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これまでの動画のあいまいな点を
この動画では、カンタンに
説明します。
自然史博物館に行くと、こんな感じの
原始的なサル(類人猿)から始まる絵が、あるね。
進化が進んでいく様子が、かかれているんだけど、
少なくとも2足歩行になるまでの、様子がえがかれているはず。
最後にはホモ・サピエンス、人間になるんだけど、
これを見ると、進化はより優秀な生物が
生まれていくプロセスだと思うだろう。
時間がたつにつれて、だんだんと「進歩」していく
つまり、必ず最初の種より、優れた種が
生まれてくるものだと。
けどはっきり言って、この「だんだん優秀になっていく」って考えは
進化や自然淘汰の中では、
全然意味がないんだ。
大事なのは、その種が環境にうまく適応しているか、"fitness(適応性)"
もしくは、その環境で、どれだけ繁殖することができるか
そしてこれと、私たちが日頃考える「優秀」ってこととは
全然一致しない。
こんなふうに考えてる人もいると思う。たとえば、
人間は次に、どう進化するのか?
大きな脳があって、精神エネルギーでものを動かせたり
ものを透かして見ることができたり
そんなふうに、考えてる人もいるんじゃない?
それは「進歩」する、つまり人間が
より賢くなっていくって、考えてるわけだ。
今までの類人猿にはできなかったことが、できるんだと。
次の進化の段階は、おそらく
「超人間」みたいなものだと。
次の進化の段階がどうなるか、分からないし
ここで話すこともできないけど、大事なのは
必ずしも、そうはならないってこと。
たとえば、今の人口について考えてみても
進化における成功は、私たちが普段思う成功とは
まったく違うものなんだ。
たとえば、ここに2人の人がいたとしよう。
一人は、博士号をもっていて
医学博士でもあるし、お金もある。社会的な成功の
すべてを手にしている。けど彼は、博士号を持ってるし
学校や大学にも、ずっといたので
子どもは持たないことにした。
それに、地球上の人口増加についても考えていたし
人間が環境におよぼす悪影響も、心配していた。
だから、彼と彼の奥さんは、彼女も医学博士なんだけど
お金もあったし、いい教育も受けてきたんだけど
結局、子どもを1人しか、つくらないことにした。
ええと、これが彼の奥さんで、やっぱり似てないとね。
同じように教育を受けて、私達から見ると、人生大成功で
しかも、人類と地球にやさしい夫婦だ。
それじゃあ、もう一人も考えてみよう。
こっちは、誤解をおそれずに言うと
ただの「浮ついたやつ」。若いころから
無責任で、どうしようもなかった。
子どもを次々につくり、
30才になるころには、10人の子どもがいた。
子どもの母親も全員違ってたので、
養子に出される子もいた。
どうやったら、こうなってしまうんだろう?ってくらい。
彼の人生について、あれこれ言う気はないけど
この男は、社会的に成功していない
そう言っていいね。
けど進化の観点からすると、こいつは
大成功だ。
実際に、この男のような人の遺伝子は、より速いスピードで
広まっていく。こっちの
人たちの遺伝子よりもね。
だから進化の観点から、「適応性」について考えるときには
私達が日頃考えている
一般的な価値観の
適応性を言ってるわけじゃない。
こっちの人たちは、ものすごく適応性がありそうだけど
だからといって、「繁殖」はしない。
彼らの遺伝子は、こういうタイプの人ほど
受け継がれていかないよね。
細かな数字は忘れたけど、たしか80%くらいかな。
アジア人の80%は、何人かの男性から
いや、一人の男性だったと思う、その人の遺伝子を持っているんだ。
1200年代の一人の男性のね。
たしか、モンゴルの戦士だったよ。
チンギス・ハンだったか、フビライ・ハンだったか。
ただこれは変な意味じゃなく、良いか悪いかとか
あれこれ言うつもりでもないんだけど、人間にはとても攻撃的で
もしかしたら、強姦や略奪もしたかもしれないけど
進化の観点から、ものすごい成功をおさめた人がいたんだ。
こういう行為を卑劣だと思う人も
もちろんいるだろうけどね。
つまり、進化の中には「進歩」って意味は
必ずしも含まれてないってことが、言いたかったんだ。
それじゃあもし、さっき考えたようなことが起こり続けるとすると
こっちのタイプの人は、どんどん減って、受け継がれる遺伝子も
減っていくだろう。逆にこのタイプの遺伝子は
どんどん増えていく。
