはず」
「あなたの手で 新たに鉛筆の 軸先を形作っていくのだから」
離婚を機に 今の仕事を始めた
鉛筆と 鉛筆削りの 虜になったタイミングがー
ちょうど 自分自身が さまよっていた時期と重なる
仕事面では 漫画家を辞めー
私生活でも 夫の役割が 終わった時だったからね
これは透明なゴムの管でー
鉛筆の先に ぴったりフィットする
折れてしまわないようにー
ゴム管を十分な長さに切って 覆いかぶせてからー
持ち主に送り返す
こうやってゴム管を 先の部分に はめればー
これで 第1段階が完了だ
パーティー会場や イベントで鉛筆を削る場合はー
カバーをつけ そのまま手渡しする
創作活動中はー
制限がある方がいい
自由な状態だと 逆に 何も手につかなくなる
例えば 出来合いの画を元にした 漫画は 想像力をかきたてる
HTMLもそう
基本的に 5種類のタグしか 使わないんだ
中央寄せ 太字 斜体 文字のサイズと カラー
必要最低限のもので 最大限に楽しむ
架空の広告会社の ウェブサイトを作ってー
有名企業の 悪質な自作広告を 載せたことがある
誰かから 依頼されたわけじゃなくー
ただ楽しむためさ
どれもシンプルな HTML形式の バカげた広告だ
でも最高に笑えたしー
評判は微妙だったけど オレは この上ない幸せを感じたよ
客の多くは 鉛筆を オブジェとして飾ったりー
ネタや お守りにする人もいる
だから キャップ付きの カバーに入れてあげるんだ
これで芯が 二重に守られてる
ゴム管と 耐久性のあるカバーでね
ほら 折れてない
投げられたとは思えない 完成度
徹底的なリサーチの末 辿り着いた形だ
当初 インターネットを 利用してー
鉛筆を届けることに 魅力を感じたんだ
鉛筆とインターネットは 正反対だからー
新旧の技術の融合さ
鉛筆という 昔ながらの伝達手段とー
ネットのような 最先端のツールのね
ほら 鉛筆が 吸い込まれていく
鉛筆の動きが止まったので 取り出そう
〝ブラックウィング〟の 長く伸びた芯が お目見えだ
人間と違って 機械なら均一に仕上げられる
鉛筆にハマッてからー
シャーペンや それを使う人を 軽蔑するようになった
シャーペンは削らずに使えて 楽だと?
そんな連中は ハッキリ言って 「バーカ クソくらえ」だ
削りカスは鉛筆の一部だから 一緒に 客の元に返す
これは上質な赤杉で できている
サーモンみたいな 美しい色合いだ
あとでラベルを貼ろう
これは冗談じゃなく 歴としたビジネスだ
鉛筆を削るのが仕事
腕には自信があるし 450本以上は削ったよ
客からのクレームだって めったにない
多くの仲間にも出会った
鉛筆削り師として カリブ海の クルーズ船に雇われたし
ジャマイカの滝の下で 削ったことも
幸せな思い出が たくさん増えてきたよ
癒し効果もある
たまに ものすごく 怒る人がいて 不思議だ
新聞に取り上げられても
コメント欄には 怒りの声が
〝そう難しく考えるなよ〟って さとしたくなるね
オレは 鉛筆を尖らせて 人に届ける
それだけ
字幕翻訳 日本映像翻訳アカデミー 字幕監修 大石レナ