そして最終的には、攻撃的な人の人口が増えて
責任感の強い人たちは、減っていってしまう。
つまり、進化についてポイントの1つ目は
進化や自然淘汰は、単なる「進歩」のプロセスではないってこと。
進化の中で、長い時間をかけて、ヒトや動物が
より「優秀」になったり、かしこくなったり、速くなったり
そういうことは起きないってこと。
それは環境と、環境に合わせて何が選択されるか
それで、進化は決まっていくということなんだ。
もう一つ、はっきりさせておきたいことは
「インテリジェント・デザイン」の動画で、話したこと。
その動画で、別にインテリジェント・デザインと進化を
比較しているつもりじゃなかった。
こっちが進化論だとして、こっちは
インテリジェント・デザイン(Intelligent Design)だとする。
ここではっきりさせておきたいのは、前の動画では
分かりにくかったかもしれないけど、この間の論争は
人間がつくりだしたものだってこと。
進化論は、現代生物学の基礎になってるね。
インフルエンザがどんなふうに流行するかを、理解したかったら
もしくは、ヒトゲノムついて理解したり
遺伝について理解したかったら、進化論は不可欠。
そして、それはまだ未完成のものでもある。
毎日、毎年自然淘汰のプロセスについて
次々と新しい発見がなされていて、
まだ、議論が必要な分野なんだ。
どのような進化が、どれくらいのペースで起きるのか
どんな要素がそのペースに影響するかは、解明されていない。
けど一つ、はっきりしていることがある。
これが私たちの周りのすべてを、説明してくれるということ。
言い方を変えると、現代科学における全ての結論が
進化と自然淘汰の正しさを
支持しているってこと。
だからもし、それが生物学の基礎的なことであっても
自然淘汰と進化を否定するということは、
人類の現代生物学への理解を
否定することになってしまう。
インテリジェント・デザインは、ひとつの信念だ。なぜこんな話をしたかって言うと、
インテリジェント・デザインを信じる人たちに
進化の概念について、納得してほしかったからなんだ。
そうすることで、現代生物学の根幹を否定せずに
自分の宗教的信念と、調和できるからね。
そうすると、「デザイン」について考える時には
何か特定のデザインは、気にしない方がいい。
たとえば目とか、特定の生物とか
そういったものへの「デザイン」は、ないと考えたほうがいい。
たとえば人間の目を考えてみても、
そこには、たくさんのタイプがあるよね。
人間の目には、無限の差異(違い)がある。
だからそれは、インテリジェント・デザインだと考えてもいいし
そう考えなくてもいい。
前回の動画で伝えたかったポイントは
もし「デザイナー」の存在を信じるのであれば、
もっとすばらしい「デザイン」が、システムの中に眠っている、ってことなんだ。
それが、進化のシステムだ。
今ここで、「デザイナー」がいるかどうかについて
話す気はないけど
あなたがその存在を信じているなら
進化のシステムはより深遠なもので、むしろ
あなたが信じる「デザイナー」に、正しさを与えるものになる。
これは、もはや科学じゃない。
インテリジェント・デザインは、現代科学の知恵を
全て否定するものだ。
だからといって、それは理論でもない。それを信じる人は
そこに科学的説明をしようとするけど
それは理論じゃない。
インテリジェント・デザインを、検証することはできないからね。
あるものが、何らかの方法で、創造主によってつくられた
と証明するデータも、否定するデータも
存在するはずないよね。
これは、ひとつの信仰の体系だ。
基本的に、進化について否定することにはなるけど。
だからといって、これを信じる人を
軽蔑するわけではない。その人自身の
強い思いがあるものだからね。
私の目標は、それをうまく調和させること。
もし「創造主」の存在を信じているなら
1つ1つのデザインを見るより
システム全体を見たほうが、いいはずだよ。
この2つのポイントについて、ちょっと
はっきりさせておきたかったんだ。
一つは、進化とインテリジェント・デザインの
いわゆる、「論争」について。
けどほんとは、そんなの「論争」じゃないよね。
進化論は、現代生物学の基礎になる部分。
これは、それを単に否定してしまうもの。
証明することも、反証することもできないし、理論でもない。
そしてもう一つのポイントが
進化は必ずしも、直線的な
より優れた生物になっていく
「進歩」のプロセスではない
ということ。